退職後の従業員による引き抜き行為が違法と評価されるのはどのようなケースですか。
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退職後の引き抜きは、原則として違法性を有しない 従業員が勤務先の会社を退職した後に当該会社の従業員に対して引き抜き行為を行うことは原則として違法性を有しませんが、社会的相当性を著しく欠く方法・態様で行われた場合には、違法な行為として不法行為責任を負います(フレックスジャパン対アドバンテック事件、大阪地裁平成14年9月11日判決)。 |
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計画的・背信的な大量移籍は違法と評価されやすい 移籍を内密に計画・準備し、慰安旅行を装って連れ出す等の手段で大量に競業他社へ移籍させた事案は、計画的かつ極めて背信的として違法と評価されています(ラクソン事件、東京地裁平成3年2月25日判決)。 |
目次
813の記事で解説した在職中の引き抜きとは異なり、退職後の引き抜きは、労働者の職業選択の自由により強く保護されます。もっとも、その方法・態様によっては、なお違法と評価される場合があります。
会社側専門の弁護士の立場から、退職後の引き抜き行為が違法と評価されるケースを解説します。
01退職後の引き抜きの基本原則
退職後の従業員による引き抜き行為の法的責任について、フレックスジャパン対アドバンテック事件(大阪地裁平成14年9月11日判決)は、「従業員が勤務先の会社を退職した後に当該会社の従業員に対して引き抜き行為を行うことは原則として違法性を有しないが、その引き抜き行為が社会的相当性を著しく欠くような方法・態様で行われた場合には、違法な行為と評価されるのであって、引き抜き行為を行った元従業員は、当該会社に対して不法行為責任を負うと解すべきである」としています。
02違法とされた例(ラクソン事件)
違法な引き抜きと評価された例として、取締役かつ中心的な役割を果たしていた幹部従業員が、会社に知られないよう内密にセールスマンらの移籍の計画・準備をし、移籍後直ちに営業を行うことができるように準備した上で、慰安旅行を装って事情を知らないセールスマンをまとめて連れ出し、ホテル内の一室で移籍の説得を行う等し、大量に競業他社に移籍させたことについて、引き抜きの態様が計画的かつ極めて背信的であるとし、社会的相当性を逸脱した違法な評価とした裁判例があります(ラクソン事件、東京地裁平成3年2月25日判決)。「慰安旅行を装って連れ出す」という周到な手口が、計画性・背信性を強く裏付ける要素として重視されました。
03違法とされた例(アイメックス事件)
また、別の事案では、従業員らが大量移籍を計画的に進め、会社の顧客情報を持ち出し、会社から顧客を奪う意図があったとうかがわれること等から、引き抜き行為が契約上の義務違反に当たると評価しました(アイメックス事件、東京地裁平成17年9月27日判決)。この事例では、単なる人員の移籍にとどまらず、顧客情報の持ち出しという別の悪質要素が加わっている点が特徴です。
04大量引き抜きが直ちに違法になるわけではない
なお、これらの裁判例はいずれも大量引き抜きについてですが、大量引き抜きが直ちに違法と結論付けられているわけではありません。引き抜きに至る経緯が詳細に認定され、その上で、引き抜きの規模も含めて、首謀者が使用者に殊更に打撃を与えようとしているか否かが様々な角度から検討されているものと考えられます。単に人数が多いというだけでなく、計画性、秘密裏の準備、勧誘の手口の悪質性、顧客情報の持ち出しの有無など、複数の要素を総合的に見て違法性が判断されます。
05会社側が押さえておくべき視点
会社側が退職者による引き抜きへの対応を検討する際には、単に「元従業員が複数人当社を退職して同じ会社に移籍した」という事実だけでは、法的責任を問うことは困難です。責任追及のためには、移籍の計画性(在職中からの秘密裏の準備の有無)、勧誘の手口の悪質性、顧客情報等の持ち出しの有無といった、社会的相当性を著しく欠く事情を具体的に把握・立証する必要があります。
こうした事情の把握には、退職者と現従業員との連絡記録、顧客データへのアクセスログ等、客観的な証拠の収集が重要になります。引き抜きが疑われる場合には、早期に事実関係の調査を開始することをお勧めします。
06よくある質問(FAQ)
Q. 退職した元従業員が、元の同僚を新しい勤務先に誘ってもよいですか。
原則として違法性を有しません。ただし、その方法・態様が社会的相当性を著しく欠く場合には、不法行為責任を負うことがあります。
Q. 多数の従業員が同じ会社に一斉に移籍した場合、それだけで違法になりますか。
それだけでは直ちに違法とはなりません。計画性、勧誘の手口、顧客情報の持ち出しの有無等、様々な事情が総合的に検討されます。
Q. どのような手口で引き抜きを行うと、特に違法性が高いと判断されますか。
内密に移籍計画を進め、慰安旅行を装って連れ出すなど周到な手口を用いた事案は、計画的かつ極めて背信的として違法と評価されています(ラクソン事件)。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。引き抜き行為への対応でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
最終更新日:2026年7月13日