問題社員 職場で感情的にキレる。

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この記事の要点

職場で感情的にキレる社員を放置してはならない。対応が面倒だという理由で先送りにされがちだが、最終的に社員を守る責任は経営者にある

信頼関係が損なわれ、職場の心理的安全性が失われることで、周囲の社員の離職にもつながりかねない

対応能力のない管理職に無理にやらせてはならない。対応できる人物を配置するか、経営者自身が動く覚悟を持つ

プレイヤーとしての実績のみで管理職に登用された者に対応させると、対処しきれず本人が疲弊し、被害が拡大する危険がある

注意指導は会議室で速やかに、事実ベースで行う。「職場で感情的になったこと自体」が問題行動であることを明確に伝える

対応する側は逃げずに、かつ冷静に対応することが求められる。感情的な応酬は会社側の信用を損なう

誰に対して感情的になりやすいかという傾向を見極め、配置に反映させることが、トラブルの再発防止につながる

顧客対応や部下に対する態度など、対人関係のパターンを具体的に観察することが重要

1. 職場で感情的にキレる社員を放置してはならない理由

職場で感情的にキレやすい社員がいると、周囲は次第にその社員を信頼できなくなっていきます。いつどのようなきっかけで感情を爆発させるか分からず、顧客との会話の中で暴言を吐いてしまう可能性も否定できません。一緒に働く社員たちは常に緊張を強いられ、職場の心理的安全性が損なわれてしまいます。

このような状態が続くと、職場の雰囲気そのものが悪化し、他の社員が「こんな雰囲気の職場で働くよりも、他の会社に移った方がよい」と考えるようになりかねません。そこで本記事では、職場で感情的にキレる社員への対処法について解説します。

最も重要なのは、この問題を放置しないということです。当たり前のことのように思われるかもしれませんが、問題が深刻化している職場ほど、実際には放置されがちです。対応すること自体が心理的な負担を伴い、話しても改善しない相手であれば、注意する側が嫌な思いをするだけで効果が上がらないと感じてしまうためです。

しかし、最終的にこの問題に対応すべきは会社経営者です。経営者は、共に働く社員たちを守らなければなりません。自ら対応するか、あるいは該当する部門を任せている管理職に対応させるかを問わず、行動を起こしてこの状態を解消していく必要があります。

2. なぜ管理職は放置しがちなのか

感情的にキレる社員への対応は、管理職の立場でも放置されがちです。その理由としては、次のようなものが挙げられます。

管理職が対応を避ける主な理由

  • 自分に矛先が向くことを避けたいという意識から、対応を先送りにしてしまう
  • 何とかしなければならないと思いつつも、手に負えないという状態に陥っている
  • 対人関係のマネジメント能力を基準とせず、プレイヤーとしての実績や在籍年数を理由に管理職へ登用された結果、対応の経験・能力が不足している

マネジメント能力が高い人物を管理職に配置していれば、対応できる可能性は高くなります。しかし、マネジメント能力よりもプレイヤーとしての成績や在職年数を理由に管理職に登用された場合、このような対応困難な相手に直面すると、手も足も出ないという状況に陥ることが少なくありません。その結果、同じ部門で働く他の社員が受ける被害はさらに拡大してしまいます。

3. 対応能力のある人物に対応させる。無理にやらせてはならない

だからこそ、経営者の出番となります。経営者自らが対応することも一つの選択肢ですが、自ら対応しない場合は、このような対応困難な相手にも対処できるマネジメント能力の高い人物を管理職として配置する、あるいは人事担当者や他部門からの応援を得てチームで対応するなど、しっかり対応できる体制を整えることが重要です。

対応能力のない管理職に無理強いすることの危険性

対応能力のない管理職や先輩社員に「何とかしろ」と無理に指示すると、対応を担当した本人がキャパシティを超える負担を抱え込み、精神的に追い詰められてしまうことがあります。うまく対応できず、心身に不調をきたして退職に至るという事態も起こり得ます。「管理職なのだからやりなさい」というだけでは足りません。対応能力のある人物を管理職に配置する、あるいは対応能力のある人物を応援として配置することが必要です。

社内に対応できる人材が見当たらない場合は、最終的には経営者自身が動くほかありません。中小企業においては、経営者が自ら対応せざるを得ない場面が少なくないのが実情です。対応に不安がある場合は、早い段階で弁護士に相談し、共に対応にあたることをお勧めします。

4. 注意指導の進め方:会議室で速やかに、事実ベースで行う

具体的な対応としては、まず基本に忠実な注意指導を徹底することが出発点になります。遠回しな言い方や、その場を取り繕うだけの注意では、本人に響きません。感情的になった場面があれば、速やかに会議室に呼び、時間を取ってしっかりと注意指導を行ってください。

本人が感情的になった原因について議論することも意味がありますが、それ以上に、「職場で感情的になったこと自体が問題行動である」という点を明確に言い聞かせることが重要です。会議室に呼んで話をすることには、他の社員の業務を妨げないという効果もあります。感情的な言動が飛び交う職場では、周囲の社員が仕事に集中できません。他の社員が業務に専念できる環境を保つためにも、当事者を個別に呼んで話すようにしましょう。

事実ベースの注意指導の進め方

「あなたは先ほど、どこどこの部屋で、このような発言をしましたね」というように、いつ・どこで・何を言ったかという具体的な事実を、周囲の社員が現認していることを前提に指摘します。発言や態度の中身の当否について議論することも余地があればよいですが、まず第一に伝えるべきは、職場で大声を出す・感情的になること自体が、周囲の社員や職場環境に悪影響を及ぼすマイナスの行動であるという点です。

