この記事の結論
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中労委はショーワ事件で「使用者性を判断するための一般的な法理」を示した

中央労働委員会は、ショーワ事件平成24年9月19日決定において、労組法7条の「使用者」性を判断するための一般的な法理を示し、以後の事件でも同様の立場を維持しています。

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「使用者」は雇用主に限定されず、3類型が示されている

①労働契約上の雇用主が基本ですが、②基本的な労働条件等を現実的かつ具体的に支配する者、③近い将来に雇用関係成立の可能性が現実的・具体的に存する者も「使用者」に当たり得ます。

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③の類型は朝日放送事件最高裁判決にはない独自の要素

③「近い将来に雇用関係の成立する可能性が現実的かつ具体的に存する者」は、朝日放送事件最高裁判決では触れられていない類型で、おそらくクボタ事件東京地裁判決の見解を取り入れたものと思われます。

01中労委による「使用者性を判断するための一般的な法理」の意義

 近時の中央労働委員会(中労委)は、不当労働行為について定めた労組法7条の「使用者」の範囲に関し、ショーワ事件平成24年9月19日決定において「労組法第7条の使用者性を判断するための一般的な法理」を示しました。以後の事件でも同様の立場を取っていますので、この一般的な法理は中労委の確定した見解となっているものと思われます。

 中労委は、都道府県労働委員会の命令に対する再審査を担う機関であり、その判断は実務上の重要な指針となります。「使用者」の範囲に関する中労委の立場を理解することは、団体交渉への対応において重要です。

02「使用者」の基本的な意味

 中労委の一般的な法理によれば、労組法7条の「使用者」は、「同法が助成しようとする団体交渉を中心とした集団的労使関係の一方当事者としての使用者」を意味するとされています。

 この立場の背景にあるのは、労組法7条が、労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進するために、労働者が自主的に労働組合を組織し、使用者と労働者の関係を規制する労働協約を締結するための団体交渉をすること、その他の団体行動を行うことを助成しようとする労組法の理念に反する使用者の一定の行為を禁止するものであるという理解です。

 つまり、「使用者」とは単に形式的な雇用契約の当事者だけを指すのではなく、労働組合との集団的労使関係において実質的な影響力を持つ者を広く含む概念として捉えられています。

03「使用者」の3類型(中労委の一般的な法理)

 中労委の示した一般的な法理によれば、労組法7条の「使用者」として、以下の者が該当するとされています。

労組法第7条の使用者性を判断するための一般的な法理

① 労働契約上の雇用主
これが基本的に「使用者」に該当するが、必ずしも雇用主に限定されるものではない。

② 当該労働者の基本的な労働条件等に対して、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有しているといえる者
形式的な雇用関係がなくても、労働条件等を実質的に支配・決定できる地位にあれば「使用者」に当たり得る。

③ 当該労働者との間に、近い将来において雇用関係の成立する可能性が現実的かつ具体的に存する者
現時点では雇用関係がなくても、近い将来に雇用関係が成立する具体的可能性があれば「使用者」に当たり得る。

 ①②③のいずれかに該当する場合、その者は「雇用主と同視できる者」として労組法7条の「使用者」と解すべきとされています。

04朝日放送事件最高裁判決との関係

 中労委により例示された①②は、朝日放送事件最高裁平成7年2月28日第三小法廷判決の判断と共通しています(454番参照)。同判決も、雇用主以外の事業主であっても、基本的な労働条件等について雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配・決定できる地位にある場合には「使用者」に当たるとしていました。

 一方、③「近い将来において雇用関係の成立する可能性が現実的かつ具体的に存する者」については、朝日放送事件最高裁判決では触れられていません。これはおそらく、クボタ事件東京地裁平成23年3月17日判決の見解を取り入れたものと思われます。

 ③の類型が問題となり得る場面としては、例えば、採用内定の取消しが問題となるケースや、業務委託先からの直接雇用への移行が予定されているケースなどが考えられます。

05会社経営者として注意すべき点

 中労委の一般的な法理は、最高裁判決よりも広い範囲で「使用者」を認める可能性があります。特に③の類型は、現在は直接の雇用関係がなくても、将来的な雇用関係の成立可能性があれば「使用者」と判断される余地があることを意味します。

 実務上は、業務委託先の労働者から団体交渉を申し入れられた場合や、採用内定を取り消した者が所属する組合から団体交渉を申し入れられた場合などに、この問題が生じる可能性があります。

経営上のポイント 「雇用契約を結んでいないから無関係」という判断は、中労委の立場からは必ずしも通用しません。業務委託先や派遣労働者との関係で団体交渉の申し入れを受けた場合は、自社が「使用者」に当たるかどうかを含め、使用者側弁護士に早急に相談することをお勧めします。アドバイスします。

SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 中労委と都道府県労働委員会の関係はどのようになっていますか。

A. 都道府県労働委員会が最初の審査機関で、その決定に不服がある場合には中央労働委員会(中労委)に再審査を申し立てることができます。中労委の命令にさらに不服がある場合は、裁判所に取消訴訟を提起することになります。中労委は全国的な統一的基準を示す役割を担っており、その判断は実務上の重要な指針となります。

Q2. ③の「近い将来に雇用関係が成立する可能性」はどのような場合に認められますか。

A. 具体的にどのような場合に認められるかは事案によって異なりますが、例えば採用内定を取り消した場合や、業務委託先の労働者を直接雇用に切り替える予定があった場合などが考えられます。「近い将来」「現実的かつ具体的」という要件が課されており、単なる採用の可能性にとどまる場合は該当しないと考えられます。

Q3. 中労委の法理は裁判所でも通用しますか。

A. 中労委の法理はあくまで行政機関としての解釈であり、裁判所を法的に拘束するものではありません。ただし、最高裁判決が示した朝日放送事件の枠組みとも整合性があり、裁判所の判断においても参考にされることがあります。実務的には中労委の解釈を踏まえた対応が重要です。

最終更新日:2026年2月25日


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