この記事の結論
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解雇予告除外認定は限定的な例外制度。認定は民事上の効力発生要件ではないが、申請しないと罰則リスクがある

実体的に「やむを得ない事由」または「労働者の責に帰すべき事由」があれば民事上の即時解雇は有効となり得ます。しかし除外認定の申請を怠れば労基法119条1号の罰則対象となる可能性があります。効力の問題と罰則の問題は別です。

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認定を受けても訴訟で解雇無効と判断される可能性がある。経営上の危機は「やむを得ない事由」にならない

監督署の認定は行政判断であり、解雇の有効性を最終的に判断するのは裁判所です。また業績悪化や資金繰り難は「事業継続が不可能」には該当しないのが通常です。除外認定を安易に利用することは危険です。

01解雇予告除外認定の法的根拠

 解雇予告除外認定とは、一定の場合に解雇予告や解雇予告手当の支払を不要とする制度です。その法的根拠は、労働基準法第20条第1項ただし書にあります。

 同条は、原則として30日前の予告または30日分以上の平均賃金の支払を義務付けています。しかし例外として、「天災事変その他やむを得ない事由のため事業の継続が不可能となった場合」または「労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合」には、この予告義務が適用されないと定めています。もっとも、条文上は「労働基準監督署長の認定を受けたとき」に限るとされています。

 この制度は、即時解雇を広く認めるためのものではなく、あくまで例外的・限定的な場面を想定したものです。会社経営者として重要なのは、解雇予告除外認定は法定要件に厳密に該当する場合にのみ適用される例外制度であり、安易な利用は重大な法的リスクを招くという点です。

02どのような場合に除外が認められるのか

 解雇予告除外認定が問題となるのは、①「天災事変その他やむを得ない事由のため事業の継続が不可能となった場合」と、②「労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合」の二類型です。

 まず前者は、単なる経営不振や資金繰り悪化といった通常の経営リスクでは足りません。地震や火災などの天災、あるいはそれに準ずる不可抗力的事情によって、客観的に事業継続が不可能となった場合が想定されています。「困難」ではなく、継続が不可能であることが求められる点が重要です。

 次に後者の「労働者の責に帰すべき事由」とは、労働者の重大な非違行為など、労働契約の継続を直ちに断つことが相当といえる程度の事情を指します。単なる勤務態度不良や能力不足といった事情では、通常は足りません。

 「懲戒解雇に該当する=自動的に除外認定が認められる」わけではないという点に注意が必要です。除外認定は予告制度の例外を認める制度であり、通常の懲戒処分よりも厳格に判断される傾向があります。問題社員への対応として即時排除が妥当と思われる場合でも、それが直ちに解雇予告除外認定の対象になるとは限りません。

03解雇予告除外認定の手続の流れ

 解雇予告除外認定を受けるには、会社が所轄の労働基準監督署長に対して申請を行う必要があります。手続としては、まず解雇理由となる事実関係を整理し、客観的資料を添えて申請書を提出します。とりわけ「労働者の責に帰すべき事由」に基づく場合には、就業規則、懲戒規定、問題行為の証拠資料などを具体的に示すことが求められます。

 監督署は、提出資料や事情聴取を通じて、条文の要件に該当するかを判断します。そのうえで認定の可否が決定され、認定が下りれば解雇予告や解雇予告手当の支払なしに即時解雇を行うことが可能になります。

 証拠の不備や事実整理の甘さは、そのまま認定拒否や後日の紛争リスクにつながります。即時解雇という強い措置を正当化するための手続である以上、事実と証拠に基づく準備が不可欠です。

04認定は解雇の効力発生要件なのか

 解雇予告除外認定それ自体は、民事上の解雇の効力発生要件ではありません。すなわち、認定申請や認定決定の有無にかかわらず、実体的に労働基準法第20条第1項ただし書の要件に該当する場合には、解雇予告手当を支払わない即時解雇も有効となり得ます。法的には「実体要件該当性」が本質であり、認定はそれを行政的に確認する手続と位置付けられます。

 もっとも、認定を受けていないまま即時解雇を行った場合の行政上のリスクは別問題です。たとえ実体的に要件に該当していたとしても、除外認定の申請をせずに予告も手当支払も行わなかった場合、同法違反として罰則の対象となり得ます(同法119条1号)。

民事上は有効となる可能性がある一方で、行政上の責任を免れないという二重構造になります。「要件に該当しているから問題ない」と安易に判断してはいけません。効力の問題と罰則の問題は別であるという視点が不可欠です。

05認定を受けずに即時解雇した場合のリスク

 実体的に「労働者の責に帰すべき事由」があると判断し、解雇予告も解雇予告手当の支払もせずに即時解雇を行ったものの、解雇予告除外認定の申請をしていなかった場合のリスクを整理します。

 民事上は、実体的に労働基準法第20条第1項ただし書の要件に該当すれば、即時解雇が有効と判断される可能性はあります。しかし行政法上は別問題です。同法119条1号は、第20条違反に対して罰則を定めています。したがって、除外認定を受けることなく予告も手当支払も行わなかった場合、労働基準法違反として刑事罰の対象となり得ます。

