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残業代の計算では精皆勤手当を考慮しなければならないことが多い 精皆勤手当が残業代(労基法37条の割増賃金)の除外賃金である「臨時に支払われた賃金」(労基則21条4号)に該当しない限り、残業代の時間単価の計算に精皆勤手当を含めなければなりません。 |
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最低賃金の計算では精皆勤手当は考慮されない 最低賃金の計算から精皆勤手当が除かれるのは、「当該最低賃金において算入しないことを定める賃金」(最低賃金法4条3項3号)に該当するからです。精皆勤手当は最初からこの除外対象として位置付けられています。 |
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根拠条文の趣旨が全く異なるため、扱いが異なっても矛盾ではない 残業代と最低賃金は、根拠条文・法の趣旨がそれぞれ異なります。「臨時に支払われた賃金」という言葉が両方に登場しますが、別の条文に基づくものであり、解釈が連動するわけではありません。 |
目次
01会社経営者として感じる「不公平感」
精皆勤手当は、最低賃金の時間単価を計算する際には考慮されません。これに対し、残業代(労基法37条の割増賃金)を計算する際には、精皆勤手当を基礎賃金に加えなければならないことが多いのが実情です。
最低賃金の計算でも、残業代の計算でも、会社の負担が重くなる方向で考えなければならない——そのように感じる会社経営者の方は多いでしょう。なぜこのような違いが生じるのか、当然疑問に思われることだと思います。
この違いは、抽象的に言えば法の趣旨が異なることから生じるものですが、ここでは具体的に条文を示して解説します。
02残業代の計算における精皆勤手当の扱い
残業代(労基法37条の割増賃金)を計算する際に精皆勤手当を考慮しなければならないかは、精皆勤手当が除外賃金に該当するかどうかによって決まります。
労基法37条の割増賃金の計算から除外できる賃金(除外賃金)は、労働基準法施行規則21条に限定列挙されています。除外賃金として列挙されているのは次の5種類です。
残業代(割増賃金)の除外賃金(労基則21条)
1号 家族手当
2号 通勤手当
3号 別居手当
4号 子女教育手当
5号 住宅手当
6号 臨時に支払われた賃金
7号 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
精皆勤手当はこの列挙に含まれていません。問題となるのは「臨時に支払われた賃金」(6号。労基則の番号では21条4号)に該当するかどうかです。
精皆勤手当が「臨時に支払われた賃金」に該当するかについては、毎月支払われる精皆勤手当は「臨時」性がなく、除外賃金には該当しないと解されることが一般的です。したがって、毎月支払われる精皆勤手当は残業代の基礎賃金に含めて計算しなければならないことが多いのが現状です。
03最低賃金の計算における精皆勤手当の扱い
最低賃金の時間単価を計算する際に精皆勤手当が考慮されないのは、最低賃金法4条3項が最低賃金と比較する際に算入しない賃金を定めており、精皆勤手当がここに該当するからです。
最低賃金の計算から除外される賃金(最低賃金法4条3項)
1号 臨時に支払われる賃金(最低賃金法施行規則1条1項)
2号 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
3号 当該最低賃金において算入しないことを定める賃金
(精皆勤手当・通勤手当・家族手当が該当)
精皆勤手当が最低賃金の計算から除外されるのは、1号の「臨時に支払われる賃金」に該当するからではなく、3号の「当該最低賃金において算入しないことを定める賃金」に該当するからです。
つまり、最低賃金を決める際に、精皆勤手当は計算から除外することが最初から定められており、その結果として3号の除外賃金となっているのです。精皆勤手当が「臨時に支払われる賃金」に該当するかどうかを検討するまでもなく、精皆勤手当は最低賃金の計算から除外されるという結論が出ます。
04なぜ「臨時に支払われる賃金」の解釈が統一されないのか
残業代の計算でも最低賃金の計算でも、「臨時に支払われる賃金」という表現が登場します。しかし、この二つは全く趣旨の異なる条文に基づくものです。
