問題社員 自分の考えに固執する。

動画解説

この記事の要点

自分の考えを持つこと自体は有益。しかし組織で決めた正当な決定には従ってもらう必要があり、まずは対話の機会を設ける

本人の言い分を聴取し、会社側も必要な説明を行う対話には、会社の判断を検証し、弱点を補う効果もある

対話が膠着状態に陥ったら、話し合いを打ち切り、組織として判断することが必要。判断から逃げてはならない

判断を先送りすると職場に混乱をもたらし、周囲の社員が迷惑を被る。経営者が守るべきは固執する社員一人ではなく、共に働く他の社員でもある

決定した方針に従わない社員には、業務命令(口頭・書面)、注意指導、懲戒処分と段階を踏んで対応する

就業時間内に社内で行われる事柄については、一定の合理性がある限り会社に決定権限がある。服装や言葉遣いも同様に指示できる

「自分の考えに固執する」という性質は、適性配置の問題として考慮できる。性質を踏まえた配置がトラブルの予防につながる

チームワークが必要な業務や上級管理職には向かないことが多い一方、その性質がプラスに働く業務に就ける工夫も考えられる

1. 自分の考えを持つこと自体は良いこと。しかし組織の決定には従ってもらう必要がある

一般論として、社員が自分の考えを持つこと自体は良いことです。自分の考えを持っているからこそ様々なアイデアが浮かび、これまで会社が気づかなかった視点を提供してくれるかもしれません。会社の役に立つ可能性を秘めた性質であるとも言えます。

しかし、組織で動く以上、組織で決めた正当な決定には従ってもらう必要があります。いつまでも自分の考えに固執し、会社が向かっている方向と同じ方向を向いてくれないようでは、業務の遂行に支障が生じ、企業秩序の維持も困難になってしまいます。

そこで本記事では、自分の考えに固執する社員にどのような手順で対応すべきか、実務上のポイントを順に解説します。

2. まずは時間を取って対話する

自分の考えに固執する社員への対応の第一歩は、時間を取って対話することです。

もっとも、最近十分に話し合ったばかりの事項を蒸し返してくるような場合にまで、その都度改めて話し合いに応じる必要はありません。そうでないのであれば、まずは会議室などに本人を呼び、本人の言い分をよく聴取した上で、会社側からも必要な説明を行い、それに対する本人の考えをさらに聞くといった対話を試みるべきでしょう。

対話には会社側にとってもメリットがある

  • 本人の言い分を聞くことで、会社の判断が正しかったことを確認できる場合がある
  • 会社の方針に弱点があれば、それを発見して補うことができる
  • 本人の言い分を聞かずに一方的に押さえつけたという反発・不満を防ぎ、後のトラブルを予防できる

このように、対話は単に本人を説得するための手続ではなく、会社の判断を検証し、より強い会社を作るための機会でもあります。会社や上司と異なる考えを述べてくる社員がいた場合、少なくとも最初は、しっかり時間を取って話をしてみることをお勧めします。

3. 対話が膠着状態に陥った場合は、話し合いを打ち切る判断も必要

他方で、合理性のない考えに固執し、既に十分に説明した事項を何度も蒸し返してくるなど、いくら対話をしても膠着状態に陥り、それ以上話し合っても生産性がない状態になることがあります。

本人が納得しない限り話し合いを打ち切れないという状態に陥っているのであれば、どのような話の仕方をすべきか、どのタイミングで話し合いを打ち切るべきかを含めて、弁護士に相談することをお勧めします。相手が同意するまで話し合いを続けるというやり方は、一定程度話し合いが成り立つ相手でなければ機能しません。全く異なる価値観や判断基準を持っている相手の場合、話し合いだけで解決しようとすると、混乱した状態がいつまでも続くことになりかねないからです。

4. 組織として判断する。判断から逃げてはならない

対話をしても膠着状態から抜け出せない場合は、組織としてしっかり判断することが重要になります。話し合いが大事であることと、どこかで判断しなければならないことは、矛盾せず両立します。

どこかの時点で会社としての方針を明確に決定し、「この方針に従ってください」と示さなければなりません。これができないと、職場に混乱をもたらし、周囲の社員が迷惑を被ることになります。「社長は頼りない」「物事を決められない」と思われてしまう原因にもなります。

「社員に優しくありたい」という考え方の履き違えに注意

会社が雇用している労働者は、自分の考えに固執する社員一人ではありません。その社員にばかり話を合わせていては、他の社員の業務や職場環境に悪影響が及びます。経営者が守らなければならないのは、共に働く他の社員たちでもあります。どこかでしっかり方針を決めなければ、他の社員を守ることにはなりません。「社員に優しくあろう」という考え方が、一部の社員への過度な配慮という誤った方向に向かわないよう注意が必要です。

5. 決定した方針に従わない社員への対応:業務命令・注意指導・懲戒処分

経営者が方針を明確に決定したにもかかわらず、従わない社員も存在します。その場合は、段階を踏んで対応していくことになります。

方針に従わない社員への段階的対応

① 業務命令 仕事のやり方に関する事項であれば、業務命令として「このやり方で行うこと」を明確に命じる。最初は口頭でもよいが、従うかどうか怪しい場合は書面で業務命令を出すことも検討する
② 注意指導 業務命令に従わない場合は注意指導を行う。改善しない場合は書面での注意指導・厳重注意により、改善を促すとともに証拠を確保する
③ 懲戒処分 注意指導を重ねても改善しない場合は、けん責等の懲戒処分を検討する。懲戒処分を行うには就業規則上の根拠規定が必要であり、処分の重さは行為の性質・態様等に照らして相当なものでなければならない(労働契約法15条)

