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この記事の要点

「パワハラだ」と言われても必要な指導をやめてはいけない——注意指導は本人のためだけでなく、周りの社員を守るためのもの

何でもパワハラと言う社員の主張に委縮すると、大切な社員たちへの嫌がらせを止められなくなる。注意指導は会社経営上不可欠な行為

パワハラかどうかは客観的に決まる——厚生労働省のパワハラ指針を確認する

相手の主観や社長の主観ではなく、普通の大多数の労働者がどう感じるかで決まる。「相手がパワハラだと思ったらパワハラ」という広まっている誤解を信じないこと

パワハラかどうかの個別判断は難しい——微妙なケースは弁護士に相談する

パワハラ指針や厚労省パンフレットの基準は抽象的で個別事案への当てはめが難しい。裁判官でさえ見解が分かれる微妙な事案は、弁護士に相談してこまめに対応方針を確認することが最善

1. 「パワハラだ」と言われても注意指導をやめてはいけない理由

会社経営者の皆様、こんにちは。弁護士法人四谷麹町法律事務所の代表弁護士、藤田進太郎です。

注意するたびに「パワハラですよ」と言い返す社員、皆様の会社にいますか。そんなに多くはいないかもしれませんが、こうした社員が存在する場合の対処法についてお話しします。

まず最初に押さえていただきたい点があります。「パワハラだ」と言われても、必要な注意指導をやめてはいけません。

注意指導は何のためにするのでしょうか。本人の成長のためだけではありません。問題のある社員の周りで働いてくれている社員・パート・アルバイトの方々が嫌な思いをしないようにするためでもあります。会社を円滑に運営するためにも必要です。大した理由なくパワハラと言う社員の主張を認めて指導をやめてしまうと、周りの大切な社員を守れなくなります。

2. パワハラかどうかの正しい判断基準の確認

パワハラかどうかは客観的に決まります。普通の大多数の労働者がどう感じるかで決まるものです。「相手がパワハラだと思ったらパワハラ」という考え方は誤りです(詳しくは関連ページをご参照ください)。

厚生労働省のパワハラ指針には、パワハラの定義として次の3要素すべてを満たすことが必要とされています。

パワハラ指針の定義(職場におけるパワーハラスメント)

  1. 職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
  3. 労働者の就業環境が害されるもの

そして「客観的に見て業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しない」とも明示されています。

3. 「パワハラだ」と言われた時の対応——委縮しない

こちらが客観的に適正な注意指導を行っているにもかかわらず「パワハラだ」と言い返す社員には、委縮せずに適切な注意指導を続けることが基本です。

「パワハラだ」と言われた時の対応

  • 「パワハラかどうかは客観的な基準で決まります。相手がそう思ったかどうかで決まるものではありません」と冷静に伝える
  • 注意指導の内容が具体的事実に基づいた業務上の適正な指導であることを確認した上で、指導を続ける
  • 面談の内容・やりとりを記録として残しておく
  • 気になる点は弁護士に相談してから対応する

こちらに問題がある場合は改めることが必要ですが、適正な指導を行っているなら委縮する必要はありません。

4. パワハラかどうかの個別判断が難しい理由

「ではパワハラかどうかは具体的にどう判断すればよいのか」という疑問が当然出てきます。ここで一つ認識していただきたいのは、個別事案のパワハラ該当性の判断は非常に難しいという点です。

パワハラ指針や厚生労働省のパンフレットに書かれている定義・具体例は、そもそも非常に抽象的です。例えば「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」と書いてあっても、ある特定の行為が「必要かつ相当な範囲を超えているかどうか」は、事実関係を細かく当てはめないと判断できません。

裁判例を見ても、同じような事案で地裁と高裁の判断が全く異なることがあります。裁判官でさえ見解が分かれるような微妙な事案が多数あります。一般の経営者の方が個別事案をパワハラ指針と照らし合わせて正確に判断するのは、容易ではありません。

5. 微妙な事案の対処法——弁護士にこまめに相談する

「何でもパワハラだ」と言う社員への対応で特に重要なのは、弁護士にこまめに相談しながら対応方針を確認することです。

明らかにパワハラでないものや、明らかにパワハラのものについては判断がしやすいです。しかし現実には、どちらとも言いにくい「グレーゾーン」の事案が少なくありません。そのような事案を一人で抱えて判断しようとすると、判断ミスにつながることがあります。

ZoomやTeamsを使ってこまめに弁護士と打ち合わせを重ね、「今月この社員にこういう言い方で指導しようと思うが問題ないか」という確認を個別具体的に行っていくことが、最もリスクが低い方法です。「こういう場合一般的にはどうすればよいか」という一般論の相談よりも、「このケースではどう対応すればよいか」という個別相談を重ねることで、判断の精度が上がります。

6. まとめ

  1. 「パワハラだ」と言われても必要な注意指導をやめてはいけない——周りの社員を守るためにも指導は不可欠
  2. パワハラかどうかは客観的基準(平均的な労働者の感じ方)で決まる——相手の主観で決まるものではない
  3. 適正な指導には堂々と続ける——委縮せず、面談内容の記録を残す
  4. 個別事案のパワハラ判断は難しい——裁判官でも見解が分かれる事案が多い
  5. 微妙な事案はこまめに弁護士に相談する——個別具体的な確認を重ねることでリスクを最小化する

「パワハラだ」という主張への対応でお悩みの経営者の皆様は、ぜひ弁護士にご相談ください。

弁護士 藤田 進太郎

監修者弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 「パワハラだ」と言われて、社員から内容証明が届きました。どうすればよいですか。

A. 内容証明が届いた場合は、すぐに弁護士に相談してください。内容証明の内容・行った注意指導の具体的な内容・経緯等を弁護士に伝え、法的な対応方針を検討することが必要です。自分で返答しようとする前に、必ず弁護士に相談してください。

Q2. 注意指導をすると毎回録音されているようです。対策はありますか。

A. 録音を防ぐことは法的に難しいです。むしろ録音されることを前提に、発言内容が常に適正なものになるよう意識することが重要です。具体的事実に基づいた礼儀正しい指導を行っていれば、録音されても問題になりません。逆に感情的な言動があれば録音が証拠として使われることになります。録音への対策よりも、録音されても問題ない適正な指導を習慣化することが最善策です。

最終更新日:2026年4月30日


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