仮に、精皆勤手当が「臨時に支払われる賃金」(最低賃金法4条3項1号・同法施行規則1条1項)に該当することを理由として最低賃金の計算から除外されているのであれば、残業代の除外賃金である「臨時に支払われた賃金」(労基則21条4号)に該当するかという論点と統一的な取扱いがなされていたかもしれません。
しかし、精皆勤手当が最低賃金の計算から除外される根拠は1号(臨時に支払われる賃金)ではなく3号(当該最低賃金において算入しないことを定める賃金)です。全く趣旨の異なる条文が根拠となっているため、「臨時に支払われる賃金」についての解釈とは無関係に、精皆勤手当は最低賃金の時間単価を計算する際には考慮されないこととなるのです。
精皆勤手当の取扱いの整理
残業代(労基法37条)の計算
精皆勤手当は除外賃金(労基則21条)の列挙なし。「臨時に支払われた賃金」(同条4号)に該当するかを個別に検討する必要がある。毎月支払われる場合は非該当が多く、残業代の基礎賃金に含める必要がある。
最低賃金(最低賃金法4条3項)の計算
精皆勤手当は「当該最低賃金において算入しないことを定める賃金」(3号)に最初から該当し、計算から除外される。「臨時に支払われる賃金」(1号)への該当性を検討するまでもない。
05会社経営者として押さえるべき実務上のポイント
精皆勤手当を設定している会社においては、残業代の計算に精皆勤手当を含めているかどうかを改めて確認してください。毎月支払われる精皆勤手当は、残業代の基礎賃金に含めて計算しなければならないことが多く、含めていない場合は残業代の未払いが生じている可能性があります。
一方、最低賃金との比較においては、精皆勤手当は比較の対象から除外されますので、精皆勤手当の有無は最低賃金遵守の確認に影響しません。ただし、精皆勤手当以外の賃金(基本給等)が最低賃金を下回っていないかは別途確認が必要です。
残業代の計算・最低賃金との比較いずれについても、賃金の種類ごとに判断が異なりますので、複数の賃金項目がある場合は弁護士または社会保険労務士に確認することをお勧めします。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. 精皆勤手当以外に、残業代の計算に含めなければならない手当にはどのようなものがありますか。
A. 労基則21条に列挙された除外賃金(家族手当・通勤手当・別居手当・子女教育手当・住宅手当・臨時に支払われた賃金・1か月超の期間ごとに支払われる賃金)以外の賃金は、原則として残業代の基礎賃金に含めて計算しなければなりません。役職手当・職務手当・資格手当・営業手当・皆勤手当(精皆勤手当)などは、毎月一定額を支払っている場合には残業代の計算に含める必要があることが多いです。自社の手当ごとに確認することをお勧めします。
Q2. 「臨時に支払われた賃金」(労基則21条4号)に該当すれば、精皆勤手当は残業代の計算から除外できますか。
A. 「臨時に支払われた賃金」に該当すれば除外できます。しかし、毎月定額で支払われる精皆勤手当は「臨時」性がなく、この除外賃金に該当しないと解されることが一般的です。出勤状況によって金額が変動し、欠勤した月は支払われないという性質があったとしても、毎月支払われるものは「臨時」とはいいにくいです。具体的な手当の設計・支払い方法によって判断が変わりますので、弁護士に相談することをお勧めします。
Q3. 最低賃金と比較する際、通勤手当や家族手当も除外されますか。
A. はい、通勤手当・家族手当・精皆勤手当の3種類は、最低賃金法4条3項3号の「当該最低賃金において算入しないことを定める賃金」として最低賃金の計算から除外されます。したがって、基本給のみ(またはこれらの手当を除いた賃金)が最低賃金以上であるかどうかを確認する必要があります。
Q4. 精皆勤手当を残業代の計算から除くために就業規則で「除外する」と定めることはできますか。
A. できません。残業代の計算から除外できる賃金は労基則21条に限定列挙されており、就業規則でこれ以外の賃金を除外すると定めても無効となります(労基法13条)。精皆勤手当を同条の除外賃金に含めるためには、その名称にかかわらず、実態として除外賃金の要件(例:「臨時に支払われた賃金」)を満たす必要があります。実態を伴わない名称変更や就業規則の定めで対応しようとすることはお勧めできません。
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最終更新日:2026年2月25日