この記事の要点

仕事中のゲームは職場規律違反として懲戒処分の対象になる

就業時間中に業務と無関係な行為(ゲーム・SNS・ネットサーフィン等)を繰り返すことは、職務専念義務違反として懲戒処分が認められやすいです。就業規則に「ゲーム禁止」の明文がなくても、職務専念義務・業務命令違反の条項を根拠にできます

一発解雇は難しい。注意指導・懲戒処分の積み重ねが必要

いきなり解雇することは解雇権の濫用として無効になるリスクが高いです。口頭注意→厳重注意書→懲戒処分(戒告・減給)という段階を踏むことで、解雇の有効性が認められやすくなります

証拠の確保と注意指導の記録が対応の成否を分ける

「いつ・どこで・何をどれくらいの時間やっていたか」という具体的な事実の記録が、後の懲戒処分・解雇を有効にする土台になります。「やっていない」と否定された場合に対処できるよう、可能な限り証拠を確保してください

就業規則の整備と弁護士への早期相談が重要

就業規則に職務専念義務・懲戒事由が明記されているかどうかが処分の有効性に直結します。就業規則の整備が不十分な場合は、処分を行う前に弁護士に相談してください

 就業時間中に社員がスマートフォンのゲームアプリをプレイしている、会社のパソコンでオンラインゲームをしているといった問題は、実際に多くの会社で起きています。注意しても改善されないケースでは、懲戒処分や解雇を検討せざるを得ない場面が生じます。

 この問題を放置すると、その社員本人の業務への影響だけでなく、「あの人はゲームをしても怒られない」という職場環境の緩みが生じ、他の社員のモチベーション低下にもつながります。適切なタイミングで毅然とした対応を取ることが、会社秩序を守ることにつながります。

 この記事では、仕事中のゲームへの対応として懲戒処分・解雇が認められる条件と、実務上の対応手順を会社側専門弁護士の立場から解説します。

01仕事中のゲームは懲戒処分の対象になるか

 結論から言えば、仕事中にゲームをすることは職務専念義務違反として懲戒処分の対象になります。

 特に問題になりやすいのは以下のような状況です。

状況 問題の程度
業務時間中にスマートフォンのゲームアプリを繰り返しプレイしている 職務専念義務違反。繰り返しの状況に応じて懲戒処分の対象
会社のパソコンでオンラインゲームをしている 職務専念義務違反に加え、会社設備の私的利用という問題も生じる
業務に支障が出ているにもかかわらず継続している 業務への具体的な影響があることで、処分の正当性が高まる
注意指導を受けた後も繰り返している 指示に従わないという業務命令違反の側面も加わり、処分が重くなりうる

 ただし、1度の行為でいきなり重い懲戒処分・解雇をすることは難しく、注意指導・懲戒処分の積み重ねが基本になります。

02職務専念義務とは何か——法的根拠を理解する

 仕事中のゲームが懲戒処分の対象になる法的根拠は、職務専念義務にあります。

 労働契約は「給料をもらう代わりに仕事をする契約」です。就業時間中は業務に専念する義務(職務専念義務)を負っており、この義務は労働契約の本質的な内容として当然に含まれています。就業規則に「職務専念義務」が明記されていない場合でも、労働契約の性質上当然に認められます。

 仕事中にゲームをすることは、給料をもらいながら仕事をしないという行為であり、この職務専念義務に明らかに反します。また会社の指示・命令に従わずゲームを続ける場合は、業務命令違反という側面も持ちます。

 就業規則に「仕事中のゲームを禁止する」という明文の規定がなくても、「職務専念義務」「会社の命令に従うこと」「会社の信用を棄損する行為の禁止」「会社の設備を私的に使用することの禁止」などの条項を根拠として懲戒処分を行うことができます。

03証拠の確保方法

 「仕事中にゲームをしていた」という事実を証明するための証拠確保が、対応の成否を大きく左右します。「やっていない」と否定された場合に対処できるよう、できる限り具体的な記録を残してください。

目撃事実の記録(最も基本的な証拠)

 目撃した事実をすぐにメモに残してください。記録すべき内容は、日時・場所・誰が目撃したか・何のゲームをどれくらいの時間やっていたか・その時の業務状況(他の業務はどうなっていたか)です。記録後は上司へのメールで報告・保存することで、記録の信頼性が上がります。

写真・スクリーンショット

 可能であれば写真やスクリーンショットを記録として残してください。ただし証拠収集のための撮影が本人のプライバシーや尊厳を傷つける方法であってはなりません。オフィス内での業務状況の記録として自然な形で残すことが重要です。

他の社員からの確認

 目撃した他の社員からも状況確認を行い、記録に残してください。複数の目撃者がいることで証明力が上がります。ただし、特定の社員を追い詰めるような問い合わせ方は避けてください。

パソコンの利用ログ・アクセス記録

 会社のパソコンでゲームをしている場合は、IT管理部門にパソコンの利用ログ・アクセス記録の確認を依頼してください。アクセスしたサイト・アプリ・時間帯が記録されており、客観的な証拠として機能します。

