この記事の要点

行政解釈は、管理監督者を「一般的には、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」と定義している

「経営者と一体的な立場」という概念が管理監督者性の核心です

管理監督者に当たるかどうかは「名称にとらわれず、実態に即して判断すべき」とされている

「部長」「課長」等の肩書があっても、実態が伴わない場合は管理監督者に当たりません

「経営者と一体的な立場」とは、労働条件の決定・その他労務管理について経営者と同等の権限・立場を有することを意味する

形式的な権限(規程上の権限)があっても実際には行使できない場合は要件を満たしません

行政解釈は裁判所を拘束しないため(313番参照)、行政解釈に従っても裁判での勝訴を保証するものではない

行政解釈を参考にしつつ、下級審裁判例も踏まえた判断が必要です

01行政解釈における管理監督者の定義

 312番・313番で解説したとおり、労基法41条2号は「監督若しくは管理の地位にある者」(管理監督者)を労働時間・休憩・時間外休日割増賃金・休日規定の適用除外としていますが、法令上、管理監督者の具体的内容は定められていません。

 このため、行政機関(厚生労働省・労働基準監督署)による行政解釈が実務上の参考情報として重要な位置を占めています。行政解釈は、管理監督者を以下のとおり定義しています。

管理監督者の行政解釈(概要)

定義:「一般的には、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」

判断方法:「名称にとらわれず、実態に即して判断すべきものである」

02「経営者と一体的な立場にある者」の意味

 行政解釈が管理監督者を「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」としているのは、管理監督者は使用者側の立場として労働時間規制の枠外に置かれるほどの権限・立場を有していることを前提としているからです。

 「経営者と一体的な立場」であるためには、労働条件の決定(採用・解雇・賃金・勤務時間等の決定)やその他の労務管理(勤怠管理・人事評価等)について、経営者と同等の権限や関与ができる立場にあることが求められます。

「経営者と一体的な立場」の判断上の留意点
・規程上(形式上)は「部長」として労働条件決定への関与権限が与えられていても、実際には権限を行使できない・全て上位者の指示に従うだけという場合は「経営者と一体的な立場」とはいえない
・「一部の業務について権限があるが、労働条件の決定等についての権限はない」という場合も、管理監督者の要件を満たさない可能性がある
・権限の有無は書面(就業規則・職務権限規程等)の記載だけでなく、実際の運用実態で判断される

03「名称にとらわれず実態に即して判断」の意味

 行政解釈が「名称にとらわれず、実態に即して判断すべきもの」としていることは、管理監督者の判断において、「部長」「課長」「マネージャー」等の役職名称が管理監督者に当たるかどうかを決定するわけではないことを意味します。

 この点は実務上非常に重要です。逆に言えば、「部長」という肩書があっても管理監督者の実態が伴わない「名ばかり管理職」は管理監督者に当たらず、「係長」等の比較的下位の役職でも、実態として管理監督者の要件を満たす場合は管理監督者に当たり得ます。

状況 管理監督者に当たるか
「部長」の肩書があるが、実態は経営者と一体的な立場にない 当たらない可能性が高い(名ばかり管理職)
「部長」の肩書があり、実態として経営者と一体的な立場にある 当たる可能性がある
「係長」等の役職でも、実態として経営者と一体的な立場にある 当たる可能性がある

04行政解釈の限界——裁判所を拘束しない

 313番で解説したとおり、行政解釈が裁判所を拘束しないことは明らかです。行政解釈の内容は管理監督者性を判断する上で重要な参考情報となりますが、「行政解釈上は管理監督者に当たる」という判断が、裁判においても同様の結論になるとは限りません。

 裁判官は行政解釈を参照することはあっても、行政解釈に従う義務はなく、独自の判断で「管理監督者に当たる・当たらない」を判断します。したがって、行政解釈だけを参照して「問題ない」と判断するのは危険であり、下級審裁判例の傾向も踏まえた総合的な判断が必要です。

05まとめ

 行政解釈は管理監督者を「一般的には、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」と定義し、「名称にとらわれず、実態に即して判断すべき」としています。したがって、「部長」等の肩書があっても実態が伴わない名ばかり管理職は管理監督者には当たりません。また、行政解釈は裁判所を拘束しないため(313番参照)、行政解釈を参考にしつつ下級審裁判例の傾向も踏まえた判断が必要であり、具体的な判断については使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することをお勧めします。アドバイスします。

SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。管理職の管理監督者性の判断・残業代の取り扱い・残業代トラブルの予防でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。アドバイスします。

Q&Aよくある質問

Q1. 行政解釈は管理監督者をどのように定義していますか。

A. 「一般的には、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」と定義し、「名称にとらわれず、実態に即して判断すべきものである」としています。

Q2. 「経営者と一体的な立場にある者」とはどのような者ですか。

A. 労働条件の決定(採用・解雇・賃金・勤務時間等の決定)やその他の労務管理(勤怠管理・人事評価等)について、経営者と同等の権限や関与ができる立場にある者をいいます。形式的(書面上)の権限があるだけでなく、実際に行使できる実質的な権限が必要です。

Q3. 「名称にとらわれず実態に即して判断する」とはどういう意味ですか。

A. 「部長」「課長」等の役職名称が管理監督者に当たるかどうかを決定するわけではないことを意味します。「部長」の肩書があっても実態が伴わない(名ばかり管理職)場合は管理監督者に当たらず、比較的下位の役職でも実態として経営者と一体的な立場にある場合は管理監督者に当たり得ます。

Q4. 行政解釈に従えば裁判でも管理監督者と認められますか。

A. 必ずしもそうなるとは限りません。行政解釈が裁判所を拘束しないことは明らかです(313番参照)。裁判官は行政解釈を参照することはあっても、従う義務はなく、独自の判断で管理監督者性を判断します。行政解釈に加えて下級審裁判例の傾向も踏まえた判断が必要であり、使用者側弁護士・会社側弁護士への相談をお勧めします。

最終更新日:2026年5月10日



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