時間外労働を命じるために必要な要件を教えてください。
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時間外労働命令に必要な3要件:①36協定の締結・届出②就業規則等の根拠規定③業務上の必要性 日立製作所武蔵工場事件(最高裁平成3年11月28日)により、時間外労働命令の要件は①36協定の締結・届出②就業規則等に合理的な根拠規定があること③その業務上の事由が協定の範囲内であることの3つと定まりました。 |
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個別の労働者の同意は不要。就業規則の合理的な根拠規定があれば足りる 就業規則の規定の内容が合理的なものである限り、それが具体的労働契約の内容をなすため、労働者は当該規定に従い時間外労働をする義務を負うとされており、個別の労働者の同意は不要です。 |
01時間外労働の命令権についての学説の対立
時間外労働の命令権は、裁判(静内郵便局事件最高裁昭和59年3月27日判決、日立製作所武蔵工場事件最高裁平成3年11月28日判決)において、
② 企業の命じ得る旨の労働協約・就業規則・労働契約などの根拠規定がある場合は足りるという立場
③ 36協定の締結と届出があれば足りるという立場
等がありましたが、③の支持者はいなかったため、①と②が対立していました。そして、労働者個人の同意は必要ないということで、②で決着がつきました。
02日立製作所武蔵工場事件(最高裁平成3年11月28日判決)
日立製作所武蔵工場事件の最高裁判決では、36協定の締結と届出、その協定に定めている時間外労働の業務上の必要性に相当すること、労働協約・就業規則等に時間外労働を命じる旨の根拠規定があることを、時間外労働の要件としています。
日立製作所武蔵工場事件(最高裁平成3年11月28日判決)
「思うに、労働基準法32条の労働時間を延長して労働させることにつき、使用者が、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合等と書面による協定(いわゆる36協定)を締結し、これを所轄労働基準監督署長に届け出た場合において、使用者が当該事業場に適用される就業規則に当該36協定の範囲内で一定の業務上の事由があれば労働契約に定める労働時間を延長して労働者を労働させることができる旨定めているときは、当該就業規則の規定の内容が合理的なものである限り、それが具体的労働契約の内容をなすから、右就業規則の規定の適用を受ける労働者は、その定めるところに従い、労働契約に定める労働時間を超えて労働をする義務を負うものと解するを相当とする(最高裁昭和43年12月25日大法廷判決(秋北バス事件)、最高裁昭和61年3月13日第一小法廷判決(電電公社帯広局事件))。」
この判決から、時間外労働命令の要件は次の3点に整理されます。
② 就業規則等に、36協定の範囲内で「一定の業務上の事由があれば時間外労働を命じることができる」旨の合理的な根拠規定があること
③ 当該業務上の事由が36協定の範囲内であること
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. 36協定さえ締結・届出していれば、どんな残業でも命じることができますか。
A. いいえ。36協定の締結・届出に加えて、就業規則等に時間外労働を命じる旨の合理的な根拠規定があること、業務上の必要性があることの3要件が全て必要です。また、36協定に定めた時間数の上限(月45時間・年360時間等)を超えた残業命令は許されません。
Q2. 就業規則に残業命令の根拠規定がない場合、残業を命じることはできませんか。
A. 日立製作所武蔵工場事件の最高裁判決に従えば、就業規則等の根拠規定が必要です。「業務上の事由があれば時間外労働を命じることができる」等の規定がない場合、時間外労働命令の効力が否定されるリスクがあります。就業規則に残業命令の根拠規定を設けていない場合は早急に整備することをお勧めします。
Q3. 36協定の上限を超えた残業を命じた場合、どのような問題が生じますか。
A. 36協定の上限を超えた残業命令は、労基法36条違反として行政指導・是正勧告の対象となり得ます。また、2019年4月(中小企業は2020年4月)からの残業時間の法定上限規制(原則月45時間・年360時間、特別条項適用時も単月100時間未満・複数月平均80時間以内等)に違反した場合は罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)の対象となります。36協定の内容と運用を適切に管理することが重要です。
最終更新日:2026年2月25日