この記事の結論
1

「同種の労働者」は労働協約が適用され得る範囲によって決定される

行政解釈は、「同種の労働者」は当該労働協約が適用され得る範囲によって決定されるとしています(昭和24年10月24日労収8180号)。協約の対象が全従業員なら全従業員が、工員のみなら工員が、旋盤工のみなら旋盤工が、それぞれ「同種の労働者」となります。

2

「同種の労働者」の範囲は4分の3要件の計算と拡張適用の対象の両方に影響する

4分の3要件を充足するかどうかを計算する際の分母・分子(組合員数)と、拡張適用される未組合員の範囲のいずれも「同種の労働者」の範囲によって決まります。

3

労働協約の対象範囲の定め方が「同種の労働者」の範囲を決める重要な要素となる

労働協約の適用対象を「全従業員」と定めるか「特定職種のみ」と定めるかによって、「同種の労働者」の範囲が変わります。協約の設計段階での検討が重要です。

01行政解釈による「同種の労働者」の定義

 労組法17条の「同種の労働者」の範囲について、行政解釈は、「同種の労働者」は労働協約の適用され得る範囲によって決定されるとしています(昭和24年10月24日労収8180号)。

 すなわち、当該労働協約がどのような労働者に適用されることを定めているかによって、「同種の労働者」の範囲が画されます。労働協約の定め方(適用対象の設定)が、「同種の労働者」の範囲を決める最も重要な要素となります。

02具体例による「同種の労働者」の範囲

 行政解釈が示した具体例に基づき、「同種の労働者」の範囲を整理すると以下のとおりです。

協約の適用範囲と「同種の労働者」の対応関係

当該労働協約が「工場事業場の全従業員」に適用され得る場合
→ 当該工場事業場の全従業員が「同種の労働者」

当該労働協約が「工員のみ」に適用され得る場合
工員が「同種の労働者」(事務員・管理職等は含まない)

当該労働協約が「旋盤工のみ」に適用され得る場合
旋盤工が「同種の労働者」(他職種は含まない)

 このように、「同種の労働者」の範囲は協約の適用対象が広いほど広く、狭いほど狭くなります。

03「同種の労働者」の範囲が4分の3要件に与える影響

 労組法17条の一般的拘束力(拡張適用)が発動するには、「同種の労働者の4分の3以上」が当該労働協約の適用を受けることが必要です(497番参照)。この計算において、分母(総数)・分子(協約適用組合員数)ともに「同種の労働者」の範囲内で計算されます。

 「同種の労働者」の範囲が広く設定されると、分母が大きくなるため4分の3要件を充足するのが難しくなります。一方、範囲が狭く設定されると分母が小さくなるため要件を充足しやすくなります。同時に、4分の3要件を充足した場合に拡張適用される未組合員の範囲も「同種の労働者」によって決まります。

04拡張適用の対象となる「他の同種の労働者」

 労組法17条は、4分の3以上の要件を満たした場合に、「当該工場事業場に使用される他の同種の労働者」にも当該労働協約が適用されると定めています。この「他の同種の労働者」とは、当該「同種の労働者」の範囲内にいるが、当該労働協約の適用を受けていない未組合員・他組合員を指します。

 例えば、工員を対象とした協約が締結されており、工員のうち4分の3以上が協約の適用を受けている場合、残りの工員(未組合員・他組合員)にも協約が拡張適用されます。ただし、工員を対象とした協約は、事務員や管理職には拡張適用されません。「同種の労働者」の範囲外の者は拡張適用の対象外です。

05使用者として注意すべき実務上のポイント

 組合と労働協約を締結する際、その協約の適用対象の定め方によって「同種の労働者」の範囲が決まり、拡張適用の範囲も変わります。使用者として、労働協約の内容が拡張適用された場合の影響(未組合員への協約内容の適用)を事前に検討したうえで協約の設計・交渉に臨むことが重要です。

 特に、「全従業員」を対象とした協約を締結した場合、事業場の全従業員が「同種の労働者」となり、4分の3以上の要件を充足すれば、パート・アルバイト・契約社員等を含む全従業員に協約が拡張適用される可能性があります。協約内容が未組合員にも適用されることの経営上の影響を慎重に検討する必要があります。

経営上のポイント 「同種の労働者」は労働協約が適用され得る範囲によって決まります。協約の適用対象の設定次第で、一般的拘束力の発動範囲(4分の3要件の計算・拡張適用の対象)が大きく変わります。組合との協約締結にあたっては、拡張適用が発動した場合の影響を事前に確認し、使用者側弁護士と相談のうえ対応することをお勧めします。アドバイスします。
SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 正社員組合との協約に「全従業員に適用する」とある場合、パート・アルバイトも「同種の労働者」になりますか。

A. 協約の文言だけで決まるわけではなく、実態として協約がパート・アルバイトにも「適用され得るもの」かどうかも重要です。正社員のみを組合員とする組合が締結した協約が、パート・アルバイトにも適用される内容(例:全従業員対象の福利厚生規定等)であれば、「同種の労働者」にパート・アルバイトが含まれる可能性があります。協約の文言と実態の両面から判断が必要ですので、具体的な状況について弁護士に確認することをお勧めします。

Q2. 「同種の労働者」の範囲について、当事者(組合・使用者)が合意で決めることはできますか。

A. 「同種の労働者」の範囲は、労働協約の適用対象の設定によって客観的に決まるものです。当事者が恣意的に「同種の労働者」の範囲を合意で決定することはできません。ただし、労働協約自体の適用対象を誰にするかは、組合と使用者が労使交渉で決めることができます。協約の適用対象を明確に規定することで、「同種の労働者」の範囲を間接的に整理することが可能です。

Q3. 管理職は「同種の労働者」に含まれますか。

A. 管理職が「同種の労働者」に含まれるかどうかは、当該労働協約の適用対象によって決まります。一般的に、管理職は組合員でないことが多く(管理監督者は労働組合員の資格がない場合がある)、労働協約も管理職には適用されないことが多いです。管理職が協約の適用対象に含まれていなければ「同種の労働者」には含まれません。ただし、協約の規定や実態によって異なる場合もあります。

Q4. 「同種の労働者」の範囲と「常時使用される」(498番)の概念はどのように組み合わさりますか。

A. 4分の3要件の計算は「常時使用される同種の労働者」の総数を分母として行います。つまり、①当該事業場で「常時使用される」労働者(498番)であり、かつ②当該協約の「同種の労働者」(499番)に該当する者、の両方を満たす者が計算の基礎となります。例えば、工員を対象とした協約の場合、「常時使用される工員」の総数が分母となり、そのうち協約適用組合員が分子となります。

最終更新日:2026年2月25日


Return to Top ▲Return to Top ▲