問題社員118 言動が乱暴で勤務態度が悪く指導に従わない。

動画解説

本記事の内容は、代表弁護士 藤田進太郎が動画でも解説しています。「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)では、問題社員対応の実務を継続的に配信しています。

この記事の結論
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言動が乱暴で勤務態度が悪い社員への対応は、証拠集めより先に「行動を改めさせる」ことを軸に据えることが出発点

早め・具体的・継続的な指導を積み重ねれば、結果として証拠にもなります。

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事実に基づく面談指導を重ね、普段のマネジメントとの整合性を保ちながら、段階的に懲戒処分・退職・解雇を検討する

問題を放置してきた経緯があると、後の対応がかえって不利になり得る点にご留意ください。

 言動が乱暴で勤務態度が悪い社員が職場に存在すると、会社全体の秩序は想像以上に乱されます。単に扱いづらい社員がいるという水準の問題ではなく、周囲への連鎖を通じて職場環境そのものを悪化させる要因になり得る点を、正しく認識しておく必要があります。

 本記事では、言動が乱暴で勤務態度が悪い社員への対応について、会社経営者がどのような順序で判断すべきかを解説します。

01言動が乱暴な社員が職場に与える影響と、対応の基本姿勢

 乱暴な言動や不誠実な勤務態度は、周囲の社員に常にストレスを与え、職場の雰囲気を悪化させます。直接被害を受けていない社員であっても「居心地が悪い」という印象を持ちやすくなり、真面目な社員ほど転職を考え始めることも珍しくありません。問題社員を放置していると、会社が社員を守らない組織だと評価されてしまい、離職率や採用力の低下として表面化するだけでなく、後になって懲戒処分や解雇を行おうとした際、「これまで黙認していたではないか」と反論され、法的にも不利になりやすいという実務上の問題もあります。

 言動が乱暴で指導にも従わない社員が現れた場合、最初に持つべきなのは、処分をどうするかという発想ではなく、職場秩序を守り周囲の社員を守るために何を優先すべきかという視点です。問題行動の放置は事実上の黙認と同じ意味を持ち、後になって注意や処分を行っても「なぜ今さらなのか」という反発を招きやすくなります。注意指導、配置転換、書面対応、懲戒処分といった段階的な対応を、長期的なマネジメントの一環として冷静に積み重ねていく姿勢が求められます。

02「行動を改めさせる」ことを軸にした初期対応と面談指導

 早い段階から「裁判になったらどう使えるか」という証拠の観点ばかりを気にしてしまうと、肝心の注意指導が形式的になりがちです。初期段階で最も重視すべきなのは、問題のある言動や勤務態度を実際に改めさせることであり、早め・具体的・継続的に注意指導を行い、改善の機会を与えるという姿勢を軸に据えることが重要です。この姿勢で対応していれば、自然とメモや記録が残り、結果的に証拠にもなります。証拠の確保が中心的な課題になるのは、注意指導を重ねても改善が見られない場合や、懲戒処分・退職を検討する段階です。

 初期対応では、「一度注意したから終わり」と考えず、問題行動を指摘し改善を求めたうえで、その後の行動を必ず確認し、改善が見られなければ再度指導を行う継続的なプロセスとして捉える必要があります。特に重要なのが、面談による直接の指導です。メールやチャットだけの注意は情報量が少なく、本人にとって「軽く言われただけ」と受け止められがちです。会議室など業務から切り離された場で改まった形で話をすることは、それ自体が「本気の注意である」という強いメッセージになります。あわせて、感情に任せて叱るのではなく、業務上の問題として冷静に伝える姿勢を保つことが、無用な反発を防ぐことにつながります。

03事実に基づく具体的な指導と、対応方法の見極め

 面談での注意指導では、「言動が乱暴だ」「勤務態度が悪い」といった抽象的な表現に頼らないことが重要です。このタイプの社員の多くは、自分の行動を問題だと明確に認識していないことが少なくなく、抽象的な指摘は「自分を嫌っているから言っているだけではないか」と受け取られやすくなります。いつ、どこで、誰に対して、どのような言動をしたのか、その結果どのような影響が出たのかを、5W1Hを意識して具体的に伝えることで、本人は初めて何が問題なのかを理解しやすくなります。あわせて、本来どのような行動を取るべきだったのかを示すことで、改善の方向性が明確になります。事実に基づいた指導は、後に紛争となった場合にも、会社側の対応の合理性を裏付ける材料になります。

