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本ページの基となる解説動画
本ページの解説内容は、以下の藤田進太郎弁護士による解説動画を素材として、当事務所が文章化しているものです。本ページの記載と動画の内容に齟齬がある場合や、より詳しい解説をご覧になりたい場合は、動画を直接ご視聴ください。
配置転換だけでは問題は解決しない
モチベーションを考えるべきは管理職1人ではない
パワハラが疑われる管理職に対して、「注意するとモチベーションが下がるのではないか」と懸念する社長さんはたくさんいらっしゃいます。その気持ちはよく分かります。ちょっと怖い方だからすぐ言い返されてこっちも大変だとか、モチベーションが下がって仕事のパフォーマンスが落ちるんじゃないかとか、色々な心配があるでしょう。しかしそこは覚悟を決めていただく必要があります。
なぜかというと、本当にひどいパワハラをやっている管理職がいた場合、部下の方々のモチベーションが潰れてしまうからです。モチベーション低下を気にしなければならないのは、その管理職1人だけではありません。社長が考えてあげなければならないのは、社員全員、パート・アルバイトも含めて、みんな働いてくれている方々全体のモチベーションです。管理職のパワハラの程度があまりにもひどいのに社長がほったらかしにしていたらどう思うでしょうか。「社長に見放された」と感じてやめてしまうかもしれないのです。
配置転換で引き離しても行動を改めさせなければ意味がない
モチベーション低下を心配するあまり、被害者との配置転換だけで当面の問題を解消させようとする会社もあります。確かに被害を訴えている部下の方々と引き離すことで、その部署の問題は一応収まるかもしれません。しかし、行動を改めさせなければ配置転換先でも同じことをする懸念があるわけです。問題を解決しないまま他の部署に配置転換したら、そちらの部署の方々が犠牲になるかもしれません。だからこそ、配置転換とあわせてしっかり注意指導も行う必要があるのです。
早い段階で動くことが最も大事
ひどいパワハラは最初からやっているわけではない
ものすごくひどいパワハラというのは、大体の場合、最初からやっているわけではありません。最初の頃はほどほどの程度だったのが、どんどんエスカレートしていくケースが多いのです。しかもほどほどの段階で、管理職や社長の耳に何らかの情報が入ってくることも多いのです。「あの人ちょっと声が大きい」とか、そういった情報がなんとなく入ってくるのです。
ところが、はっきり報告を受けたわけではないので本当に問題なのか明確に認識していなかったり、「パワハラと言えるほどひどいものじゃないんじゃないか」「ちょっと不満を言っているだけで大げさに言っているのかな」と思っているうちに、どんどんひどくなってしまう。そして被害を訴える方が大勢になって、もう引き離すしかなくなってしまうのです。
小さな問題の段階で注意すればモチベーション低下も小さい
初期の段階であれば、ちょっと気をつけてもらうだけで問題は解決したかもしれないのです。そしてここが大事なポイントですが、小さな問題の段階で注意する場合は、モチベーション低下にはそんなにつながりません。モチベーションが大きく下がるのは、問題がエスカレートした後にいきなり強く注意されたり懲戒処分になったりした場合です。
ですから、パワハラかどうかというレベルで考えるのではなく、会社を活気のある職場にして、みんなに才能を発揮してもらって業績を上げていくために、ちょっと不都合な情報が入ったら「これってどういうこと」とすぐ聞いてみてください。社長からすぐ話がいけば、「ちょっと注意しなきゃいけないかな」と早い段階で思ってもらえます。とにかく早く動くことが大事です。
本人は大声を出している自覚がないことが多い
無意識でやっていることは指摘されても治りにくい
注意指導の方法として大事なのは、具体的に直してもらいたい言動を指摘して、どう直せばいいのかを伝えることです。たとえば「大声を出して圧力をかける」というパワハラの訴えがある場合、「大声が出ているようだから、もっと声を抑えてください」ということをしっかり伝えます。
ただし、ここで理解しておかなければならないのは、被害者の側からすると大声で圧をかけられて辛いと訴えていても、案外ご本人はそんなに大声を出しているつもりがないことが多いということです。圧力をかけるために計画的に大声を出す方というのはごく一部です。どちらかというと自然と大声になっているケースが多い。つまり無意識なのです。
無意識でやっていることは本人が気づいていないことも多いですから、問題を指摘されても案外治りにくいのです。言われてみればそうなのかなと思う人もいれば、言われてみたけど別にそんなつもりはないよなと思う人もいます。ひどい場合は「言いがかりをつけられている」「気に食わないから意地悪で言っているのではないか」と感じてしまう方もいらっしゃいます。
事実をベースに議論すると本人も実感が持てる
ではどうすればいいかというと、何月何日の何時頃、誰に対して、どこで、どんな風に言ったのかという事実をベースに議論するのが最も効果的です。「あの時あの場所で、自分は大声を出したつもりはなかったけども、そう聞こえるのか」と気づいてもらえる可能性が高くなります。リアリティがあるからです。
