この記事の結論
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呼出しは「簡易呼出し」で行われ、会社側には普通郵便で届くことが多い

労働審判の呼出しは、迅速な進行のため「簡易呼出し」によることが一般的で、会社側には特別送達ではなく普通郵便で呼出状が届きます。ただし、普通郵便であっても正式な呼出しであり、送達方法が簡易だからといって効力が弱いわけではありません。

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不出頭は、過料に加えて「反論のないまま不利な審判」という重大なリスクを伴う

正当な理由なく出頭しない場合、5万円以下の過料に処せられることがあるほか、会社側の主張・証拠が提出されないまま審理が進み、実質的に不利な審判を下されるおそれがあります。

 労働審判の呼出しは、通常の裁判とは異なり、迅速な手続進行を優先した「簡易呼出し」によって行われます。そのため、会社経営者のもとには、特別送達ではなく普通郵便で呼出状が届くのが一般的です。普通郵便で届くことに戸惑う会社経営者も少なくありませんが、これは手続の軽視ではなく、労働審判の迅速性を確保するための運用です。送達方法が簡易だからといって法的な効力が弱いわけではなく、呼出状が届いた時点で、会社は正式に手続への対応を求められている状態にあります。

 会社側専門の弁護士の立場から、労働審判の呼出しの仕組みと、呼出しを放置した場合のリスク、届いた際に会社が取るべき対応を解説します。

01「簡易呼出し」の仕組み

申立人(労働者側)への呼出し

 申立人である労働者に対しては、裁判所が一方的に期日を指定するのではなく、事前に電話等で日程を調整したうえで、第1回期日が決められるのが通常です。すなわち、労働者側については、出席可能な日程を確認したうえで期日が設定されるため、原則として出頭が前提となる形で手続が組み立てられています。会社側としては、期日が既に相手方の都合を考慮して設定されている以上、当日の審理では実質的な議論が行われることを前提に進行すると理解しておく必要があります。

相手方(会社側)への呼出し

 一方、相手方である会社に対しては、確定した期日を記載した呼出状が郵便で送付される「簡易呼出し」が実務上の原則です。通常の民事訴訟では特別送達という厳格な方法で書類が届くことが多いため、普通郵便で裁判所からの通知が届くことに戸惑うこともありますが、これは労働審判の迅速性を確保するための運用です。重要なのは、送達方法が簡易であっても、呼出状が手元に届いた時点で正式に対応が求められているという点です。「普通郵便だから重要ではない」と判断することは、極めて危険です。

02期日請書の提出と不出頭のリスク

期日請書を提出しない場合

 簡易呼出しを受けた当事者は、裁判所に対して「期日請書」(きじつうけしょ)を提出することが求められます。実務上、この書面を提出しなかったとしても、直ちに手続が停止するわけではありません。また、期日請書が提出されていない場合には、正当な理由なく不出頭であっても過料の制裁を課すことができないとされています。もっとも、これはあくまで制裁の可否に関する問題にすぎません。期日請書を提出しないこと自体が手続を止める効果を持つわけではなく、労働審判はそのまま進行します。期日請書の未提出を理由に対応を遅らせるのではなく、期日への対応と防御準備こそが本質的に重要です。

実質的な「不利な審判」のリスク

 会社側が第1回期日に出頭しない場合、過料の点以上に重大なリスクが生じます。すなわち、会社側の主張や証拠が提出されないまま審理が進行するという状況です。労働審判では、限られた期日の中で心証が形成されるため、会社側が不在のまま期日が行われれば、労働者側の主張を前提とした判断が形成されやすくなります。一度形成された心証を、その後の手続で覆すことは容易ではありません。その結果、実質的には会社側が反論の機会を失い、不利な審判が下される可能性が高まります。呼出しに応じないことは、申立人の主張を認めるに等しい対応となりかねず、確定した労働審判には裁判上の和解と同一の効力があるため、金銭の支払を命じられれば強制執行の対象にもなり得ます。期日請書の提出の有無にかかわらず、必ず期日に対応し、十分な主張立証を行うことが不可欠です。

