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ストライキ目的の一斉有給取得は「年次休暇に名を借りた同盟罷業」であり賃金支払い不要 形式が有給休暇申請でも、事業の正常な運営を阻害する目的で一斉に行われる場合は実質がストライキ(同盟罷業)です。最高裁(白石営林署事件・国鉄郡山工場事件・昭和48年3月2日)により賃金支払義務はなく、ノーワーク・ノーペイの原則が適用されます。 |
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時季変更権の行使は不要。「本来の年休行使ではない」として欠勤扱い可 一斉休暇闘争は「本来の年次有給休暇の行使ではない」として、時季変更権を行使するまでもなく欠勤扱い(賃金不払い)が可能です。ただし不当労働行為に該当しないよう慎重な対応が求められます。 |
目次
01ストライキ目的の年次有給休暇とは何か
ストライキ目的の年次有給休暇とは、労働組合などが事業の正常な運営を阻害する意図のもと、労働者に一斉に年次有給休暇を取得させる行為を指します。いわゆる「一斉休暇闘争」と呼ばれるものです。
本来、年次有給休暇制度は、労働者の心身の回復や私生活上の自由な利用を保障するために設けられた制度です。しかし、これを団体行動の手段として集団的・計画的に行使し、業務の停止や混乱を生じさせることを目的とする場合、その実質は通常の年休取得とは異なります。会社経営者としては「申請の形式」だけでなく「取得の目的」「組合の関与の有無」「事業への影響の程度」といった実質面を総合的に検討する視点が不可欠です。
02年次有給休暇の法的性質と会社経営者の基本的理解
年次有給休暇は、労働基準法に基づき労働者に付与される法定の権利です。一定期間継続勤務し、所定労働日の一定割合以上出勤した労働者に対して発生し、原則として労働者が指定した時季に与えなければなりません。年休は「会社の承認制」ではなく、労働者の請求により成立する権利です。
もっとも、事業の正常な運営を妨げる場合には、会社は時季変更権を行使することができます。ただし、これはあくまで「本来の趣旨に基づく年休取得」を前提とする制度です。年休制度の趣旨を逸脱し、争議行為の一環として集団的に行使される場合には、そもそも年休権の適法な行使といえるかという根本問題が生じます。
03一斉休暇闘争と通常のストライキの違い
一斉休暇闘争は、形式上は「年次有給休暇の取得」という形をとります。しかし、その実質が事業の正常な運営を阻害することを目的とした集団的労務提供の拒否である場合、それは通常のストライキと本質的に変わりません。
通常のストライキは、労働組合法上の争議行為として行われ、賃金は支払われないというノーワーク・ノーペイの原則が前提となります。これに対し、一斉休暇闘争は、年休制度を利用することで賃金の支払いを受けながら実質的な争議行為を行う点に特徴があります。
最高裁は、このような形式と実質の乖離に着目し、「年休に名を借りた同盟罷業」である場合には、もはや本来の年休行使ではないと明確に整理しました。
04最高裁判例の立場(白石営林署事件・国鉄郡山工場事件)
白石営林署事件および国鉄郡山工場事件(いずれも最高裁昭和48年3月2日判決)は、いわゆる一斉休暇闘争について、「事業の正常な運営の阻害を目的として全員一斉に休暇届を提出し職場を放棄・離脱するもの」と解する場合、その実質は年次休暇に名を借りた同盟罷業にほかならないと判示しました。
そして、形式が年休であっても「本来の年次休暇の行使ではない」と明確に述べています。さらに重要なのは、その結果として、賃金請求権は発生しないと判断した点です。実質が争議行為である以上、ノーワーク・ノーペイの原則が適用されるという整理です。
05なぜストライキ目的の年休行使は認められないのか
ストライキ目的の一斉年休取得が認められない最大の理由は、年次有給休暇制度の趣旨を逸脱している点にあります。年次有給休暇は、労働者個人の心身の回復や生活保障を目的とする制度であり、団体的圧力手段としての利用は想定されていません。
