解雇無効時のバックペイから中間収入や失業手当は控除できるか
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中間収入は「平均賃金の60%を超える部分」のみ控除可能。いかなる場合も平均賃金の60%は最低支払義務が残る 中間収入がいくら高額でも、平均賃金の60%(労基法26条の休業手当相当額)は最低限支払わなければなりません。バックペイを0円にすることはできません。 |
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中間収入が平均賃金の40%を超えれば賞与等の全額も追加控除可能。失業手当は控除不可 中間収入が平均賃金の40%を超える場合は、賞与等(平均賃金算定の基礎に算入されない賃金)の全額も控除できます(いずみ福祉会事件最高裁平成18年)。一方、失業手当は性質が異なるため控除できません。 |
01中間収入控除の基本ルール(労基法26条・60%/40%ルール)
解雇が無効と判断された場合に支払う賃金(バックペイ)から、解雇期間中の中間収入(他社で働いて得た収入)を一定の範囲で控除することはできます。ただし、その中間収入が副業収入のようなものであって解雇がなくても取得できた(自社の収入と両立する)といった特段の事情がない限り、控除できる範囲は次のとおり限られています。
①月例賃金のうち平均賃金の60%を超える部分(平均賃金額の40%相当)
月例賃金のうち、平均賃金の60%(労基法26条)を超える部分、すなわち平均賃金額の40%に相当する部分が控除の対象となります。
②賞与等の全額(中間収入が平均賃金の40%を超える場合)
中間収入が平均賃金の40%を超える場合には、さらに平均賃金算定の基礎に算入されない賃金(賞与等)の全額も控除の対象となります。
この控除の基準は、米軍山田部隊事件最高裁第二小法廷昭和37年7月20日判決、あけぼのタクシー事件最高裁第一小法廷昭和62年4月2日判決、いずみ福祉会事件最高裁第三小法廷平成18年3月28日判決によって示されています。
つまり、いかなる場合も平均賃金の60%(労基法26条の休業手当相当額)は最低限支払わなければなりません。中間収入がいくら高額でも、バックペイを0円にすることはできない点に注意が必要です。
控除には「時期的対応」が必要
控除しうる中間収入は、その発生期間が賃金の支給対象期間と時期的に対応していることが必要であり、時期が異なる期間内に得た収入を控除することは許されません(あけぼのタクシー事件最高裁第一小法廷昭和62年4月2日判決)。例えば、4月分の中間収入は4月分のバックペイからしか控除できず、5月分のバックペイから控除することはできません。
02具体的な計算例
解雇期間中の賃金が月額30万円、平均賃金も月額30万円と仮定して、中間収入の控除がどのように働くのかを説明します。
ケース①:中間収入が平均賃金の40%(12万円)を超えない場合
他社で毎月10万円を稼いでいた場合には、30万円−10万円=20万円の賃金を毎月支払えば足ります。
ケース②:中間収入が平均賃金の40%(12万円)を超える場合
他社で毎月25万円を稼いでいた場合には、30万円−25万円=5万円の賃金を支払えば足りることにはならず、平均賃金の60%(18万円)を毎月支払わなければなりません。ただし、平均賃金算定の基礎に算入されない賃金(賞与等)がある場合には、その全額を対象として控除することができます。
03失業手当・副業収入の取扱い
失業手当は控除できない
解雇期間中に失業手当を受給していたとしても、失業手当額はバックペイから控除してもらえません。失業手当は雇用保険から支給されるものであり、中間収入(他社での就労による収入)とは性質が異なるからです。失業手当を控除できると勘違いしている会社経営者が多いため、特に注意が必要です。
副業収入は特段の事情があれば控除対象外
中間収入について、その収入が「副業収入のようなものであって解雇がなくても取得できた(自社の収入と両立する)」といった特段の事情がある場合は、控除の対象となりません。例えば、解雇前から副業として行っていたアルバイト収入等は、解雇がなくても取得できたものとして控除対象外となる可能性があります。
よくある会社経営者の誤解
✕ 「失業手当をもらっているのだから、その分を差し引いていい」→ 誤りです。失業手当は雇用保険から支給されるものであり、バックペイから控除することはできません。
✕ 「解雇期間中に他社でたくさん稼いでいるから、バックペイは0円でよい」→ 誤りです。中間収入がいくら多くても、平均賃金の60%は最低限支払わなければなりません。
✕ 「昨年の中間収入を今年のバックペイと相殺できる」→ 誤りです。中間収入の控除には時期的対応が必要であり、発生時期の異なるバックペイとの相殺はできません。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
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最終更新日:2026年4月5日