信頼して仕事を任せたのに成果が上がらない。
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成果が出ない責任は、社員個人ではなく、選任・配置・権限付与を行った経営側に帰属する 誰に、どの仕事を、どの条件で任せるかを決めているのは会社経営者です。「社員のせいだ」という発想では、同じ失敗を繰り返し、労務トラブルの火種にもなります。 |
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「信頼」と「成果」を切り分け、能力に応じた任せ方と環境整備を設計することが出発点 「本人ができると言ったから任せた」という判断は経営判断として不十分です。成果を求めるのか育成を優先するのかを明確にし、能力の現実を基準に判断してください。 |
目次
仕事を任せた社員が成果を出せるかどうかの責任は、最終的に、その社員を選任・配置し、権限を与えた会社経営者に帰属します。「信頼して仕事を任せたのに、まったく成果が上がらない」というご相談は少なくありませんが、この悩みの本質は社員個人の問題ではなく、経営判断の問題です。
この点を切り分けないまま「社員に裏切られた」という発想にとどまると、問題の本質を見誤り、社員への不満だけが募って、後に労務トラブルへ発展するリスクも高まります。本記事では、会社経営者がこの問題をどのように整理し、判断すべきかを解説します。
01成果が出ない責任は誰にあるのか
成果を出す責任は、基本的に任された社員ではなく、仕事を任せた側にあります。部署単位で見れば管理職の責任であり、最終的には、その管理職を選び、配置し、権限を与えている会社経営者の責任です。
なぜなら、どの社員に、どの仕事を、どの範囲の権限で任せるのかを決めているのは会社経営者だからです。必要な人員が足りているか、指示や説明は十分か、裁量の範囲は明確か、予算や時間などの環境は整っているか。これらの整備もすべて経営の責任に含まれます。
「成果が出ないのは社員のせいだ」という発想に立つと、配置や任せ方の見直しという本来検討すべき点が置き去りにされ、同じ失敗を別の社員に対して繰り返すことになります。さらに、業務設計の問題を検討しないまま評価を下げたり責任を押し付けたりすれば、紛争の火種にもなりかねません。「自分の判断や任せ方に問題がなかったか」という視点が、会社経営者としての出発点です。
02「信頼」と「成果」は別問題である
「信頼して任せること」と「成果が出ること」は、まったく別の問題です。信頼とは人として任せる姿勢の問題であり、成果が出るかどうかは、社員の能力・経験・仕事の難易度・与えられた権限やリソースなど、複数の要素が噛み合って初めて実現するものです。信頼したからといって、成果が自動的に生まれるわけではありません。
この二つを混同したまま任せてしまうと、成果が出なかった場合に「信頼を裏切られた」という感情論に引きずられやすくなります。経営判断として重要なのは、感情ではなく、「その社員に、その仕事を、その条件で任せる合理性があったのか」という点です。
また、成果を求めて任せたのか、育成を目的として任せたのかの整理も重要です。成果を最優先するなら、確実に成果を出せる人材と環境を揃える必要があります。育成目的であれば、一定の失敗や時間的ロスは想定内であり、それでも「なぜ成果が出ないのか」と不満を持つのは判断軸がぶれています。何を優先するのかを明確にしてから任せることが、成果が出ない事態と無用な軋轢を防ぎます。
03「やります」「できます」を鵜呑みにしてはいけない
社員の「やります」「できます」という言葉は、能力の裏付けを伴っているとは限りません。上司や会社経営者から声をかけられた以上、深く考えずに前向きな返事をする社員は多く、実際に着手して初めて「想定以上に難しかった」という事態に陥ることは珍しくありません。
社員の能力には想像以上に大きな個人差があります。具体的な手順を細かく指示すれば対応できる社員、進め方を丁寧に説明すれば一定の成果を出せる社員に対し、自ら考え、判断し、修正しながら進められる社員は、実際にはそれほど多くありません。「信頼して任せた」場面の多くは、無意識のうちに後者を前提にしており、成果が出ないケースの多くは、そもそもそのレベルに達していなかったという事実を後から認識することになります。
会社経営者に求められるのは、言葉の裏にある具体的な根拠を冷静に確認する姿勢です。過去に類似業務の経験があるか、どのような手順で進める想定か、どこまで一人で判断できるか。期待ではなく、現実の能力を基準に判断してください。
よくある誤解
