この記事の結論
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社会通念上の相当性は①情状②処分の均衡③使用者の落ち度の3要素で「解雇がやむを得ない」かを判断

客観的合理的理由(「解雇する理由があるか」)とは別次元の要件です。「解雇という手段を取ることが相当か」という観点から3要素を総合考慮します。前者を満たしても後者を欠けば解雇権濫用として無効となります。

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実務上特に問題になりやすいのは②処分の不均衡と③使用者側の落ち度。解雇前に必ず確認すること

類似の問題行動に対して他の社員には軽い処分しかしていなかった場合や、業務指示が不明確だった・教育機会を与えなかったなど使用者側に落ち度がある場合は、解雇の相当性が否定されるリスクがあります。

01社会通念上の相当性とは何か

 普通解雇の有効性を判断する上での2つ目の要件が「社会通念上相当であること」です(労働契約法16条)。この要件は、客観的合理的理由が存在することに加えて、解雇という手段を用いることが社会通念上やむを得ないと評価できるかどうかを問うものです。

 客観的合理的理由(前記事・労働問題26参照)は「解雇する理由があるか」という問題であるのに対し、社会通念上の相当性は「解雇という手段を取ることが相当か」という問題です。前者の要件を満たしても、後者の要件が認められなければ、解雇は依然として解雇権濫用として無効となります。「客観的合理的理由はある」という判断で満足してはいけません。

023つの考慮要素の全体像

 社会通念上の相当性の判断にあたっては、次の3つの事情が主な考慮要素となります。

①労働者の情状:反省の態度があるかどうか、過去の勤務態度・処分歴はどうか、年齢・家族構成など個人的な事情はどうかという事情です。問題行動に対して深く反省し改善の意欲を示している社員と、全く反省の態度を示さない社員とでは、解雇の相当性評価が異なります。

②他の労働者との処分の均衡:同じような問題行動をした他の社員と比較して、著しく不均衡な処分でないかどうかです。

③使用者側の対応・落ち度:使用者側の業務指示・管理体制に問題があったかどうか、改善の機会を十分に与えたかどうかという事情です。

 「反省しているかどうかは関係ない。問題行動があった以上は解雇できる」は誤りです。反省の態度は社会通念上の相当性の考慮要素の一つです。深く反省し改善の意欲を示している社員を解雇する場合は、改善可能性を十分に考慮した上でなお解雇がやむを得ないといえる事情が必要です。

03②処分の均衡:「あの人は解雇されていないのに」という主張

 実務上、社会通念上の相当性をめぐって最も頻繁に問題となるのが、他の社員との処分の均衡です。同じような状況にあるにもかかわらず、ある社員は解雇し、別の社員は軽い処分(譴責・減給など)にとどめるという対応をした場合、解雇された社員から「自分だけが不当に重い処分を受けた」という主張がなされます。裁判所・労働審判委員会は、こうした処分の不均衡を解雇の社会通念上の相当性を否定する方向で評価することがあります。

 「他の社員と比べる必要はない。この社員の問題行動が解雇理由になれば十分だ」という発想は不十分なケースがあります。類似の問題行動に対して軽い処分しかしてこなかったにもかかわらず、特定の社員だけを解雇することは、均衡を欠くとして相当性が否定されるリスクがあります。

 なお、全く同じ状況の社員が存在しないことも多く、処分の均衡は「まったく同じ行為・状況でなければ比較できない」というものではありません。類似した問題行動に対してどのような処分をしてきたかという過去の実績・傾向が、均衡の判断基準となります。過去の処分事例・他の社員への対応との均衡が取れているかどうかを、解雇前に必ず確認することが重要です。

04③使用者側の対応・落ち度:会社に責任がある場合の解雇は認められにくい

 使用者側の対応・落ち度も、社会通念上の相当性判断において重要な考慮要素です。例えば、業務の指示・指導が不明確であったために社員が業務をうまく遂行できなかった場合、あるいは会社が社員の能力向上のための教育・指導を怠った結果として能力不足が生じた場合などは、会社側の落ち度が認定され、解雇の相当性が否定されることがあります。

 「社員が悪い」という評価だけでなく、「会社は適切な対応を取ったか」という視点でも審査が行われます。会社側が十分な指導・教育・改善機会の付与を行ったことを示す記録があることが、社会通念上の相当性を支える上で重要です。

 社会通念上の相当性をめぐる紛争でよく見られるのは、次のようなパターンです。

・「同じような無断欠勤をした別の社員には譴責処分しかしていなかったが、気に入らない社員だったので解雇した。裁判で均衡を欠く不当解雇と認定された」
・「能力不足で解雇したが、そもそも会社が業務指示を曖昧にしていたことが指摘され、使用者側の落ち度があるとして解雇の相当性が否定された」

 いずれも、解雇前に弁護士へ相談していれば回避できた問題です。

05実務上の対策:解雇前に確認すべき3つのポイント

 社会通念上の相当性を確保するために、解雇前に次の3点を確認・準備しておくことをお勧めします。

① 反省の機会と改善の余地を十分に与えたか:注意指導を行い、改善期限を設定し、それでも改善されなかったという経緯が示せるかどうかを確認する
② 過去の処分事例との均衡が取れているか:同じような問題行動に対して過去にどのような処分をしてきたかを確認し、今回の解雇が著しく重い処分でないかを検討する
③ 使用者側に落ち度はないか:業務指示の明確性・教育機会の提供・管理体制の適切さなど、会社側の対応に問題がなかったかを客観的に確認する
経営上のポイント 普通解雇の社会通念上の相当性(労契法16条)は①労働者の情状②他の社員との処分の均衡③使用者側の対応・落ち度の3要素を総合考慮して「解雇がやむを得ない」と評価できるかを判断します。実務上は処分の不均衡と使用者の落ち度が特に問題になりやすく、解雇前に必ず確認が必要です。処分の均衡・使用者側の落ち度の有無も含めた相当性について、事前に弁護士に確認することをお勧めします。アドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

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弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年6月28日


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