感情的になったことには理由があると本人が主張することもあります。事情によっては一定程度もっともな理由がある場合もありますが、理由があるとしても、職場で感情的に騒ぐことが許されるわけではないという整理も可能です。事情に応じた対応が必要になりますので、判断に迷う場合は弁護士に相談してください。

5. 対応する側の心構え:逃げない、そして冷静に

注意指導を行う際には、「逃げない」ことと「冷静に対応する」ことの両方が求められます。一見相反するように見えますが、この二つは両立すべき姿勢です。

対応する側が感情的になってしまうと、それだけで信頼を失います。堂々として逃げず、かつ冷静に対応する経営者と、感情的にまくし立てて感情的に応酬してしまう経営者とでは、周囲の社員がどちらを信頼するかは明らかです。冷静に、逃げずに対応することで、他の社員からの信頼も得やすくなり、その後の経営・人事管理も進めやすくなります。

なお、感情的な言動が録音され、パワーハラスメントに該当するといった主張がなされるリスクもありますので、対応する側の発言内容にも注意が必要です。落ち着いた対応を心がけることは、リスク管理の観点からも重要です。

6. 改善が見られない場合:厳重注意書・懲戒処分通知書の交付

注意指導を重ねても本人が自らの行動を問題であると認識せず、客観的に見て看過できない域に達していると判断される場合には、厳重注意書を交付する、あるいは懲戒処分通知書を交付するといった対応を検討することになります。

感情的にキレやすい傾向のある相手はトラブルになりやすく、対応する会社側もつい売り言葉に買い言葉のような対応をしてしまい、後で相手方から揚げ足を取られるということも起こり得ます。注意書や通知書に感情的な表現が混入していたり、内容が法的に不十分であったりすると、後の紛争で会社側が不利になる危険があります。書面の作成や交付の手順について不安がある場合は、弁護士に相談の上で進めることをお勧めします。

7. 対人関係の傾向を踏まえた配置の見直し

職場で感情的にキレやすい傾向があると分かっている社員については、そのような性質があっても支障の少ない業務に配置する、あるいはいつ感情的になっても対応できる人員を近くに配置するといった工夫も検討できます。

感情的になりやすいといっても、どのような状況で感情が高ぶるかは人によって異なります。一律に判断するのではなく、その社員がどのような相手・状況で感情的になりやすいのかを具体的に観察することが重要です。

観察・配置検討のポイント

  • 顧客相手にも感情的になる可能性があるのであれば、顧客対応業務への配置は慎重に検討する
  • 部下に対してのみ感情的になりやすい傾向があるのであれば、管理職への登用は避けた方が無難な場合がある
  • 同僚や目上の者に対しては落ち着いて対応できるのであれば、業務の内容によっては大きな支障が生じない場合もある

注意指導を重ねる中で改善が見られれば、担当業務の見直しを検討することも可能です。対人関係のパターンをよく観察し、事情に応じた柔軟な対応を心がけてください。判断に迷う場合は、弁護士に相談することをお勧めします。

8. まとめ

  1. 職場で感情的にキレる社員を放置してはならない。最終的に社員を守る責任は経営者にある
  2. 対応能力のない管理職に無理強いしない。対応できる人物を配置するか、対応困難な場合は経営者自身が動く
  3. 注意指導は会議室で速やかに、事実ベースで行う。感情的になったこと自体が問題行動であることを明確に伝える
  4. 対応する側は逃げず、かつ冷静に対応する。感情的な応酬は会社側の信用を損なう
  5. 改善が見られない場合は厳重注意書・懲戒処分通知書の交付を検討する。書面作成は弁護士に相談する
  6. 対人関係の傾向を観察し、配置に反映させる。顧客対応や管理職への登用は慎重に判断する

職場で感情的にキレる社員への対応でお悩みの経営者の皆様は、ぜひ弁護士にご相談ください。

弁護士 藤田 進太郎

監修者弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 感情的にキレる社員を、注意指導なしにいきなり懲戒処分にすることはできますか。

A. 懲戒処分を行うには就業規則上の根拠規定が必要であり、処分の内容は行為の性質・態様・回数、会社への影響等に照らして相当なものでなければなりません(労働契約法15条)。いきなり重い処分を科すと、相当性を欠くとして無効と判断されるリスクが高いです。原則として、事実ベースの注意指導を重ね、改善の機会を与えた上で、それでも改善が見られない場合に厳重注意や懲戒処分へと段階を進めることが基本になります。ただし、暴言や暴力の程度が著しい場合は、その時点で重い処分が相当と評価されることもありますので、事案の内容に応じて弁護士に相談してください。

Q2. 注意指導をする際に、こちらの発言がパワーハラスメントだと言われないか心配です。

A. 業務上必要かつ相当な範囲で行われる注意指導は、労働施策総合推進法上のパワーハラスメントには該当しません。もっとも、人格を否定するような発言や、必要以上に威圧的な言動は、相当性を欠くと評価されるおそれがあります。事実に基づいて、感情的にならず、問題となる行動そのものを具体的に指摘するという進め方を徹底することが、後のリスクを避ける上で重要です。書面の文言や話す手順に不安がある場合は、事前に弁護士に相談することをお勧めします。

Q3. 感情的にキレやすい社員を、管理職から降格させることはできますか。

A. 人事権の行使としての降格は、就業規則等に根拠があり、業務上の必要性に基づいて行われる限り、比較的広い裁量が認められています。もっとも、不当な動機・目的による場合や、社会通念上著しく相当性を欠く場合には、権利の濫用として無効となることがあります。管理職としての適格性に疑義がある事実関係を具体的に整理した上で、降格の理由や手続について弁護士に相談し、進めることをお勧めします。

最終更新日:2026年7月17日


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