仕事のやり方以外の事項、例えばだらしない服装で顧客と面談する、乱暴な言葉遣いをするといった問題についても、同様の対応が可能です。本人が「ネクタイなどしなくても構わないだろう」と考えていたとしても、顧客と面談する際はネクタイを着用することが会社の方針なのであれば、それに従うよう指示することができます。

就業時間内に社内(業務上)で行われる事柄については、会社に広範な決定権限があります。不合理な指示は許されませんが、一定の合理性がある指示であれば「このやり方で行うように」と決めることができ、従わない場合には注意指導や厳重注意を行い、それでも改善しなければ懲戒処分に発展することも十分あり得ます。

注意指導や懲戒処分の具体的な進め方については、問題社員への注意指導の総合解説および懲戒処分・退職勧奨・解雇の総合解説もご参照ください。

6. 判断に迷う「ボーダーライン」の事案こそ弁護士に相談すべき

誰が見ても明らかに問題のある行動であれば、対処は比較的容易です。しかし、実際に相談が多いのは微妙な事案です。周囲の誰もが問題だと感じてはいるものの、明らかに許されないとまでは言い切れない、ボーダーライン付近の行動にどう対処すべきか悩まれている経営者の方は少なくありません。

このような事案の見極めは容易ではありません。一般論としては当てはまりそうな考え方が、自社の具体的な事案には当てはまらないということもよくあります。判断に迷う場合は、事案に応じた適切な対応を取るためにも、弁護士に相談することをお勧めします。

7. 適性配置の問題として考える

自分の考えに固執するという本人の性質は、適性配置の問題として考慮することもできます。

柔軟に対応できるか、自分の考えを貫くかというのは、本人の適性のようなものであり、長所にもなり得れば短所にもなり得るものです。「自分の考えを貫く」と言えば長所のように聞こえますが、「固執する」と評価されるほどの程度に至ると、短所として現れるケースが多いと言わざるを得ません。

配置を考える際の視点

  • チームワークが必要とされる共同作業の多い業務は、一般的に難しいことが多い
  • 経営者の方針に忠実に従うことが求められる上級管理職には向かないことが多い
  • 困難があっても方針を変えずに突き進むことが求められる業務があるのであれば、その性質がプラスに働く可能性もある
  • 全ての事項に固執するのではなく、特定の分野・事項にのみ固執するタイプの場合もあるため、安易な一般化は避ける

本人がどのような性質を持っているかがある程度分かっているのであれば、業務や役割を割り当てる際に、その傾向がプラスに働くのかマイナスに働くのかを考えて配置することで、トラブルを未然に防げる可能性があります。自分の考えに固執する傾向があることを前提に、配置を検討していくとよいでしょう。

8. まとめ

  1. 自分の考えを持つこと自体は良いこと。しかし組織で決めた正当な決定には従ってもらう必要がある
  2. まずは時間を取って対話する。対話には会社の判断を検証し、弱点を補う効果もある
  3. 対話が膠着状態に陥ったら、話し合いを打ち切る判断も必要。打ち切りのタイミングは弁護士に相談できる
  4. 組織として判断し、方針を明確に示す。判断の先送りは職場の混乱を招き、他の社員を守ることにならない
  5. 方針に従わない場合は、業務命令(口頭・書面)、注意指導、懲戒処分と段階を踏んで対応する
  6. 判断に迷うボーダーラインの事案こそ、事案に応じた対応を弁護士に相談する
  7. 本人の性質を踏まえた適性配置により、トラブルを未然に防ぐ

自分の考えに固執する社員への対応でお悩みの経営者の皆様は、ぜひ弁護士にご相談ください。

弁護士 藤田 進太郎

監修者弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 業務命令に従わない社員を、すぐに解雇することはできますか。

A. 業務命令に従わないという事実だけで直ちに解雇すると、無効と判断されるリスクが高いと言わざるを得ません。解雇が有効となるためには、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる必要があります(労働契約法16条)。まずは口頭・書面での業務命令、注意指導、けん責等の軽い懲戒処分と段階を踏み、改善の機会を与えても改善しないことを証拠に基づいて示せる状態を作ることが重要です。解雇や退職勧奨を検討する段階では、必ず事前に弁護士に相談してください。

Q2. 服装や言葉遣いのような事柄まで、会社が指示することはできますか。

A. 就業時間内に業務として行われる事柄については、会社に広範な決定権限があります。顧客と面談する際の服装、社内での言葉遣いなどについても、業務上の必要性に照らして一定の合理性がある指示であれば、従うよう命じることができます。従わない場合は注意指導を行い、改善しなければ懲戒処分を検討することになります。ただし、業務との関連性がなく合理性を欠く指示は許されませんので、指示の内容に迷う場合は弁護士に相談してください。

Q3. 自分の考えに固執する社員を、別の部署に配置転換することはできますか。

A. 就業規則等に配転を命じ得る根拠規定があり、職種や勤務地を限定する合意がない場合、会社には配転命令について比較的広い裁量が認められています。もっとも、業務上の必要性がない場合や、不当な動機・目的による場合、労働者に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合には、配転命令が権利の濫用として無効となることがあります。本人の性質と業務の適合性という業務上の必要性を踏まえて検討し、具体的な進め方は弁護士に相談してください。配転命令を拒否された場合の対応については、配置転換拒否社員の解雇もご参照ください。

最終更新日:2026年7月17日


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