04注意指導・懲戒処分の段階的な進め方

 証拠を確保した後は、以下の段階を踏んで対応を進めてください。一気に重い処分をしようとすると、処分の有効性が否定されるリスクがあります。

段階 対応 ポイント
STEP 1 口頭での事実確認と注意指導 会議室に呼んで「〇月〇日〇時頃、〇〇の場所でゲームをしていましたね」と具体的な事実を確認し、改善を求める。面談内容を記録し、可能であれば録音する
STEP 2 厳重注意書の書面交付 改善しない場合、就業規則の職務専念義務条項を明示した上で、具体的な事実を記載した厳重注意書を書面で交付する。書面があることで「注意を受けた事実」が明確になる
STEP 3 懲戒処分の通知 さらに繰り返す場合、戒告・減給など就業規則に定める懲戒処分を書面で行う。懲戒処分の手続き(弁明の機会の付与等)が就業規則に定められている場合はその手続きを必ず経ること
STEP 4 退職勧奨または解雇の検討 懲戒処分を重ねても改善しない場合に、退職勧奨または解雇を検討する。この段階での判断は必ず弁護士に相談してから進めること

 注意指導を口頭だけで行い記録を残さないでいると、後から「そんな注意は受けていない」と言われた場合に反論できません。書面での交付と記録の保存が、その後の対応の土台になります。

05解雇が認められる条件

 仕事中のゲームを理由とした解雇が有効と認められるためには、一般的に以下の条件が揃っていることが必要です。

解雇が有効と認められるための条件
① 繰り返し・常習的であること(単発の行為では解雇は困難)
② 注意指導・懲戒処分を重ねたにもかかわらず改善しなかったこと
③ 業務への具体的な支障が生じていたこと
④ 就業規則に懲戒事由として職務専念義務違反等の定めがあること

 「仕事中に何度もゲームをしているのを見た」というだけでいきなり解雇することは、解雇権の濫用として無効になるリスクが非常に高いです。上記の手順を踏んだ上で、「注意指導・懲戒処分を重ねたにもかかわらず全く改善しなかった」という状態を作ることが、解雇の有効性を支える最も重要な要素です。

 解雇を検討する段階に至った場合は、必ず弁護士に相談してから手続きを進めてください。解雇の有効性は個別の事情によって判断が分かれることが多く、専門的な見地からの確認が不可欠です。

06就業規則の整備——処分の前に確認すべきこと

 懲戒処分を行う前に、まず就業規則を確認してください。就業規則の整備状況が、処分の有効性に大きく影響します。

 確認すべき点は次の通りです。職務専念義務に関する規定があるか。懲戒事由として「会社の命令に従わないこと」「会社の秩序を乱す行為」「会社設備の私的利用」などが定められているか。懲戒処分の種類(戒告・減給・降格・懲戒解雇等)と手続き(弁明の機会の付与等)が定められているか。

 就業規則にこれらの定めがない・不十分な場合は、処分を行う前に弁護士に相談して就業規則の確認・整備を行ってください。不十分な就業規則のまま処分を行うと、後から処分の有効性を争われた際に不利になります。

懲戒処分を行う前に必ず確認すること

・就業規則に懲戒事由の定めがあるか
・懲戒処分の手続き(弁明の機会の付与等)が定められているか
・定められた手続きを正しく踏んでいるか
・処分の重さが「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」を満たしているか
・不明点があれば処分を行う前に弁護士に確認すること

SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員への懲戒処分・解雇対応でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 就業規則に「仕事中のゲーム禁止」の明文がなくても処分できますか。

A. 明文がなくても、職務専念義務違反・業務命令違反・会社の信用棄損などの条項に該当するとして懲戒処分が認められることがあります。ただし就業規則の整備が不十分な場合は処分の有効性に影響するため、処分を行う前に弁護士に相談して就業規則の確認・整備を行うことをお勧めします。

Q2. 休憩時間中にスマートフォンでゲームをすることも禁止できますか。

A. 休憩時間は労働者が自由に過ごせる時間ですので、休憩時間中のゲームを禁止することは原則として難しいです。ただし会社のパソコンや設備を使用する場合、または休憩時間と就業時間の区別なく繰り返している場合などは別途検討が必要です。詳細は弁護士にご相談ください。

Q3. 仕事中のゲームを1度目撃しただけで解雇できますか。

A. 原則としてできません。1度の行為でいきなり解雇することは解雇権の濫用として無効になるリスクが高いです。まず口頭での注意指導を行い、改善しなければ厳重注意書の交付、さらに戒告・減給などの懲戒処分と段階的に対応を積み重ねた上で解雇を検討してください。

Q4. 会社のパソコンでゲームをしている社員への対応で特に注意すべき点はありますか。

A. IT管理部門にパソコンの利用ログ・アクセス記録の確認を依頼することで、客観的な証拠を確保できます。また会社のパソコンで業務外のゲームをすることは、職務専念義務違反に加えて会社設備の私的利用という問題も生じます。就業規則に「会社設備の私的利用禁止」の条項があれば、それも根拠として加えることができます。証拠確保後、弁護士に相談の上で対応を進めてください。

最終更新日:2026年5月10日


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