この記事の結論
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懲戒解雇は制裁としての最も重い懲戒処分。就業規則の懲戒事由への該当が絶対的前提

使用者の懲戒権の発動による制裁罰として企業秩序に違反した労働者に行われる解雇です。就業規則がない・懲戒事由の規定がない・規定に該当しない場合は懲戒解雇として行うことは原則としてできません。

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退職金の不支給・減額には就業規則・退職金規程の明確な規定が必要。規定なしでは支払義務あり

「懲戒解雇したのだから退職金を払わなくてよい」は規定の内容次第です。また懲戒解雇が無効となれば退職金の不支給・減額も問題となります。懲戒解雇前に就業規則・退職金規程を必ず確認してください。

01懲戒解雇の定義:制裁としての最も重い懲戒処分

 懲戒解雇とは、使用者が有する懲戒権の発動により、一種の制裁罰として企業秩序に違反した労働者に対し行われる解雇をいいます。懲戒処分には、譴責・戒告・減給・出勤停止・降格・諭旨解雇・懲戒解雇などの種類がありますが、懲戒解雇はこれらの中で最も重い処分です。

 懲戒解雇が問題となる典型的な事案としては、横領・背任・業務上の不正行為・重大なハラスメント(セクハラ・パワハラ)・経歴詐称・重大な就業規則違反・刑事事件による逮捕・有罪判決などがあります。これらはいずれも、企業秩序を著しく乱す行為として、使用者が懲戒権を行使して制裁を科すことが認められる場面です。

02懲戒解雇と普通解雇の違い

 普通解雇は、労働者の能力不足・適格性欠如・勤務態度不良・傷病による就労不能などを理由とする解雇であり、制裁的な性質を持ちません。解雇権濫用法理(労働契約法16条)に基づき、客観的合理的理由と社会通念上の相当性が求められます。

 これに対して懲戒解雇は、就業規則に定める懲戒事由に該当する非違行為を理由とした制裁としての解雇です。有効要件も異なり、①就業規則の懲戒解雇事由への該当性、②懲戒権濫用(労働契約法15条)の有無、③解雇予告義務(労働基準法20条)の遵守、④解雇制限事由の非該当、という4点の検討が必要です(詳細は労働問題40参照)。

 普通解雇と懲戒解雇の最大の違いは、就業規則の懲戒事由への該当性が懲戒解雇の絶対的な前提となる点です。「横領した社員だから、就業規則がなくても懲戒解雇できる」は誤りです。就業規則がない場合や、就業規則に懲戒解雇事由の規定がない場合に懲戒解雇を行うことは、原則として認められません。

03懲戒解雇と退職金の取り扱い

 懲戒解雇を行う場合に、多くの会社経営者が気にする問題の一つが退職金の取り扱いです。「懲戒解雇したのだから退職金を払わなくてよいのではないか」と考える経営者も少なくありませんが、これは規定の内容次第です。

 退職金の不支給または減額を認めてもらうためには、就業規則・退職金規程に「懲戒解雇の場合は退職金を支給しない」または「退職金を〇割減額する」といった明確な規定が必要です。このような規定がない場合は、懲戒解雇であっても退職金を支払わなければならないことがあります。

 また、就業規則に不支給規定があったとしても、当該懲戒解雇が有効であることが前提です。懲戒解雇が懲戒権濫用として無効となれば、退職金の不支給・減額も問題となります。懲戒解雇を検討している場合は、就業規則・退職金規程の内容を事前に確認した上で、弁護士に相談することをお勧めします。

04懲戒解雇の有効要件の概要と実務上の注意点

 懲戒解雇の有効性判断の詳細については、次記事(労働問題40)で解説しています。ここでは、実務上の重要な注意点を整理します。

 第一に、就業規則の整備が懲戒解雇の前提です。就業規則に懲戒解雇事由が適切に規定されているかどうかを事前に確認することが不可欠です。第二に、懲戒解雇は「最終手段」です。非違行為の重大性に照らして、より軽い処分(出勤停止・降格等)で足りる場合に懲戒解雇を行うと、懲戒権濫用として無効となるリスクがあります。第三に、事実確認・本人からの弁明聴取の手続が重要です。本人から十分な弁明を聴取せずに懲戒解雇を行うことは、手続の相当性を欠くとして懲戒権濫用に問われるリスクがあります。

 弁護士対応事例でよく見られるのは次のようなパターンです。

・「横領の事実があり懲戒解雇を断行したが、就業規則の懲戒事由の規定が曖昧で、懲戒解雇事由への該当性が否定された」
・「本人から弁明を聞かずに懲戒解雇を通告したところ、手続の相当性を欠くとして懲戒権濫用と判断された」

 懲戒解雇の実施前に弁護士に相談することで、こうしたリスクを事前に防ぐことができます。

経営上のポイント 懲戒解雇は使用者の懲戒権の発動による制裁としての最も重い懲戒処分です。就業規則の懲戒事由への該当が絶対的前提であり、懲戒権濫用(労契法15条)の審査も必要です。退職金の不支給・減額には就業規則・退職金規程の明確な規定が必要です。懲戒解雇を検討している場合は、就業規則の確認・事実確認・弁明聴取等の手続を踏んだ上で弁護士に相談することをお勧めします。アドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

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弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年6月28日


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