この記事の要点

  • 企画業務型裁量労働制の効力発生には、労使委員会の決議+労基署への届出+就業規則の定めが必要
  • 労使委員会は委員の5分の4以上の多数で7事項について決議しなければならない
  • 指針の「具体的に明らかにする事項」に反した決議は制度の効果が生じない
  • 届出は事業場ごとに必要で、他の事業場の決議・届出の流用は認められない

企画業務型裁量労働制の労基署への届出と導入手続きの実務【会社側弁護士が解説】

1労働時間みなし効力の発生要件

企画業務型裁量労働制を適用してみなし労働時間の効力を発生させるためには、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。

① 労使委員会の決議および労働基準監督署長への届出
② 就業規則等における定め
③ 対象労働者を対象業務に就かせること

いずれか一つでも欠けた場合、みなし労働時間の効力は発生しません。特に「届出」を失念するケースが実務上みられますので、注意が必要です。

2労使委員会の決議内容

企画業務型裁量労働制を導入するためには、当該事業場に設置された労使委員会において、委員の5分の4以上の多数による議決により、以下の事項について決議を行う必要があります(労基法38条の4第1項)。

番号 決議事項
対象業務
対象労働者の範囲
対象労働者の労働時間として算定される時間(みなし労働時間)
健康・福祉確保措置
苦情処理措置
対象労働者の同意および不同意の場合の不利益取扱い禁止
厚生労働省令で定めるその他の事項

これらの決議事項はすべて欠かすことができず、一部でも欠落があれば制度の適用が認められないリスクがあります。

3労働基準監督署長への届出

労使委員会の決議を行った後、使用者は当該決議を所轄労働基準監督署長に届け出る必要があります(労基法38条の4第1項)。

届出が行われなければ、就業規則への定めや労使間の合意があったとしても、企画業務型裁量労働制の法的効力は発生しません。この点は行政解釈でも明確にされており、実務上重要なポイントです。

4指針における留意事項

企画業務型裁量労働制の実施に関しては、「労働基準法第38条の4第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針」(平成11年12月27日労働省告示第149号。以下「指針」)において、留意すべき事項が詳細に定められています。

指針の「第3 労使委員会が決議する法第38条の4第1項各号に掲げる事項」では、上記①~⑦の各事項について、「当該事項に関し具体的に明らかにする事項」と「留意事項」に分けて詳細な指針が示されています。

重要:指針の「具体的に明らかにする事項」に反した決議がなされた場合は、企画業務型裁量労働制の効果は生じないとする行政解釈があります(平成12年3月28日基発180号)。

したがって、決議の内容が指針に照らして適切かどうかを事前に確認することが不可欠です。

5届出に関する行政解釈

届出に関しては、以下の行政解釈が示されています(平成12年1月1日基発1号)。

「決議は、規則様式第13号の2により、所轄労働基準監督署長に届出をしなければならないこと。この届出を行わなければ、法第38条の4第1項による企画業務型裁量労働制の効力は発生しないこと。」

届出は「規則様式第13号の2」という定められた様式で行う必要があり、様式を誤ると届出が受理されないリスクがあります。事前に所轄労基署に確認しておくことが望ましいでしょう。

6事業場ごとの対応が必要な理由

企画業務型裁量労働制の適用は事業場単位です。そのため、以下のような状況では制度を適用することができません。

  • 当該事業場で労使委員会の決議がなされていない場合
  • 決議が労働基準監督署長に届け出られていない場合
  • 別の事業場で決議・届出がなされているだけの場合
  • 就業規則に定めがあっても届出がない場合
  • 個別の労使合意があるだけで届出がない場合

複数事業場を持つ企業の場合、各事業場ごとに手続きを完結させる必要があります。グループ会社全体で一括して手続きを行うことはできませんので注意してください。

SUPERVISOR

弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。第一東京弁護士会所属。労働問題(使用者側)を中心に、企業法務全般を取り扱う。日本全国の会社経営者・人事担当者からのご相談に対応しております。

企画業務型裁量労働制の導入にあたっては、労使委員会の設置・運営から届出まで、手続き上のミスが後々の労使トラブルにつながりかねません。会社側弁護士として、適法な制度設計と運用をサポートいたします。日本全国各地の会社経営者の皆様からのご相談をお待ちしております。

7よくある質問

Q. 労使委員会の決議をした後、届出を忘れていた場合はどうなりますか?

届出がなければ企画業務型裁量労働制の効力は発生しておらず、その間の労働時間管理は通常の規制に従う必要があります。気づいた時点で速やかに届出を行い、届出前の期間について労働時間の実態を確認することが必要です。

Q. 決議の内容を変更した場合は改めて届出が必要ですか?

はい、決議の内容を変更した場合は改めて決議を行い、変更後の決議を労基署に届け出る必要があります。変更届の手続きを怠ると、変更後の内容が法的効力を持たない状態になる可能性があります。

Q. 委員の5分の4以上の多数でなければ決議できないとのことですが、反対票があった場合はどうなりますか?

反対委員が存在して5分の4以上の多数が得られなかった場合、その決議は法的効力を持たず、企画業務型裁量労働制を適法に導入することができません。再度の協議を経て要件を満たす決議を行う必要があります。

Q. 企画業務型裁量労働制の届出書類の作成について、注意すべき点はありますか?

届出は「規則様式第13号の2」による必要があり、決議の内容を正確に記載しなければなりません。記載内容が指針の「具体的に明らかにする事項」を満たしているかどうかの確認が重要です。専門家(弁護士・社会保険労務士等)の協力を得て作成することをお勧めします。

最終更新日:2026年5月28日


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