能力不足社員の対応の総合解説

 

FOR COMPANY OWNERS

能力不足社員の対応の総合解説。
「能力不足」の正しい理解から
採用・教育指導・退職勧奨までの実務対応。

 「能力不足」とは、絶対的に能力が高いか低いかということではありません。労働契約で予定されている能力と実際の能力のギャップのことです。本ページでは、能力不足の正しい理解から、採用段階での注意点、具体的な教育指導の進め方、試用期間中の判断、人事評価・賃金の問題、そして退職勧奨・解雇に至るまでの実務対応の全体像を、会社側専門の弁護士が会社経営者向けに解説いたします。


VIDEO

本ページの基となる解説動画

 

 本ページは、藤田進太郎弁護士による「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTubeチャンネル)の各動画解説を素材として、当事務所が能力不足社員の対応の全体像を統合的に文章化したハブページです。各テーマの詳細は、それぞれの専門ページおよび元動画でご確認いただけます。

CHAPTER 01

「能力不足」とは何か

 

絶対的な能力の高低ではなく、契約とのギャップ

 雇用における「能力不足」とは、絶対的に能力が高いか低いかということではありません。労働契約で予定されている能力と、実際の能力とのギャップのことです。たとえば部長に特定の部門を任せることを予定して月給100万円で採用すれば、高い能力が要求されますから、ある程度の能力があったとしても能力不足と言われるかもしれません。しかし大学を出たばかりの若い人をほどほどの給料で採用した場合は、いきなり社会で通用するような高い能力を要求することはできません。教育しながら少しずつ育てていくことが予定されていると考えられるのが普通です。

 よく「能力不足なのに解雇できないのはおかしい」とおっしゃる方がいらっしゃいますが、そのためにはまず何が能力不足なのかを正しく理解する必要があるのです。絶対的な出来の悪さを能力不足と呼んでしまっていることが多いですが、大事なのはその労働契約で予定されている能力とは何なのかを考えることです。

新卒・未経験者採用の場合はハードルが高い

 新卒で一括採用するようなケースは、勉強はしっかりやってもらいたいけれども今仕事ができなくても構わない、ポテンシャルがあればしっかり教え込んで育てていく、という発想で採用しているわけです。中途採用でも「未経験者歓迎」と書いてあれば、最初から仕事ができないのは当然です。こうした教育が予定されているような雇い方の場合、「教育してみてもダメだった」というところまで言えなければ能力不足とは言いにくいのです。

配置転換の権限がある場合の難しさ

 日本の企業では、就業規則上、配置転換の権限が会社に認められているケースが多いです。特に中小企業では「他の人が困っていたらフォローするのが当社の常識です」という形で、担当業務はあるものの実質的には何でもやるという働き方をしていることがよくあります。こうした雇い方をしていると、「今やっている仕事の出来が悪くても、他の仕事ならできるかもしれない」という見方をされやすくなり、一体どの仕事ができないことが能力不足なのかという議論が複雑になることがあります。

 逆に、高い地位と高い給料で雇った場合は、その部門を任せられるだけの高い能力が予定されていると評価しやすいため、能力不足を言いやすい傾向にあります。

周りの社員の負担も考えなければならない

 極端に能力が低い社員がいると、一緒に仕事をしている同僚や先輩がその分の負担を引き受けなければなりません。いくら教えても覚えない、ミスも多く周りがフォローしなければならない、なかなか成長しない。不満がどんどん溜まっていき、極端にひどくなると社長のところに苦情が来るのです。「能力不足だから解雇できるかどうか」という法律論だけでなく、困っている現場の社員たちを救う手段を取ることが経営者としての責任です。

CHAPTER 02

採用段階での注意点

 

能力不足に気づいていたのに採用してしまうケースが多い

 能力が低い社員で困っている会社の相談を受けていると、案外多くのケースが、採用の時点から能力不足になんとなく気づいていたのに採用してしまっているのです。面談の時に「なんだかコミュニケーションがうまく取れない人だな」と思いながら採用してしまっていたりします。一生懸命採用選考して能力が高いと思っていたのにダメだったというのはある意味しょうがないのですが、気づいていたのに採用したケースは事情が違います。