 「本人に考えさせることが成長につながる」という考え方は一般論として正しい場面もありますが、深刻な問題行動が続き、指導にも従わない社員に対しては、必ずしも有効とは限りません。半年や1年かけて対話を重ねても行動が改善しないのであれば、方法そのものを見直す段階に来ている可能性があります。最低限必要なのは、何が問題だったのかを事実に基づいてはっきり伝え、今後求められる具体的な行動基準を示すことです。比較的軽微な問題であり、これまでの勤務態度に大きな課題がない社員であれば、指摘したうえで考えさせるアプローチが有効な場合もあり、その社員の行動パターンや理解力に応じて対応を使い分けることが重要です。

04普段のマネジメントとの整合性・心構え・書面対応の実務

 注意指導を行う際に見落とされがちなのが、普段のマネジメントとの整合性です。問題行動を長期間黙認してきたにもかかわらず、ある日突然厳しい注意や処分を行うと、本人からは「今まで何も言われなかったのに、なぜ急に厳しくなるのか」と受け止められ、反発を招きやすくなります。人事評価との矛盾にも注意が必要で、重大な問題があるにもかかわらず「普通」以上の評価を付けていた場合、後になって問題社員だったと主張しても説得力を欠くことになります。日常のマネジメント段階から一貫した対応を積み重ねておくことが、後の厳重注意や懲戒処分の合理性を支えます。

 注意指導に臨む際は、逃げない姿勢を保ちつつ、過剰反応をしないことが重要です。人格否定や過去の出来事の蒸し返しは、指導の目的から外れ、対立を深める原因になります。事実関係を事前に整理し、伝える内容をまとめておくこと、必要に応じて事前にシミュレーションを行うことも、有効な準備といえます。口頭での注意指導を行っても改善が見られない場合や、行為の内容が比較的重い場合には、厳重注意書や顛末書、事情説明書といった書面による対応を検討します。書面には、いつ、どこで、誰に対して、どのような言動があったのかという事実を具体的に記載し、「始末書」という名称は懲戒処分と誤解されやすいため、目的に応じて名称を選ぶ配慮が求められます。書面を交付する場合も、いきなり渡すのではなく、面談で説明したうえで交付することが望ましい対応です。

05配置転換・懲戒処分・解雇を検討する際の判断基準

 注意指導や書面対応を行っても状況が改善しない場合、配置転換や役割の見直しも選択肢の一つになります。チームワークや対人対応が多く求められる業務では摩擦が生じやすいため、対人接触が比較的少ない業務への異動を検討する余地があります。異動先の上司の適性も重要で、問題社員への対応が苦手な管理職の下に配置すると、問題が再燃するおそれがあります。問題社員自身が管理職である場合には、管理職としての適格性そのものを見直し、一般職に戻すことも現実的な対応となります。

 注意指導、書面対応、配置転換などを重ねてもなお改善が見られない場合には、懲戒処分や退職、場合によっては解雇を検討することになります。懲戒処分は、比較的軽い処分から始め、改善が見られなければ重い処分へと進めていく段階的な対応が基本です。解雇には、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であることが求められ、解雇予告や解雇予告手当の支払いのみで有効性が担保されるわけではありません。注意指導や懲戒処分の積み重ねが重要になるのは、このためです。この段階に進む場合には、会社側の立場で助言できる弁護士に相談しながら、慎重に判断を進めることをお勧めします。

06よくある質問(FAQ)

Q. 乱暴な言動そのものを理由に、即座に解雇することは可能ですか。

重大な暴力行為等がない限り、一度の言動で即時解雇が認められることは実務上少ないといえます。まずは具体的事実を指摘して注意指導を行い、改善の機会を与えたという経過を記録として積み上げることが重要です。

Q. 指導のたびに反論され、最後は「ブラック企業だ」と言われます。

感情的に応酬するのではなく、業務命令として何を求めているのかを明確にすることをお勧めします。命令違反という客観的事実を積み重ねることで、本人の主観的な主張にかかわらず、正当な処分・対応の根拠を確保しやすくなります。

Q. 懲戒処分を出す際、注意すべき記載内容はありますか。

「態度が悪い」といった抽象的な理由ではなく、「〇月〇日の会議で上司に対し〇〇と発言した」という具体的事実を記載してください。これが不十分な場合、後に処分が無効と判断されるリスクが高まります。

経営上のポイント 言動が乱暴で勤務態度が悪い社員への対応は、証拠集めより先に「行動を改めさせる」ことを軸に据えることが出発点です。事実に基づく面談指導を継続的に重ね、普段のマネジメントとの整合性を保ちながら、配置転換・懲戒処分・退職・解雇を段階的に検討してください。放置してきた経緯があると後の対応が不利になり得るため、早めの着手をお勧めします。具体的な事情に応じて、実務で活用いただける方針をご案内します。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。職場秩序・問題社員対応でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月8日


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