この記事の結論
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パワハラと言われても逃げない。パワハラかどうかは客観的に決まる

正当な注意指導から逃げると「言い返せば引く上司」と学習され、問題行動がエスカレートします。「相手がそう思ったらパワハラ」は誤りで、同じ立場の労働者がどう感じるのが普通かという客観的基準で判断されます。

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議論の対象は評価ではなく事実(5W1H)。注意指導は白黒ではなく点数で考える

調査では「パワハラかどうか」を聞くのではなく、何月何日にどこで誰が誰に何をしたかという事実を確定させます。注意指導の質は0点から100点で考え、ギリギリセーフの42点ではなく80〜90点を目指します。

01パワハラと言われても逃げない

 まともな注意指導をしているにもかかわらず、「パワハラだ」と言い返してくる社員は、実際に少なくありません。どこが問題なのかを具体的に言えないまま、とにかくパワハラだと上司を威嚇して注意指導をしにくくさせる、という困った社員が一定数いるのが実情です。

 そのような場面で最も大事な心構えは、パワハラと言われても逃げない、ということです。もちろん、自分の言い方や対応に明らかに問題があったと感じた場合は、すぐに直さなければなりません。しかし、正当な注意指導をしているにもかかわらずパワハラだと言われた場合に、そこから逃げてしまうことは非常に危険です。

 パワハラだと言い返されただけで注意指導を止めてしまうと、相手は「言い返せばすぐ引いてくれる」ということを学習します。その結果、言い返したり威嚇したりすれば何でも通ると思い始め、仕事を怠り始めることがあります。さらにひどくなると、気に食わない同僚に嫌がらせをするなど、問題行動が深刻化する社員も出てきます。一度逃げてしまうと、職場の秩序を回復することが格段に難しくなります。パワハラと言われた瞬間に、「本当に問題があったのかどうか」をしっかり判断することが、最初の分岐点です。

02管理職がパワハラと言われた場合の経営者の対応

 「パワハラと言われても逃げない」という話は、管理職が部下からパワハラだと言われた場合の経営者の対応にも直結します。

 部下から「あの上司にハラスメントを受けた」という訴えがあったとき、その管理職をすぐにマイナス評価することは適切ではありません。「パワハラだと言われた管理職がいる」という事実だけで処罰してしまうような対応は避けてください。

 大事なのは、実際に何があったのかをよく調べることです。調べた結果、確かに問題のある言動があったということであれば直させなければなりませんし、場合によっては懲戒処分を検討することもあります。しかし、調べてみてしっかりとした注意指導を行っていたという前提であれば、むしろその管理職を応援し支援することが必要です。これが経営者の役割です。誰かが「パワハラされた」と申告しただけでそれを真に受けていきなり処罰してしまうと、真剣に注意指導をしようとする管理職がいなくなってしまいます。事実関係に応じた適切な対応を心がけてください。

03パワハラかどうかは客観的に決まる

 「相手がパワハラだと感じたらパワハラ」という話を耳にすることがありますが、これは誤りです。パワハラかどうかは客観的に決まるものであり、相手がどう感じたかだけで決まるものではありません。

 仮に「相手がそう思ったらパワハラ」が本当だとすると、上司が正当な注意をしただけで、部下から「それってパワハラですよ」「私がそう思ったからパワハラです」と返されれば、上司はもう何も注意指導できなくなってしまいます。このような理屈は成り立ちません。

 パワハラかどうかの正しい基準は「客観的に」です。具体的には、同じような立場・状況にある労働者がどのように感じるのが普通か、という基準で判断します。相手一人の主観がどうであるかは判断の一つの材料にはなりますが、それが基準にはなりません。この誤解を解いておくことが、適切な注意指導を続けるための土台になります。

04議論の対象は「事実(5W1H)」

 ハラスメントの相談や調査の場面で、不毛な議論がなされていることがあります。被害を訴える方は「パワハラされた」と言い、上司に確認すると「パワハラなどしていない」と言う。パワハラかどうかという評価をぶつけ合うだけで、議論がまったく噛み合わないパターンです。

 調査の際に「パワハラをやったのですか」「パワハラされたのですか」という聞き方をしてはいけません。重要なのは事実です。いつ・どこで・誰が・誰に・どのように・何をやったのかを確定させることが先決です。事実が確定すれば、それがパワハラに当たるかどうかの評価は後から判断できます。