経営者が見落としやすいポイント

「普通郵便で届いたから、正式なものではないのではないか」という受け止めは危険です。簡易呼出しは労働審判の正式な呼出方法であり、放置すれば、正当な理由のない不出頭として5万円以下の過料に処せられることがあるほか、反論のないまま不利な審判に至るおそれがあります。呼出状が届いたら、直ちに対応を開始する必要があります。

03その他の呼出方法(告知等)

 労働審判の呼出しは簡易呼出しが原則ですが、事案の状況に応じて、それ以外の方法が用いられることもあります。代表的なのが、前回の期日において次回期日を直接伝える「告知による呼出し」です。この場合、当事者はその場で次回期日を認識するため、改めて郵送による通知を待つことなく、対応が求められます。また、個別の事情に応じて、裁判所が相当と認める方法により呼出しが行われることもあります。会社側としては、呼出方法の違いにかかわらず、期日の指定がなされた時点で対応義務が生じるという点を理解し、「正式な通知かどうか」を形式的に判断するのではなく、速やかに対応に着手することが重要です。

04呼出状が届いた際に会社が直ちに行うべきこと

 裁判所からの呼出状が届いた場合、会社に求められるのは、何よりも初動のスピードです。労働審判では第1回期日までの期間が限られているため、対応の遅れがそのまま不利な結果につながります。

呼出状が届いたら①申立内容と期日の正確な把握(どのような請求か、いつまでに何をすべきか)/②社内での事実関係の調査と証拠の保全(人事記録・勤怠データ・メール履歴等の確保)/③労働問題に精通した会社側弁護士への速やかな相談

 呼出状を受け取った時点で、すでに手続が始まっていると認識し、直ちに実務対応へ移行することが、会社のリスクを最小化する鍵となります。特に、短期間で主張を整理する必要があるため、専門的な支援を早期に受けることが結果を左右します。

05よくある質問(FAQ)

Q. 呼出状が普通郵便で届きましたが、これは正式なものですか。

正式な呼出しです。労働審判では迅速性を確保するため、通常の民事訴訟のような特別送達ではなく、普通郵便による簡易呼出しが行われるのが一般的です。普通郵便であっても、正式に対応が求められている点は変わりません。

Q. 第1回期日に出席できない場合はどうなりますか。

正当な理由なく不出頭の場合、5万円以下の過料に処せられることがあるほか、会社側の反論がないまま審理が進み、不利な審判が下されるおそれがあります。都合がつかない場合でも放置せず、弁護士を代理人として出頭させるなどの対応を検討すべきです。

Q. 期日請書とは何ですか。提出は必須ですか。

簡易呼出しを受けたことを認める書面です。提出しない場合でも手続は進行しますが、期日請書を提出しないと、正当な理由のない不出頭であっても過料を課せない扱いとなる一方、手続自体は止まりません。裁判所への誠実な対応を示すためにも、弁護士と相談のうえ提出するのが通例です。

経営上のポイント 労働審判の呼出しは、迅速な進行のため「簡易呼出し」によることが一般的で、会社側には特別送達ではなく普通郵便で呼出状が届きます。普通郵便であっても正式な呼出しであり、送達方法が簡易だからといって効力が弱いわけではありません。呼出しを受けたら期日請書を提出するのが通例で、これを提出しない場合、正当な理由のない不出頭であっても過料を課せない扱いとなりますが、手続自体は止まりません。正当な理由なく出頭しなければ5万円以下の過料に処せられることがあるうえ、会社側の主張・証拠が提出されないまま審理が進み、実質的に不利な審判が下されるおそれがあります。確定した労働審判は裁判上の和解と同一の効力を持ち、強制執行の対象にもなり得ます。呼出状が届いたら、放置せず直ちに事実関係の調査・証拠の保全に着手し、会社側・使用者側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。裁判所からの呼出状が届き、対応にご不安がありましたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月13日


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