✕ 「本人ができると言ったのだから、失敗は本人の責任だ」→ 主観的な返事のみを根拠とした委任は、経営判断として不十分です。経験やスキルの裏付けを確認せずに任せた帰結は、選任・監督の問題として会社側が負うことになります。
✕ 「細かく指示すると指示待ち人間になるから、あえて口を出さない」→ 能力に見合わない裁量を与えることは「信頼」ではなく「放置」であり、ミスや労務トラブルを誘発します。
04「指示待ち人間を恐れる」発想の落とし穴
指示の要否は、理念ではなく、社員の習熟度と業務の性質によって決めるべきものです。「細かく指示を出すと指示待ち人間になる」という懸念から、本来指示や確認が必要な場面であえて踏み込まない判断をされる会社経営者は少なくありませんが、指示を控えること自体が目的化すると、経営判断として本末転倒になります。
社員にとって、能力や経験を超えた仕事を突然任されることは、「信頼」ではなく「丸投げ」と受け取られることもあります。何から手を付けてよいか分からないまま判断を誤り、成果が出ないだけでなく、本人の自信喪失や職場全体の生産性低下につながるおそれもあります。
会社経営者や管理する立場の役割は、会社や部署の仕事が確実に回り、成果が出る状態を作ることです。指示を出すこと自体が悪なのではなく、不適切な人に不適切な任せ方をすることが問題です。指示を出して成果が出るのであれば、それは「指示待ち人間を育てている」のではなく、「成果が出るように設計している」に過ぎません。任せない判断もまた、経営判断の一つです。
05能力不足が判明した場合の実務対応
任せた後で「自分で考えて仕事を進められるレベルに達していない」と判明した場合、次の3ステップで対応を見直します。
①関与の度合いを見直す
業務内容を細分化して具体的な指示を出す、仕事の進め方や判断基準を丁寧に説明し理解を確認しながら進める、といった形で、社員の能力に応じた関与に切り替えます。
②環境面を整備する
個人の努力ではカバーできない業務量や難易度であれば、人員の追加・役割分担の見直し・予算の確保など、環境面の調整を行います。これらは会社経営者が判断すべき事項です。
③担当変更・配置の再検討
十分な指示・支援・環境整備を行っても成果が出ない場合、その社員に任せ続けること自体が適切かを再検討します。指導や支援の経過を記録に残しておくことが、後の人事上の判断や労務トラブル予防の基礎になります。
「任せた以上は本人の責任」という発想ではなく、「誰に、どの仕事を任せるのが会社にとって最善か」という視点で冷静に判断することが求められます。なお、能力不足を理由とした処遇の変更や退職勧奨・解雇を検討する段階では、法的リスクの評価が不可欠ですので、会社側専門の弁護士にご相談ください。
06よくある質問(FAQ)
Q. 「信頼して任せた」のに成果が出ない場合、責任はどこにありますか。
業務の成果に対する責任は、最終的にその人員を選任・配置し、権限を与えた経営側に帰属します。社員個人の能力不足を責める前に、人選・指示の具体性・権限やリソースの付与といった職務設計に欠陥がなかったかを検証する必要があります。
Q. 指示を細かく出すと「指示待ち人間」を育ててしまいませんか。
指示の要否は社員の習熟度によって決めるべきです。能力に見合わない裁量を与えることは「信頼」ではなく「放置」であり、業務上のミスや労務トラブルを誘発します。指示を出して成果が出るなら、それは成果が出るように設計しているに過ぎず、適切な関与は経営者の責務です。
Q. 本人が「できます」と言ったのに失敗した場合、本人の責任にできますか。
本人の主観的な回答のみを根拠とした委任は、経営判断として不十分です。過去の経験や具体的スキルの裏付けを確認せずに任せた場合、その帰結は選任・監督の問題として会社側が負うことになります。任せる前に、経験・想定手順・判断できる範囲を確認してください。
Q. 十分に支援しても成果が出ない社員には、どう対応すればよいですか。
指導・支援・環境整備の経過を記録に残したうえで、担当変更や配置の見直しを検討します。感情的な評価の引き下げや責任の押し付けは紛争の火種になります。処遇変更・退職勧奨・解雇を視野に入れる段階では、必ず会社側専門の弁護士に事前にご相談ください。
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。能力不足の社員への対応・任せ方の見直し・処遇変更の進め方でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
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最終更新日:2026年7月6日