この記事の結論
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いつ・どこで・誰が・何をしたかの事実経過を具体的に書いてもらう

始末書には謝罪や反省の目的もありますが、「全て私の責任にあります」といった抽象的な記載では、後にどのような事実があったかが争いになります。事実経過を具体的に報告してもらうことが重要です。

2

労働者の言い分が記載された始末書は、弁明の機会を与えた証拠になる

労働者の言い分が記載された始末書は、会社が弁明の機会を与えた証拠となり、始末書提出の手続が適正であったと主張しやすくなります。

3

納得のいかない内容でも突き返さず、検証できる形で保管する

労働者の言い分が会社として納得のいかない内容でも、本人に突き返さないことがポイントです。突き返す場合でも、書面をコピーするなどして後から検証できるようにしておきます。

01始末書には事実経過を具体的に書いてもらう

 労働者に始末書を作成してもらう際には、いつ、どこで、誰が、何をしたかという事実経過を報告してもらうことが重要です。

 確かに、始末書には謝罪や反省してもらう目的もあります。しかし、「この度の一件について全て私の責任にあります。」といったものだと、労働者が、いつ、どこで、何をしたのかが不明確になってしまい、後々どのような事実があったのかが争いになる可能性があります。

 懲戒処分の有効性や、後の解雇等の判断においては、「実際にどのような事実があったのか」が極めて重要な争点になります。抽象的な謝罪文だけでは、その事実を裏付ける証拠としての価値が乏しくなってしまいます。始末書を作成してもらう際には、謝罪や反省の言葉だけでなく、問題となった行為の事実経過(日時・場所・行為の内容・経緯など)を具体的に記載してもらうことを意識してください。

02始末書は弁明の機会を与えた証拠になる

 始末書は、事実経過を記録するだけでなく、労働者に弁明の機会を与えた証拠としての意味も持ちます。

 労働者の言い分が記載された始末書は、会社が弁明の機会を与えた証拠にもなり、始末書提出の手続も適正なものであったと主張しやすくなります。懲戒処分の有効要件の一つとして「手続の相当性」(本人への弁明機会の付与等)が問題となりますが(536番参照)、労働者本人の言い分が記載された始末書は、この弁明の機会を与えたことを裏付ける資料となります。

 したがって、始末書には、会社側が把握している事実だけでなく、労働者本人の認識や言い分も率直に記載してもらうことが、かえって会社にとって有益な場合があります。

03納得できない内容でも突き返さない

 たとえ労働者の言い分が会社として納得のいかない内容だったとしても、労働者本人に突き返したりしないことがポイントになります。

 会社にとって都合の悪い言い分や、事実と異なると感じる主張が記載されていると、「書き直してほしい」「これでは受け取れない」と突き返したくなるかもしれません。しかし、始末書を突き返してしまうと、その時点で労働者がどのような弁明をしていたのかという記録が残らなくなり、後の紛争でかえって会社に不利になることがあります。

始末書を突き返す際の注意点

仮に突き返す場合であっても、どのような弁明をしていたのかが分かるよう、書面をコピーするなどして後から検証できるようにしておくことがポイントです。労働者がどのような認識・主張をしていたかという記録は、後の懲戒処分や解雇の有効性を判断する場面で重要な資料となります。

 労働者の言い分に納得がいかない場合でも、まずはその始末書(またはそのコピー)を保管したうえで、会社として把握している事実との食い違いについて、別途、事実確認や追加の聞き取りを行うという対応が望ましいといえます。

経営上のポイント 始末書を提出してもらう際は、抽象的な謝罪ではなく、いつ・どこで・誰が・何をしたかという事実経過を具体的に記載してもらうことが重要です。労働者の言い分が記載された始末書は弁明の機会を与えた証拠になりますので、納得のいかない内容でも突き返さず保管してください。突き返す場合もコピーを残し、後から検証できるようにしておくことをお勧めします。アドバイスします。
SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 始末書の提出を拒否する社員に、提出を強制できますか。

A. 始末書のうち「謝罪・反省」を求める部分については、本人の意思に反して強制することは難しいと考えられています(良心の自由等との関係)。一方、事実経過の報告を求める「顛末書」的な性格の部分については、業務命令として報告を求めることができると解されています。提出を拒否する場合は、まず事実経過の報告(顛末書)を求める形に切り替えることが考えられます。提出拒否自体を新たな懲戒事由とできるかは慎重な判断が必要ですので、弁護士に相談することをお勧めします。

Q2. 始末書と顛末書はどう違いますか。

A. 一般に、顛末書は事実経過の報告に主眼を置いた書面、始末書は事実経過の報告に加えて謝罪・反省の意思表明を含む書面とされます。会社にとって重要なのは、いずれの名称であっても、いつ・どこで・誰が・何をしたかという事実経過が具体的に記載されていることです。懲戒処分や解雇の証拠として活用する観点からは、まず事実経過を正確に記録してもらうことを優先するとよいでしょう。

Q3. 始末書を提出させれば、それだけで懲戒処分は有効になりますか。

A. 始末書の提出は、弁明の機会を与えたことや事実経過の証拠として有用ですが、それだけで懲戒処分が有効になるわけではありません。懲戒処分が有効とされるには、就業規則の懲戒事由への該当・処分の相当性・手続の相当性が必要です(536番参照)。始末書はこのうち手続面・事実認定面を支える資料の一つにすぎません。処分の重さが行為に見合っているか等は別途検討が必要です。

最終更新日:2026年2月25日


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