この記事の結論
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裁量労働制は労働時間の配分を労働者に委ね、みなし時間を労働したとする制度

裁量労働制は、業務の性質上、厳格な労働時間管理に馴染まない業務について、労働時間の配分を労働者に委ね、労使協定等で定めた時間を労働したとみなす制度です。

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対象業務は「専門業務型」と「企画業務型」に限られる

裁量労働制が適用可能な対象業務は、専門業務型と企画業務型の2類型です。これらに該当しない業務に裁量労働制を適用することはできません。

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適用の可否は、各労働者の具体的な業務の性質・内容で判断される

対象業務に名目上該当しても、実際の業務が補助的な作業にとどまる場合などは適用対象になりません。適用の可否は具体的な業務の性質・内容で判断されます。

01裁量労働制とは

 裁量労働制とは、業務の性質上、厳格な労働時間管理に馴染まないため、労働時間の具体的な配分を労働者に委ね、実労働時間にかかわらず、労使協定等にて定めた時間を労働したものとみなす制度をいいます。例えば、みなし労働時間を1日8時間と定めた場合、実際の労働時間が8時間より長くても短くても、8時間労働したものとして扱われます。

 業務の進め方や時間配分を労働者本人の裁量に委ねることが適している一定の業務について、時間ではなく成果に着目した働き方を可能にする制度です。もっとも、どのような業務にも適用できるわけではありません。裁量労働制が適用可能な対象業務は、専門業務型と企画業務型の2類型に限られます。

 また、裁量労働制を導入するには、対象業務に該当することに加えて、専門業務型では労使協定の締結・届出、企画業務型では労使委員会の決議・届出など、それぞれ法律で定められた手続を踏む必要があります。みなし労働時間が法定労働時間を超える場合の割増賃金の支払や、深夜・休日労働に関する規制は適用されますので、「裁量労働制にすれば残業代が一切不要になる」というものではない点にも注意が必要です(年俸制と残業代の関係は561番も参照)。以下では、対象業務の2類型について説明します。

02専門業務型(対象18業務)

 専門業務型裁量労働制は、業務の性質上、その遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要がある業務として、法令で定められた業務を対象とするものです。対象となるのは、次の18業務です。

専門業務型裁量労働制の対象業務

① 新商品等の研究開発
② 情報処理システムの分析又は設計
③ 新聞・出版の記事又は放送等の作成のための取材・編集
④ 衣服、室内装飾、工業製品、広告などの新たなデザインの考案の業務
⑤ 放送番組、映画等の制作のプロデューサー・ディレクター
⑥ コピーライター
⑦ システムコンサルタント
⑧ インテリアコーディネーター
⑨ ゲーム用ソフトウェアの開発
⑩ 証券アナリスト
⑪ 金融工学等を用いて行う金融商品開発
⑫ 大学の教授研究の業務
⑬ 公認会計士
⑭ 弁護士
⑮ 建築士
⑯ 不動産鑑定士
⑰ 税理士
⑱ 中小企業診断士

 ここで注意が必要なのは、これらの業務に名目上関わっていれば当然に適用されるわけではない、という点です。たとえば、研究職であっても、主任研究員の指揮監督の下、補助的な作業に従事する者は、適用対象者とはなりません。裁量労働制の対象となるか否かは、各労働者の具体的な業務の性質や内容によって判断されます。

 また、裁判例では、税理士の補助業務者や、プログラミング業務を行っていた労働者について、専門業務型裁量労働制の適用を否定したものがあります。「資格を持っている」「専門部署に所属している」というだけでなく、実際にその業務を裁量をもって遂行しているかどうかが問われます。形式的に対象業務の名称に当てはめて適用すると、後に裁量労働制が無効とされ、みなし労働時間ではなく実労働時間に基づく未払残業代を請求されるリスクがありますので、注意が必要です。

03企画業務型

 企画業務型裁量労働制は、事業運営に関する企画、立案、調査及び分析の業務を対象とするものです。具体的には、次のような業務が対象となります。

企画業務型の対象となる業務の例

① 経営企画を担当する部署において、経営状態・経営環境等について調査・分析を行い、経営に関する計画を策定する業務

② 営業に関する企画を担当する部署において、営業成績や営業活動上の問題点等について調査・分析を行い、企業全体の営業方針や商品ごとの全社的な営業計画を策定する業務

 これに対して、次のような業務は、企画業務型裁量労働制の対象とはならないと考えられています。

企画業務型の対象とならない業務の例

① 店頭販売やルートセールス等、単純な営業の業務である場合や、そうした業務と組み合わせる場合

② 企画立案調査分析業務と組み合わせる業務が、個別の製造業務や、備品等の物品購入業務、庶務・経理業務等である場合

 企画業務型は、事業の運営に関する事項についての企画・立案・調査・分析という、相互に関連し合う一連の業務を、自らの裁量で遂行することが想定されています。そのため、定型的・補助的な業務や、上司の具体的な指示に従って行う業務は対象になりません(平成27年2月13日労審発777号「今後の労働時間法制等の在り方について(報告)」参照)。

 なお、企画業務型裁量労働制を導入するには、労使委員会を設置してその決議を行い、労働基準監督署へ届け出るなど、専門業務型よりも厳格な手続が求められます。対象業務への該当性の判断や導入手続には専門的な検討を要しますので、導入を検討する際は、使用者側弁護士・社会保険労務士に相談することをお勧めします。

経営上のポイント 裁量労働制は、労働時間の配分を労働者に委ね、労使協定等で定めた時間を労働したとみなす制度で、対象業務は専門業務型(法定の18業務)と企画業務型に限られます。これらに名目上該当しても、補助的な作業にとどまる場合などは適用対象になりません。適用の可否は各労働者の具体的な業務の性質・内容で判断され、形式的な当てはめで適用すると無効とされ未払残業代のリスクがあります。導入の可否や手続は弁護士・社会保険労務士に相談することをお勧めします。アドバイスします。
SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 裁量労働制にすれば、残業代を支払わなくてよくなりますか。

A. いいえ。裁量労働制は、実労働時間にかかわらず労使協定等で定めたみなし労働時間を労働したものとして扱う制度であり、残業代を一切免除する制度ではありません。みなし労働時間が法定労働時間(1日8時間)を超える場合は、その超過分について割増賃金の支払が必要です。また、深夜労働や休日労働に関する規制も適用されます。「裁量労働制=残業代不要」という理解は誤りですので注意してください。

Q2. システムエンジニアやプログラマーは、裁量労働制の対象になりますか。

A. 専門業務型の対象には「情報処理システムの分析又は設計」や「システムコンサルタント」が含まれますが、プログラミングそのものを行う業務は、これに当たらないと考えられています。裁判例でも、プログラミング業務を行っていた労働者について専門業務型裁量労働制の適用を否定したものがあります。実際の業務が分析・設計といえるのか、それともプログラミングなどの作業が中心なのかによって判断が分かれますので、業務の実態を確認することが重要です。

Q3. 対象業務に当たれば、すぐに裁量労働制を適用できますか。

A. 対象業務に該当するだけでは足りず、所定の手続が必要です。専門業務型では、労使協定で対象業務・みなし労働時間・健康確保措置などを定めて労働基準監督署へ届け出る必要があり、企画業務型では、労使委員会を設置して決議を行い届け出るほか、対象労働者本人の同意も必要です。手続を欠く裁量労働制は無効となり、実労働時間に基づく残業代を請求されるおそれがあります。導入の際は、対象業務該当性と手続の双方を確認することが重要です。

最終更新日:2026年2月25日


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