 能力不足で悩むのは「できる人だと思ったのにダメだった」というケースだけにしましょう。能力不足だと気づいたのであれば、そこは我慢して不採用にしなければなりません。

適正な賃金水準で採用する

 「先生、この人月給30万円は高すぎないですか。どう考えても高すぎるでしょう」という相談がよくあります。しかし20万円だったらどうか、時給1,100円だったらどうか。案外それぐらいだったら納得できるというケースもあるのです。

 後から給料を下げるのはとても困難です。30万円もらえるつもりで入社したのに20万円に下げると言われたら、本人が納得するわけがありません。能力がちょっと微妙だなと思ったら、それに見合った水準で採用するか、判断がつかなかったら少し低めの水準で契約しておいて、実際のパフォーマンスが良ければ上げるという形にするのが安全です。適正な賃金水準で採用できていれば、ちょっと微妙な方であっても長く付き合えるかもしれません。

CHAPTER 03

教育指導は具体的に

 

抽象的な指示では意味が分からない

 能力が高い人であれば、ある程度抽象的な指示でも理解して色々考えて行動してくれるかもしれません。しかし能力が足りない場合は、できるだけ具体的に伝えなければ意味が分かりません。たとえば「報連相しなさい」と言ったところで何のことだか分からない人がいます。「こういう場合にはこういった連絡をするんですよ、こういったやり方でするんですよ」というところまで説明しなければならないこともあります。

 場合によっては目の前でやってみせることも必要です。言葉だけでは伝わらなくても、実際に目の前でやってみせると「なんとなく分かりました」となるケースはあります。いちいち細かく説明したりやってみせたりしなければならないのですから、教える側はくたびれるかもしれません。しかし、能力が低い人を育てようと思ったらそういった具体的な教育指導と長い時間がどうしても必要になってきます。周りの方が消耗してクタクタにならないよう、経営者として配慮することも大切です。

CHAPTER 04

やめてもらうなら試用期間満了までが勝負

 

試用期間中の方がやめてもらいやすいのは間違いない

 どうしてもやめてもらいたい場合、試用期間中に判断してやめてもらう話をつけることが最も重要です。試用期間中の退職や試用期間満了での退職であれば、「試しに雇ってもらっているのだから、やめるのもそれなりの理由があったらしょうがない」と納得してもらいやすいのです。ところが試用期間を過ぎて本採用になると、「もう大丈夫だ、よっぽど変なことをしない限りクビにはならない」と思うのが通常ですから、話のつけ方が格段に難しくなります。

3ヶ月で判断がつかないなら6ヶ月に

 試用期間で最も多いのは3ヶ月、次に6ヶ月です。ある業種では3ヶ月で十分判断できますが、別の業種では3ヶ月では判断がつかないということがあります。「なんとなく怪しいなとは思っていたが、やめてもらおうと判断できたのは4ヶ月5ヶ月経ってからだった」という話を聞くことがあります。そういった会社であれば原則的な試用期間の定めを6ヶ月に延ばすことをおすすめします。自分の会社ではどれぐらいあれば判断できるのかを考えて、適切な長さに設定してください。

試用期間中でも証拠は必要

 法律的には試用期間中は解雇しやすいと言われますし、実際その通りです。しかしそれは合格点が80点だったのが60点で合格できるようになる、というイメージです。客観的に合理的な理由が必要だということには変わりがなく、証拠に基づいて立証しなければならないのです。「みんながダメだと思っている」「私の長年の経験からしてこの人はダメだ」というレベルでは足りません。何月何日にこんなことがあった、何月何日にこんなミスをした、といった具体的な事実を記録しておくことが不可欠です。

CHAPTER 05

各テーマの詳細ページ一覧

 

