専門業務型裁量労働制の対象社員に残業代(割増賃金)を支払う必要がありますか。
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専門業務型裁量労働制は「労働時間をみなす制度」であり、労働時間に関する労基法の規制を除外する制度ではない 裁量労働制を適用しても、休憩・休日・時間外休日労働・割増賃金に関する規定は原則どおり適用されます |
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みなし時間が法定労働時間を超える場合や法定休日に労働させる場合には、36協定の締結・届出と時間外・休日割増賃金の支払が必要 「裁量労働制なら36協定も残業代も不要」という理解は誤りです |
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深夜(22時〜5時)に労働させた場合には、深夜割増賃金の支払が必要 これは事業場外みなし労働時間制(294番参照)と同様の取り扱いです |
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みなし時間と実労働時間が乖離していても、適用要件を充足する限りみなし時間でみなされる——使用者の労働時間把握義務は免除される これが事業場外みなし制との大きな違いの一つです(平成13年4月6日基発339号) |
目次
01専門業務型裁量労働制の概要(労基法38条の3)
287番で解説したとおり、専門業務型裁量労働制は、業務の性質上その遂行の方法を大幅に当該業務に従事する労働者の裁量にゆだねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をすることが困難なものとして厚生労働省令で定める業務のうち、労働者に就かせることとする業務(対象業務)として労使協定で定めた業務に労働者を就かせたときは、実労働時間と関係なく、労使協定で定めた時間労働したものとみなす制度です(労基法38条の3)。
対象業務は、研究開発・情報処理システムの分析・設計・取材記者・デザイナー・弁護士・公認会計士・薬剤師・SEなど、厚生労働省令(労基則24条の2の2第2項)で定められた19業務に限定されています。
02みなし時間と実労働時間の関係——労働時間把握義務の免除
使用者は労働者の労働時間を把握し、把握した時間に応じて算定した賃金を支払う義務を負うのが原則ですが、専門業務型裁量労働制の適用により、労働時間把握義務を免除されることになります(平成13年4月6日基発339号)。
本制度は、みなし労働時間の決定を労使自治に委ねるものである以上、専門業務型裁量労働制の適用要件を充足する限り、みなし労働時間と実労働時間が乖離している場合であっても、みなし労働時間労働したものとみなされることになります。
専門業務型裁量労働制:みなし時間と実労働時間が乖離していても、適用要件を充足する限りみなし時間でみなされる。使用者の労働時間把握義務が免除される。
事業場外みなし制:「通常必要とされる時間」に基づくみなし(294番・295番参照)。使用者が労働時間を実際には把握できている場合は「算定し難いとき」の要件を満たさず適用が否定されるリスがある(290番・293番参照)。
03専門業務型裁量労働制は残業代を免除する制度ではない
本制度は、労働時間をみなす制度であり、労働時間に関する労基法の規制の適用を除外する制度ではありませんので、休憩(労基法34条)、休日(同法35条)、時間外及び休日の労働(同法36条)、時間外、休日及び深夜の割増賃金(同法37条)などの規定は原則どおり適用されます。
04みなし時間が法定労働時間を超える場合の残業代と36協定
みなし時間が法定労働時間(労基法32条:1日8時間・週40時間)を超える場合や法定休日に労働させる場合には、時間外・休日労働に関する労使協定の締結・届出(同法36条:36協定)や時間外・休日割増賃金の支払(同法37条1項)が必要となります。
例えば、労使協定で「みなし労働時間を1日10時間」と定めた場合は、1日8時間を超える2時間分について時間外割増賃金(25%以上)の支払義務が生じ、そのためには36協定の締結・届出も必要となります。「裁量労働制を導入したから36協定も残業代も不要になる」という理解は誤りです。
みなし時間=所定労働時間(8時間)の場合:週40時間以内であれば時間外割増賃金は不要。36協定は法定休日労働のために必要。
みなし時間=10時間の場合:1日8時間超の2時間分について時間外割増賃金が発生。36協定の締結・届出が必要。
法定休日に労働させる場合:みなし時間の設定にかかわらず、休日割増賃金(35%以上)が発生。36協定の締結・届出が必要。
05休日・深夜労働の割増賃金
深夜(22時〜5時)に労働させた場合には、深夜割増賃金の支払(同法37条4項)が必要となります。これは、みなし時間の設定内容にかかわらず、深夜時間帯に実際に労働させた事実があれば発生する割増賃金です。
専門業務型裁量労働制においては、使用者の労働時間把握義務が免除される(02節参照)ため、深夜に労働した事実を把握することが難しい場合があります。しかし、深夜割増賃金の支払義務は実際に深夜時間帯に業務を行ったかどうかで生じますので、「労働時間を把握していない」という理由では免れることはできません。深夜に業務を行う可能性がある場合の管理については、使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することをお勧めします。
06まとめ
専門業務型裁量労働制は「労働時間をみなす制度」であり、「残業代を免除する制度」ではありません。休憩・休日・時間外休日労働・割増賃金に関する労基法の規定は原則どおり適用されます。みなし時間が法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える場合や法定休日に労働させる場合には36協定の締結・届出と時間外・休日割増賃金の支払が必要であり、深夜に労働させた場合は深夜割増賃金の支払が必要です。専門業務型裁量労働制の適正な導入・運用については、使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することをお勧めします。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。専門業務型裁量労働制の導入・就業規則の整備・残業代トラブルの予防でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。アドバイスします。
Q&Aよくある質問
Q1. 専門業務型裁量労働制の対象者には残業代を支払わなくてよいですか。
A. 完全に支払わなくてよいわけではありません。専門業務型裁量労働制は「労働時間をみなす制度」であり「残業代を免除する制度」ではありません。みなし時間が法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える場合や法定休日に労働させる場合には時間外・休日割増賃金の支払が必要であり、深夜に労働させた場合は深夜割増賃金の支払が必要です。
Q2. 専門業務型裁量労働制のみなし時間が所定労働時間を超える場合、残業代はどうなりますか。
A. みなし時間が法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える部分について、時間外割増賃金(25%以上)の支払義務が生じます。例えば、みなし時間を1日10時間と定めた場合は、8時間超の2時間分について時間外割増賃金の支払が必要です。また、36協定の締結・届出も必要となります。
Q3. 専門業務型裁量労働制の対象者が深夜に働いた場合も割増賃金は必要ですか。
A. 必要です。深夜(22時〜5時)に労働させた場合には、みなし時間の設定内容にかかわらず、深夜割増賃金(25%以上)の支払義務が生じます(労基法37条4項)。「裁量労働制を適用しているから深夜割増賃金も不要」という理解は誤りです。
Q4. 専門業務型裁量労働制と36協定の関係を教えてください。
A. みなし時間が法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える場合や法定休日に労働させる場合には、36協定(時間外・休日労働に関する労使協定)の締結・届出が必要です(労基法36条)。裁量労働制を導入したとしても36協定が不要になるわけではありません。36協定については272番〜275番もご参照ください。
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最終更新日:2026年5月10日