しかもそういった訴えが2人、3人、4人と大勢からあれば、なおさらです。別の方にも「何月何日の何時頃、どこでこんな風に言ったことが怖いです」と言われている。こっちにもあっちにもいる。4人も5人も出てきたとなれば、ご本人も「自分は納得していないけれどもしょうがないか」と思ってもらいやすくなります。事実をベースにしっかり話していくと、言いがかりではない、勘違いではない、社長が意地悪で言っているわけではないということが伝わり、本人も直そうという気になりやすいのです。
被害者が「名前を出さないでほしい」と言う場合
名前を出さないでほしいと言われるケースは非常に多い
ここまでお話を聞いて、「うちの会社でも似たようなことがあったけれど、部下の方々が『辛いけれども自分の名前は出さないでください。名前なんか出したら気まずくて居心地が悪くなるし、名前を出さなきゃいけないなら、もうこの話はなかったことにしてください』と言われた」という社長さん、多いのではないでしょうか。被害は訴えてくるけれども自分の名前は出さないでほしいというケースは本当によくあるのです。
名前を出さないとなると、何月何日の何時頃、どこで、どのように何をやったのかという具体的な話もできませんよね。そこまで具体的な話をしてしまったら被害を訴えた人物が特定されてしまいますから。
基本は被害者の意向を尊重する
もちろん、被害者の救済だけでなく企業秩序の維持という目的もありますから、「本人がなんと言おうが、こんなのは許さないんだ」と踏み込む考え方もあるかもしれません。しかしもしそんなことをやったら、「秘密にしてって言ったのに社長はひどい」と思われて、もう二度と名前を出す覚悟がある人以外からは情報が入ってこなくなってしまうかもしれません。
ですから、やったことの程度がある程度までの水準であれば、被害を訴える方の意向を尊重して名前は出さないというのが基本的な対応です。約束は守らなければ信頼関係がなくなってしまいます。
あまりにもひどい場合は踏み込むこともあり得る
例外があるとすれば、あまりにもひどいことを言ったりやったりしていて、会社として放置できないという場合です。配置転換などとセットで対応し、一緒に仕事する確率がほぼなくなるような状況を作った上であれば、踏み込んで調査するということも理論的にはあり得ます。ただし、その場合でも被害を訴えている方をしっかり説得して同意を得た上で対応することが必要です。被害者が「黙っていてほしいと言ったのに名前をばらされた、もう信頼関係がなくなった、協力したくない、こんな会社やめます」と言い出したら何のためにパワハラ防止の努力をしているのか分かりません。
結局のところ、大事なのはパワハラかどうかという抽象的な議論ではなく、まず何をやったのかという事実の確定です。不都合な情報が入ったらすぐに「これってどういうこと」と確認してみてください。早い段階であれば、ちょっと注意するだけで問題は解決するのです。
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当事務所のサポート体制と監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所は、会社側(使用者側)専門の法律事務所として、パワハラが疑われる管理職への注意指導、事実調査の進め方、被害者対応、配置転換の判断まで、日常的にサポートしています。パワハラの問題は早い段階で動くことが最も大事です。情報が入った段階で弁護士に相談しながら進めていけば、大きな問題に発展することを防ぐことができます。
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
よくあるご質問
Q. パワハラを注意するとモチベーションが下がりませんか。
小さな問題の段階で早めに注意する場合は、モチベーション低下にはそんなにつながりません。モチベーションが大きく下がるのは、問題がエスカレートした後にいきなり強い対応を取られた場合です。そして、モチベーションを考えるべきなのは管理職1人ではなく、パワハラで辛い思いをしている部下も含めた社員全体です。
Q. 本人にパワハラの自覚がない場合はどう注意すればいいですか。
何月何日の何時頃、誰に対して、どこで、どんな風に言ったのかという事実をベースに話してください。計画的に大声を出す方はごく一部で、多くの方は自然と大声になっている無意識の状態です。事実をベースに話すことでリアリティが生まれ、本人も「そう聞こえるのか」と気づきやすくなります。
Q. 被害者が名前を出したくないと言っています。どうすればいいですか。
基本的には被害者の意向を尊重してください。名前を出してしまうと信頼関係が壊れ、今後情報が入ってこなくなる可能性があります。あまりにもひどい場合は踏み込む必要があることもありますが、その場合でも被害者をしっかり説得して同意を得た上で対応することが必要です。
Q. 配置転換だけで問題は解決しますか。
配置転換で被害者と引き離すことは当面の問題を解消しますが、行動を改めさせなければ配転先でも同じことをする懸念があります。配置転換とあわせてしっかり注意指導を行い、行動を改めてもらうことが必要です。
Q. 遠方の会社ですが、相談できますか。
対応しております。事務所会議室での対面相談のほか、ZoomやTeamsによるオンライン相談を実施しており、日本全国各地の会社経営者からのご相談を承っています。
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