メンタルが極端に弱い。
動画解説
目次
1. まず「事実の確認」から始める——評価を事実に落とし込む作業の重要性
「あの社員はメンタルが極端に弱い」という評価が職場の共通認識になっていても、それだけで話を進めてはいけません。最初にすべきことは具体的な事実の確認です。
「メンタルが弱い」という言葉は評価であって事実ではありません。いつ・どこで・誰が・どんな言動をしたのか、それに対してその社員がどのような反応を示したのか——こうした具体的なエピソードを一つひとつ書き出すことが最初の作業です。
なぜこの確認が重要かというと、評価が先行してしまうと思わぬ落とし穴にはまることがあるからです。「みんながそう言っているから」という前提で進めると、具体的な事実がないまま対応が進んでしまい、後から法的な問題が生じるリスクがあります。また、しっかり事実を書き出すことで、本当にメンタルが弱いのか、それとも上司や先輩の指導方法に問題があるだけなのかが見えてきます。上司の言動に問題があるのであれば、そちらを直すことで解決できます。
本当にメンタルが極端に弱い方であれば、具体的なエピソードは必ず存在します。「先週こういうことがあった」「先月こんな反応があった」と言えるはずですので、そういったエピソードをしっかり集めることから始めてください。
2. 99%の労働者に問題のないやり方でも参ってしまう原因——ほとんどは適性の問題
事実を確認した結果、会社の上司・先輩には問題がなく、通常の業務指示や注意指導を行っているだけなのにその社員だけが参ってしまう、あるいはパワハラだと騒ぎ始めるという状況だとすれば、対応の難易度は一気に上がります。
このような場合の原因のほとんどは、「その仕事への適性のなさ」です。わざと会社に嫌がらせをしようとしているケースは極めてまれです。心構えの問題だけであることも多くありません。ほとんどの場合、本人も本気で苦しんでいるのです。
人には向き不向きがあります。100人中99人が問題なくこなせる仕事であっても、その仕事に向いていない人にとっては本当に辛い経験になります。一生懸命頑張っても成果が出ず、周囲の目も次第に冷たくなり、それがさらにストレスになる——この悪循環の中で体調を崩すことは、決して珍しいことではありません。
このような方に対して説教や指導を重ねても、問題の本質が適性の不一致にある以上、改善は見込めません。仕事の難易度を下げるような甘やかし的な対応も、本来雇用した目的の仕事ができない状態を続けさせることになり、本質的な解決にはなりません。
3. 安全配慮義務の観点から担当業務の変更か退職を検討する
「メンタルが極端に弱い」と認識してしまった時点で、その社員にその仕事を続けさせることは安全配慮義務の観点からも問題が生じます。100人中99人には問題のない仕事であっても、その社員にとっては体調を崩すリスクがあることを認識した以上、対策を取らなければなりません。
解決策は基本的に2つです。第一は担当業務の変更です。社内に別の仕事があり、その方が向いている可能性があるのであれば、配置転換を検討してください。ただし単に負担を減らすだけでは根本解決にはなりません。本当に向いている仕事に就けることが重要です。
第二は、社内に適した仕事がない場合の退職の勧めです。「退職させること」に罪悪感を覚える経営者もいますが、向いていない仕事で体調を崩させ続ける方が問題です。本当に向いていない仕事を続けた結果、深刻な精神的ダメージを一生引きずるような状態にさせてしまう方がよほど配慮に欠けます。別の会社で自分に向いている仕事を見つけて活躍してもらうことが、その方のためにもなるのです。
▶ 退職勧奨を行う場合の基本姿勢
向いていない仕事で本人が体調を崩すほど苦しんでいる場合、退職勧奨は「会社を守るため」だけでなく「本人のため」でもあります。その視点から丁寧に理由を説明し、本人が納得できる形での合意退職を目指してください。退職代行を使ってきた場合も含め、向いていない方の退職は気持ちよく送り出す心構えで臨むことが大切です。
4. 体調を崩して休み始めた場合の対応——傷病休職と退職
上記のような対応をとる前に、すでに体調を崩して欠勤が始まっているケースも多いでしょう。その場合は、一定期間の欠勤継続後、傷病休職制度がある会社であれば休職をスタートさせ、休職期間中に回復しなければ退職という対応になります。
本人が強く復職を希望し、実際に働ける状態になったと言うのであれば、職場に戻して改めて様子を見ることも選択肢の一つです。しかし向いていないと感じた本人自身が自ら退職を希望する場合も少なくありません。そのような場合に無理に引き止めることは禁物です。向いていない仕事を続けさせることで体調を本当に壊してしまいます。
近年は退職妨害が社会的に問題視されています。向いていない仕事に苦しんでいる方を無理に引き止めることは、会社の評判を著しく損ないますし、何より本人に対して酷です。退職代行を使ってきた場合も含め、こうした方の退職は気持ちよく送り出す姿勢が求められます。
5. 人手不足への対応——採用ハードルを下げるのではなく仕事のやり方を変える
メンタルが弱い社員が増えてどんどん辞めてしまい、必要な人手が確保できないという状況の会社もあるでしょう。そのような場合の解決策は「採用基準(ハードル)を下げること」ではありません。採用基準を下げても、入ってきた後に仕事に耐えられずまた辞めてしまうだけです。
本当に必要なのは、メンタルがそれほど強くない人でも担当できるような仕事のやり方を探求し、変えていくことです。これは簡単なことではありません。今まで積み上げてきたやり方を大幅に変えることになるかもしれません。しかし、現状の採用市場でその仕事に耐えられる人材を十分に確保できなくなっているのであれば、仕事の仕方自体を変えることは避けて通れない経営課題です。
業種・業態によって具体的な方法は異なりますが、共通して言えることは「今の人材市場でしっかり採用でき、定着してもらえるような仕事のやり方」を会社として追求していく必要があるということです。
6. まとめ
① 「メンタルが弱い」という評価を具体的な事実に落とし込む作業から始める
いつ・どこで・誰が・何をしたことへのどんな反応があったかを書き出す。上司の指導方法に問題がないかも確認する。
② 会社側に問題がないのに参ってしまう場合の原因はほとんどが適性の問題——本人は本気で苦しんでいる
説教や指導では改善しない。仕事内容の変更(配置転換)か、社内に適した仕事がなければ退職を勧めることが根本解決になる。
③ 人手不足の解決策は採用基準を下げることではなく、仕事のやり方自体を変えること
メンタルがそれほど強くない人でも担当できる仕事のやり方を探求・構築することが、今の採用市場で生き残るための経営課題になる。
よくある質問(FAQ)
メンタルが極端に弱い社員への対応でお困りの方はご相談ください
適性判断・担当業務変更の進め方・退職勧奨の手順まで、会社側の立場に特化した弁護士が具体的にアドバイスします。
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
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最終更新日 2026/04/16