この記事の結論
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仮処分とは、本案判決を待てない事案における裁判所の暫定的処分

仮処分が認められるためには、①被保全権利の存在と②保全の必要性が必要です。労働事件の代表例は解雇事案における賃金仮払仮処分で、訴訟で決着がついていない段階で一定額の仮払金支払が命じられます。

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賃金仮払仮処分は解雇された労働者が申し立てるケースが多い

解雇後、本案訴訟の判決が出るまでの生活費を確保するために申し立てられます。認められると、会社は訴訟の決着前から一定額を支払わなければなりません。

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使用者側が申し立てるケースとして街宣活動差止仮処分がある

使用者側が仮処分を利用することは多くありませんが、労働組合による街宣活動の差止めの仮処分を申し立てることがあります。

01仮処分とはどのような手続か

 仮処分とは、訴訟における本案判決を待てない保全の必要性がある事案において、被保全権利の疎明がある場合に認められる裁判所の暫定的な処分をいいます。

 通常の訴訟(本案訴訟)は、判決が出るまでに相当の時間を要します。その間に損害が拡大したり、権利の実現が困難になったりする場合に、暫定的に現状を保全するための手続が仮処分です。あくまで暫定的な処分であり、本案訴訟の判決が出れば、その内容に従って清算されます。

 仮処分は民事保全法に基づく手続であり、本案訴訟とは別に申立てを行います。申立てを受けた裁判所は、審尋や審理を経て、仮処分命令を発するかどうかを判断します。

02仮処分が認められるための要件

 仮処分が認められるためには、次の2つの要件が必要となります。

仮処分の2つの要件

① 被保全権利の存在:仮処分によって保全しようとする権利が存在することです。疎明(訴訟における証明よりも緩やかな立証)で足ります。
② 保全の必要性:本案判決を待っていては権利の実現が困難になる事情があることです。権利が存在していても、保全の必要性がなければ仮処分は認められません。

 「疎明」とは、通常の訴訟における「証明」より緩やかな立証です。確信の程度まで必要なく、一応確からしいと認められる程度で足ります。そのため、仮処分は比較的迅速に審理されますが、それでも相手方の反論を踏まえた判断が行われます。

03賃金仮払仮処分の概要

 労働事件における仮処分の代表例は、解雇事案における賃金仮払仮処分です。

 解雇された労働者が、解雇の有効性を争う本案訴訟(地位確認請求訴訟)を提起した場合、判決が出るまでの間は賃金を受け取ることができません。しかし、判決まで数年を要することもあり、その間の生活費を確保するために、賃金仮払仮処分が申し立てられることがあります。

 賃金仮払仮処分が認められると、本案訴訟で決着がついていない段階で、会社に対して一定額の仮払金の支払が命じられます。解雇が有効と判断された場合には、仮払金は返還されることになります。

 会社経営者として重要なのは、賃金仮払仮処分が申し立てられた場合、本案訴訟とは別に仮処分の手続に対応しなければならないという点です。審尋への対応や反論書面の提出など、迅速な対応が求められます。

04賃金仮払仮処分の手続の流れ

 賃金仮払仮処分の手続は、本案訴訟とは別に進行します。労働者が申立書を裁判所に提出し、裁判所が審尋を行ったうえで決定を下します。

 会社側(相手方)は、審尋において反論を行う機会が与えられます。解雇の有効性を主張する証拠や書面を提出し、仮処分命令が出ないよう対応することが重要です。仮処分命令が出た場合には、即時抗告(不服申立て)を行うことができます。

 仮処分命令で認められる仮払金額は、通常、月額賃金の全額ではなく、生活費として必要な範囲に限定されることが多いです。もっとも、具体的な金額は事案によって異なります。

 会社経営者としては、賃金仮払仮処分の申立書が届いた場合には、直ちに使用者側弁護士に相談し、審尋に向けた準備を進めることが重要です。

05使用者側が仮処分を申し立てるケース

 使用者側が仮処分を利用することは多くありませんが、代表的なケースとして、労働組合による街宣活動の差止めの仮処分があります。

 労働組合が会社の前や近隣で拡声器を使った街宣活動を行う場合、その内容や態様によっては、会社や経営者の名誉・信用を毀損したり、業務を妨害したりすることがあります。このような場合に、会社側が街宣活動の差止めを求める仮処分を申し立てることがあります。

 街宣活動差止仮処分が認められるためには、街宣活動によって侵害される権利(名誉権や業務遂行権など)の存在と、差止めの必要性を疎明する必要があります。労働組合の正当な組合活動の範囲内とみなされる場合には、差止めが認められないこともあるため、具体的な状況を踏まえた慎重な判断が必要です。

経営上のポイント 賃金仮払仮処分が申し立てられた場合は、本案訴訟とは別に迅速な対応が必要です。仮処分の審尋への対応を誤ると、本案訴訟の決着前から一定額の支払義務が生じることになります。使用者側弁護士に早期に相談することをお勧めします。アドバイスします。

SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 賃金仮払仮処分が認められた場合、会社は必ず支払わなければなりませんか。

A. 仮処分命令が確定すれば、原則として支払義務が生じます。支払わない場合には強制執行の対象になります。仮処分命令に不服がある場合は、即時抗告(不服申立て)を行うことができますが、その間も仮処分命令の効力は続くことが通常です。

Q2. 本案訴訟で会社が勝訴した場合、仮払いした賃金は返ってきますか。

A. 本案訴訟で解雇が有効と判断された場合には、仮払いした金銭の返還を求めることができます。ただし、実際に返還されるかどうかは相手方の資力によります。現実に回収できるとは限らない点に注意が必要です。

Q3. 賃金仮払仮処分の申立書が届きました。どう対応すればよいですか。

A. 直ちに使用者側弁護士に相談してください。仮処分手続は迅速に進むため、対応が遅れると不利な命令が出てしまうことがあります。解雇の有効性を主張する証拠や書面を早急に準備し、審尋に備えることが重要です。

最終更新日:2026年2月25日


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