 「実体的に正しい」ことと「手続的に適法である」ことは別であるという点に注意が必要です。仮に裁判で解雇が有効と判断されたとしても、除外認定を経ていなければ、労働基準監督署からの是正指導や送検リスクを否定できません。監督署対応が生じれば、企業の信用問題にも直結します。

 即時解雇という強い措置を選択する場合こそ、手続を省略してはなりません。実体要件の検討と同時に、除外認定の申請を行うことが原則です。

06認定を受けたのに無効と判断されるケース

 解雇予告除外認定を受けていれば即時解雇は絶対に有効かというと、必ずしもそうではありません。除外認定は行政庁である労働基準監督署長による判断ですが、最終的に解雇の有効性を判断するのは裁判所です。

 訴訟において、「天災事変その他やむを得ない事由」や「労働者の責に帰すべき事由」に該当しないと判断されれば、即時解雇の効力は否定される可能性があります。認定を受けていた以上、労働基準法違反としての罰則適用は問題とならないのが通常ですが、民事上は解雇予告手当の支払を欠く即時解雇として効力が否定される余地があります。

 つまり、「行政上は適法でも、民事上は無効」という構造が生じ得ます。特に、「労働者の責に帰すべき事由」の判断は、裁判所において厳格に審査されます。監督署の認定を得たからといって、裁判所の判断が拘束されるわけではありません。除外認定は強力な材料ではありますが、最終的なリスクを完全に遮断するものではないという点を認識すべきです。

07「労働者の責に帰すべき事由」の判断基準

 解雇予告除外認定の実務で最も問題となるのが、「労働者の責に帰すべき事由」に該当するかどうかの判断です。この要件は、単なる規律違反や能力不足では足りません。法的には、労働契約を即時に終了させてもやむを得ない程度の重大な帰責性が求められます。横領や重大な背信行為、企業秩序を著しく破壊する行為などが典型例とされますが、個別具体的事情により厳格に判断されます。

 「懲戒解雇相当」と評価できる場合であっても、当然に解雇予告除外認定の対象になるとは限りません。除外認定は、解雇予告制度という法定保護を排除する特例である以上、通常の懲戒処分よりも一段高いハードルが課されると理解すべきです。

 会社側の調査が不十分であったり、事実認定が曖昧であったりすると、後の訴訟で「帰責性が重大とはいえない」と判断される可能性があります。感覚的な「許せない」という評価と、法的に即時解雇が許容される水準とを明確に区別しなければなりません。帰責性の重大性を客観的証拠で裏付けられるかどうかが、最終的なリスクを左右します。

08経営上の危機と「やむを得ない事由」の違い

 「業績が悪化している」「資金繰りが厳しい」「取引先が撤退した」といった事情が生じた場合でも、これらは直ちに解雇予告除外認定の対象となる「やむを得ない事由」には該当しません。

 労働基準法第20条第1項ただし書が想定しているのは、「天災事変その他やむを得ない事由により事業の継続が不可能となった場合」です。ここで求められているのは、「困難」ではなく客観的に継続が不可能な状態です。通常の経営判断の失敗や市場環境の変動は、企業活動に内在するリスクであり、法律が予定する不可抗力とは評価されません。たとえ大幅な赤字であっても、事業再建や縮小継続の余地がある限り、「不可能」とは認められにくいのが実務の傾向です。

 「経営が厳しいから除外認定で即時解雇できる」と判断することは危険です。認定が下りない可能性が高いだけでなく、仮に解雇を強行すれば、予告義務違反や解雇無効の争いへと発展します。経営上の必要性は、原則として予告制度の枠内で処理すべき問題です。

09会社経営者がとるべき実務対応

 解雇予告除外認定は、即時解雇を可能にする制度ですが、同時に高いリスクを伴います。「使える制度かどうか」ではなく、本当に要件に該当するかどうかから出発すべきです。

 まず、事実関係の徹底的な整理が不可欠です。とりわけ「労働者の責に帰すべき事由」に基づく場合には、就業規則の規定内容、過去の処分歴、問題行為の具体的証拠などを客観的資料として整備しておく必要があります。感覚的評価や口頭報告だけでは足りません。

 次に、即時解雇以外の選択肢を検討する視点も重要です。予告期間を置く、解雇予告手当を支払うなど、通常の手続で処理できるのであれば、その方が紛争リスクは小さくなります。

 さらに、行政リスクと民事リスクを分けて考える必要があります。労働基準法第20条ただし書の実体要件を満たすかどうかは、最終的には裁判所が判断します。監督署の認定があっても、解雇無効と判断される可能性は残ります。

経営上のポイント 解雇予告除外認定(労基法20条1項ただし書)は天災事変等のやむを得ない事由または労働者の重大な帰責事由がある場合の限定的な例外制度です。認定は民事上の効力発生要件ではありませんが、申請しないと罰則リスクがあります。認定を受けても訴訟で解雇無効となる可能性があり、業績悪化は「やむを得ない事由」にはなりません。除外認定を検討する場合は必ず事前に弁護士に相談してください。アドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

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弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年2月25日


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