勤務態度不良が周知の事実でも証拠固めが必要なのはなぜか
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訴訟では労働者側は問題を否定するのが通常。利害関係人の証言は客観的な書証に比べ証明力が劣りやすい 「本人が一番よく知っているはず」「みんなが証言してくれるはず」という期待は、実際の紛争ではあてになりません。解雇の有効性は、客観的な書面・記録によって支えられます。 |
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解雇前にしかできない準備がある。客観的証拠の整備と、問題社員の言い分の聴取 解雇に踏み切る前に、具体的事実を客観的証拠で示せるかを確認し、本人の言い分も聴取しておくことが重要です。これらは紛争が表面化した後では取り返せません。 |
01「本人も周囲も知っている」という考えの危険性
訴訟では労働者側は「問題なかった」と主張するのが通常
十分な証拠固めをしないまま、「彼の勤務成績・勤務態度が悪いことは本人が一番よく知っているはずだ。このことは社員みんなが知っていて証言してくれるはずだから、裁判にも勝てる」といった考えに基づいて問題社員を解雇する事例が見られます。しかし、これは非常に危険な考え方です。
訴訟や労働審判に発展するような事案では、労働者側は自分の勤務成績・勤務態度に問題はなかったと主張してくるのが通常です。「本人が一番よく知っているはずだから問題を認めるはず」という期待は、多くの場合裏切られます。解雇された後に自ら問題を認めることは、自分に対する解雇を正当化することにつながるため、労働者側が問題の存在を争ってくるのは、いわば当然のことなのです。
利害関係人の証言は、客観的な書証に比べ証明力が劣りやすい
「社員みんなが証言してくれるから裁判に勝てる」という期待にも、注意が必要です。経営者や同僚といった利害関係人の証言は、会社が期待するほどには決め手になりにくいのが実情です。
裁判所は、解雇の有効性を判断する際、その時々の記憶に基づく証言よりも、問題が生じた当時に作成された客観的な書面・記録を重視する傾向があります。証言は、無意識のうちにも自分側に有利な内容になりやすく、後から作られた記憶による補正も避けられないため、それ単独では証明力が高く評価されにくいのです。もっとも、証言が無意味というわけではありません。客観的な書証と整合する証言は、事実認定を補強する有力な材料となります。逆に言えば、裏づけとなる書面・記録があってこそ、証言も力を持つということです。
また、証言を依頼された社員の側にも、事情があります。仮に解雇が無効とされて問題社員が職場に戻ってくることを考えると、正面から問題を証言することをためらう社員が出てくることもあります。証言があてになるとは限らないという前提で、証拠を準備しておく必要があります。
よくある会社経営者の思い込み
✕ 「本人も勤務態度の悪さは分かっているはずだから、まさか否定しないだろう」→ 実際には否定されることが多いです。訴訟・労働審判では、労働者側が問題の存在を争ってくるのが通常です。
✕ 「仕事仲間みんなが問題を知っているから、証言してくれれば勝てる」→ 証言だけに頼るのは危険です。証言は客観的な書証に比べ証明力が劣りやすく、証言を避けたり内容が曖昧になったりすることもあります。客観的証拠こそが土台になります。
02解雇前に確認すべきこと
客観的証拠の確認
解雇に踏み切る前の段階で、①解雇されてもやむを得ないと考えられるような具体的事実を説明することができるか、②その事実を立証できるだけの客観的証拠が準備できているか、という二点を確認する必要があります。
客観的証拠としては、注意指導書・業務日報・メール・面談記録・業績評価書等が挙げられます。これらが整備されていない場合には、解雇の有効性を主張することが難しくなります。
解雇前に問題社員の言い分を聴取する
相手の言い分を聞かないことには、解雇されてもやむを得ないと考えられるような具体的事実があるのかどうかを、正しく確認することが難しいのが通常です。解雇に踏み切る前に、問題社員の言い分を十分に聴取し、会社側が認識している事実関係と照らし合わせて、客観的にどのような事実が認定できるのかを検討すべきです。
問題社員の言い分を聴取することには、二つの意義があります。第一に、会社側が把握していない事情(合理的な弁解、健康上の問題、職場環境の問題等)が判明することがあり、解雇の相当性を判断するための材料が得られます。第二に、解雇前に弁明の機会を与えたという事実が、解雇手続の適正さ(社会通念上の相当性)を支える要素となります。就業規則に弁明の機会の付与等の手続が定められている場合には、その手続に従うことも必要です。
実務でよく見られるパターン
・社員全員が問題を知っていると考えて解雇したところ、訴訟では労働者側が問題を全面的に争い、社員の証言も曖昧なものにとどまり、客観的証拠がほとんどなかった。結果として解雇無効とされ、高額のバックペイの支払を余儀なくされた。
・問題社員を解雇する前に弁護士に相談し、証拠の確認と言い分の聴取を実施した。言い分を聴取したところ健康上の問題が判明し、退職勧奨によって合意退職が成立した。客観的証拠の整備と早期の対応が、円満な解決につながった。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
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最終更新日:2026年7月1日