 たとえば、加害者とされる方に事実を確認する際は、「〇月〇日の〇時頃、〇〇で、あなたから〇〇さんが〇〇と言われたと言っているが、それは本当ですか」という聞き方をしてください。事実について「本当かどうか」を問う形にすれば、議論が噛み合いやすくなります。実際に言った言葉・やったことがはっきりすれば、パワハラかどうかの評価はそこから判断できます。評価を質問するのではなく、事実を確定させる調査を徹底することが肝心です。

05白か黒かではなく「点数」で考える

 「これはパワハラですか、パワハラではないですか」という質問を受けることが多くありますが、白か黒か、アウトかセーフかの二択で考えるのは危険です。

 注意指導の質は、0点から100点の間のどこかにある「点数」で考えてください。仮に「あなたのやり方は42点。パワハラではない、ギリギリセーフ」と評価されたとしても、ちょっとした事実関係の勘違いがあれば38点になり、一気にパワハラと評価されてしまう可能性があります。ギリギリセーフの42点と、余裕のある90点では、安全性も教育効果もまったく違います。目指すべきは「ギリギリパワハラではない」ではなく、「教育効果が高く、パワハラとも言われない」80点・90点の注意指導です。

 点数の高い注意指導の核心は、「勤務態度が悪い」「協調性がない」といった評価的な言葉ではなく、「何月何日の何時頃、どこで、あなたは誰に対してどんなことをやりましたよね」という事実を伝えることです。具体的な事実に基づいて伝えることで、教育効果が高まり、パワハラとも言われにくくなります。白黒思考でギリギリセーフを狙い続けると、改善も起きにくく、ちょっとした間違いでパワハラと評価されるリスクが常につきまといます。

06よくある質問(FAQ)

Q. 注意をするたびに「パワハラだ」と言い返されます。注意指導を続けてよいですか。

自分の注意指導に客観的に問題がないと判断できるなら、続けてください。パワハラかどうかは相手の主観ではなく客観的に決まるものですから、相手が「パワハラだ」と言うだけで注意指導を止める必要はありません。ただし「どこが問題なのか」は常に自問してください。判断に迷う場合は会社側専門の弁護士にご相談ください。

Q. 管理職が部下からパワハラと申告されました。まず何をすべきですか。

管理職をすぐにマイナス評価することはやめてください。まず「いつ・どこで・誰が・誰に・どんな風に・何をやったのか」という事実を被害申告した方からしっかり聴取し、次に管理職からも同じく事実ベースで聴取してください。まともな注意指導をしていたことが分かれば、むしろその管理職を応援・支援することが経営者の役割です。

Q. ハラスメントの調査をする場合、どのように聴取を進めればよいですか。

「パワハラをやったのですか」「パワハラされたのですか」という評価的な質問をしてはいけません。「〇月〇日の〇時頃、〇〇という場所で、〇〇さんに対して、こういったことを言った・やったと聞いていますが本当ですか」という形で、事実(5W1H)を確定することに集中してください。事実が確定すれば、パワハラかどうかの評価はそこから判断できます。

Q. 自分の注意指導がパワハラにあたるかどうか不安です。どのように確認すればよいですか。

会社側専門の弁護士に具体的な事実(いつ・どこで・誰に・何を言ったか)を伝えたうえで確認することをお勧めします。パワハラかどうかを白か黒かで判断するよりも、「この言い方は何点か」という点数の視点で考えてください。ギリギリセーフの42点を目指すのではなく、教育効果が高く客観的にも問題のない80〜90点の注意指導を目指してください。

経営上のポイント 正当な注意指導に対して「パワハラだ」と言い返す問題社員がいても、事実確認の結果として問題がなければ逃げるべきではありません。パワハラかどうかは相手の主観ではなく、同じ立場の労働者がどう感じるのが普通かという客観的基準で決まります。調査では評価ではなく事実(5W1H)を確定させることが先決で、注意指導は白黒ではなく点数で考え、ギリギリセーフの42点ではなく80〜90点の質を目指してください。ハラスメント対応注意指導の進め方について、こまめに会社側専門の弁護士に相談しながら対応することをお勧めします。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。パワハラ・ハラスメント対応でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月2日


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