 能力不足社員への対応について、テーマごとに詳しく解説したページを用意しています。

能力が極端に低いことを立証する方法「評価」ではなく「事実」で示す。試用期間中の記録の取り方。 能力が極端に低い社員に対する教育指導の仕方具体的に教え、やってみせ、フィードバックする。適材適所の配置。
能力不足と気づいていても採用してしまうことの問題点人手不足や社会貢献意識で無理に採用することのリスク。 能力が極端に低い社員の人事評価・賃金の問題「ありのまま」に評価する。高い給料はやめてもらいにくくする。
能力が給与額に見合わない社員の対処法賃金減額の要件と同意取得の注意点。 管理能力がない管理職の降格懲戒処分と人事異動の違い。給与減額の根拠の定め方。
能力不足を理由とする解雇教育指導の進め方と解雇判断。 能力不足社員の配置転換適材適所の配置と配置転換命令の進め方。
問題社員への退職勧奨退職勧奨の進め方と紛争になりやすいケース。 能力不足社員への損害賠償請求損害賠償請求の可否と実務上の注意点。

CHAPTER 06

当事務所のサポート体制と監修者

 

 弁護士法人四谷麹町法律事務所は、会社側(使用者側)専門の法律事務所として、能力不足社員への対応を日常的に取り扱っています。採用段階の賃金設計、試用期間中の判断、教育指導の具体的な進め方、能力不足の事実の整理、人事評価制度の運用、配置転換の検討、退職勧奨や解雇の判断まで、問題社員対応に慣れた弁護士がZoomやTeamsで短時間の打ち合わせを繰り返しながら伴走します。

 能力が低い人を育てようと思ったら、具体的な教育指導と長い時間が必要です。大変な作業かもしれませんが、その中で成長してもらえればそれが一番ですし、どうしても改善しない場合でも、しっかり教育指導を積み重ねた経緯があれば退職勧奨や解雇の判断も格段にやりやすくなります。困っている現場の社員たちを守るためにも、しっかり対応していきましょう。

弁護士 藤田 進太郎

監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

能力不足社員への対応でお悩みの会社経営者の皆様へ

まずは経営労働相談までご連絡ください。事務所会議室でのご相談、Zoom・Teamsでのオンライン相談、いずれも対応しています。

経営労働相談のお問い合わせ

FAQ

よくあるご質問

 

Q. 能力が低い社員をすぐに解雇できますか。

 能力不足を理由とする解雇は、注意指導や教育指導を積み重ねた上で、それでも改善しなかったという経緯がなければ有効になりにくいです。また、労働契約で予定されている能力水準によってハードルが変わります。新卒や未経験者を採用した場合は教育が予定されていますので、教育してもダメだったと言えるまでの積み上げが必要です。

Q. 試用期間中であれば自由に解雇できますか。

 自由にはできません。試用期間中でも客観的に合理的な理由が必要です。ただし、本採用後と比べてハードルはやや下がります。試用期間中にしっかり記録を取り、具体的な事実に基づいて判断することが大切です。話し合いでやめてもらう方が穏やかに解決できることも多いです。

Q. 高い給料で採用してしまいました。後から下げられますか。

 後から給料を下げるのは非常に困難です。労働条件の不利益変更に当たりますし、本人も納得しません。能力がちょっと微妙だなと思ったら、最初から適正な水準で採用するか、低めに設定してパフォーマンスに応じて上げる形にするのが安全です。

Q. 周りの社員から「あの人をなんとかしてくれ」と言われています。

 周りの社員の負担が重くなっている状況は深刻です。経営者として、困っている現場の社員たちを守る手段を取らなければなりません。具体的な教育指導の積み上げ、配置転換の検討、それでも改善しない場合は退職勧奨や解雇の判断に進みます。弁護士に相談しながら進めてください。

Q. 遠方の会社ですが、相談できますか。

 対応しております。事務所会議室での対面相談のほか、ZoomやTeamsによるオンライン相談を実施しており、日本全国各地の会社経営者からのご相談を承っています。

RELATED

関連ハブページ

 
問題社員(モンスター社員)対応の総合解説注意指導から懲戒処分・解雇までの実務対応の全体像 会社側労働問題に強い弁護士をお探しの方へ当事務所の取扱業務と対応の考え方