これに対し、一斉休暇闘争は、あらかじめ組織的に計画され、事業の正常な運営を停止または混乱させること自体を目的としています。最高裁も「形式いかんにかかわらず本来の年次休暇の行使ではない」と明言しました。
06時季変更権は行使できるのか
前記判例の構造を正確に理解すると、一斉休暇闘争は「本来の年次休暇の行使ではない」と評価される以上、「年休であることを前提とした時季変更権」の問題自体が生じないという整理になります。
これは実務上、極めて重要です。安易に「業務に支障があるから時季変更する」と対応すると、論理構成として不十分になるおそれがあります。本来は、「実質が争議行為であり、年休権の行使とはいえない」という点を明確に整理する必要があります。
07賃金支払義務との関係
一斉休暇闘争が問題となる最大の実務上の論点は、賃金を支払う義務があるのかという点です。最高裁は、一斉休暇闘争について「年次休暇に名を借りた同盟罷業」であると位置づけ、実質が争議行為である以上、賃金請求権は発生しないと明確に判示しています。
ここで適用されるのがノーワーク・ノーペイの原則です。もし実質が争議行為であるにもかかわらず形式的に年休として賃金を支払えば、経営上の重大な損失につながります。一方で、通常の年休取得との区別を誤れば、未払賃金請求や不当労働行為の主張を招く可能性もあります。
08実務上の対応手順と注意点
一斉に年次有給休暇の申請がなされた場合、まず確認すべきは、その取得が偶発的・個別的なものか、それとも組合の指示や呼びかけに基づく組織的・計画的行動であるかという点です。通知文書・団体交渉の経緯・社内外への声明などを総合的に検討し、「事業の正常な運営を阻害する目的」があるかを客観的に整理する必要があります。
社内対応の一貫性も重要です。部署ごとに判断が分かれると、後に紛争となった際、会社の法的主張が不安定になります。法的構成を統一し、文書で整理しておくことが不可欠です。感情的な対立を避けることも経営判断として重要です。
09不当労働行為と評価されないためのポイント
一斉休暇闘争への対応を誤ると、会社の措置が不当労働行為と主張されるリスクがあります。重要なのは、対応の根拠を明確にすることです。「年休だから認めない」のではなく、実質が争議行為であり、本来の年次有給休暇の行使ではないという法的評価に基づいていることを一貫して整理する必要があります。
また、組合の存在や活動そのものを否定する発言、威圧的な通達、過度な懲戒示唆などは避けるべきです。争点はあくまで「制度趣旨との適合性」であり、団結権そのものではありません。判例法理に沿った客観的・中立的な説明を徹底することが、経営リスクの最小化につながります。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. 労働者が一人ずつバラバラに「ストライキのために有給を取る」と言ってきた場合は。
A. 単発・個別の有給取得であれば、たとえ目的がストライキへの参加であっても、原則として拒否(賃金カット)は困難です。今回の判例が適用されるのは、あくまで「一斉・組織的」に行われ、事業の正常な運営を阻害する目的が明らかな「一斉休暇闘争」のケースに限られます。
Q2. 一斉休暇闘争と分かっていて、あえて時季変更権を行使してしまった場合は。
A. 時季変更権を行使するということは、会社がその申請を「有効な有給休暇」として認めたことになってしまいます。そうなると、後から「ストライキだから無給だ」と主張することが論理的に難しくなるリスクがあります。初動の段階で「そもそも有給として認めない(実質ストライキである)」という法的構成を明確にすることが重要です。
Q3. 一斉休暇に参加した労働者に対し、懲戒処分を下すことはできますか。
A. ストライキ目的の一斉休暇が「正当な争議行為」の範囲内であれば、それ自体を理由に懲戒処分を行うことは不当労働行為となる恐れがあります。ただし、賃金を支払わないこと(ノーワーク・ノーペイ)は、懲戒処分ではなく「労務提供がないことへの当然の帰結」として適法に認められます。
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最終更新日:2026年2月25日