この記事の結論
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強制執行で源泉徴収できなかった場合でも、会社の源泉所得税納付義務は消滅しない

バックペイは給与所得であるため、会社は源泉徴収義務を負います(所得税法183条)。強制執行で額面全額を差し押さえられ源泉徴収できなかったという事情は、納付義務を免除する理由にはなりません。源泉相当額は労働者に求償できますが、実務上は困難なケースが多いです。

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判決放置は強制執行・遅延損害金・不納付加算税の三重リスクを招く

賃金支払命令の判決を放置すると、強制執行・遅延損害金の加算・源泉所得税の不納付加算税という三重の負担が生じます。判決が出た段階で速やかに会社側専門の弁護士に相談し、対応方針を決めることが最善策です。

01強制執行されても源泉所得税の納付義務は消滅しない

 解雇が無効と判断され賃金の支払を命じる判決が確定した場合、その賃金(バックペイ)は給与所得に当たります。給与所得に対して、使用者(会社)は源泉所得税を源泉徴収して税務署に納付する義務(源泉徴収義務)を負います(所得税法183条)。

 判決を放置していたところ強制執行されてしまい、源泉所得税を差し引く前の額面全額が差し押さえられた場合でも、この源泉徴収義務・納付義務は消滅しません。強制執行によって源泉徴収できなかったという事実は、源泉所得税の納付義務を免除する理由にはならないのです。

 したがって、「強制執行のため源泉徴収できなかったのだから、源泉所得税を納付しなくてもよい」という考えは誤りです。会社は依然として源泉所得税を税務署に納付する義務を負います。

納付を怠った場合のペナルティ

 源泉所得税の納付を怠った場合、税務署から不納付加算税(原則として未納付の源泉所得税額の10%、税務署の調査前に自主的に納付した場合は5%)および延滞税が課されるリスクがあります。判決を放置したことによって、バックペイ本体に加えて、源泉所得税のペナルティまで負担しなければならないという事態になりかねません。

02強制執行後の対応と源泉所得税の取扱い

 強制執行(差押え)においては、源泉所得税相当額を差し引く前の額面全額の金額で財産が差し押さえられます。バックペイの性質は賃金(給与所得)ですが、強制執行の場面では労働者は源泉前の全額を受け取ることになります。

 この場合、会社は源泉所得税相当額を別途税務署に納付することになります。そして、源泉所得税の労働者負担分(給与所得者負担分)については、会社は労働者に対して求償することができます。ただし、求償が実際に成功するかどうかは別問題であり、実務上は困難なケースも多い点に留意が必要です。

強制執行後の具体的な対応手順

①税理士・弁護士に相談し、源泉所得税を計算する
差し押さえられた金額と給与所得としての性質を前提に、納付すべき源泉所得税額を確定します。

②速やかに税務署へ源泉所得税を納付する
不納付加算税・延滞税のペナルティを避けるため、早急に対応することが重要です。

③労働者へ源泉所得税相当額を求償する
労働者負担分は求償できますが、実務上は回収が困難なケースが多いのが実情です。

03判決を放置することの三重のリスク

 解雇無効の賃金支払命令判決を放置することは、次の三つのリスクを同時に生じさせます。「どうせ払えないから放置する」という判断は、問題をより深刻にするだけです。

①強制執行のリスク
判決が確定しても会社が任意に支払わない場合、労働者側は強制執行(給与差押え・預金口座の差押え・動産差押え・不動産差押え等)を行うことができます。会社の業務・信用に重大な影響が生じる可能性があります。

②遅延損害金の加算リスク
判決確定後も支払を放置すると、遅延損害金(民事法定利率年3%)が加算され続けます。放置期間が長くなるほど支払総額が増大します。

③源泉所得税のペナルティリスク
強制執行によって源泉徴収が困難な状況になり、源泉所得税の不納付加算税・延滞税が課されるリスクがあります。判決が出た段階で速やかに対応することで、これらのリスクを最小化できます。

よくある会社経営者の誤解

 「強制執行されてしまったのだから、源泉所得税を払わなくていい理由がある」→ 誤りです。強制執行によって源泉徴収できなかった事情は、納付義務を免除する理由になりません。会社の源泉徴収義務・納付義務は強制執行後も存続します。

 「解雇無効の判決が出ても、どうせ払えないからとりあえず放置しておけばいい」→ 避けるべきです。判決放置は強制執行・遅延損害金の加算・源泉所得税の不納付加算税という三重のリスクを招きます。

経営上のポイント 解雇無効の賃金支払命令判決を放置して強制執行された場合でも、バックペイは給与所得であるため会社の源泉所得税納付義務は消滅しません。源泉徴収できなかった分は労働者に求償できますが、実務上は回収が困難です。判決の放置は強制執行・遅延損害金・不納付加算税の三重のリスクを招くため、放置は最も避けるべき選択です。判決が出た直後に会社側専門の弁護士へ相談し、和解・合意退職も含めた出口を検討したうえで、税理士とも連携して源泉所得税を適切に処理することが、負担を最小化する近道です。労働審判対応の総合解説もあわせてご確認ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

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弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月1日


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