SNSで会社や上司を誹謗中傷する。
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SNSでの誹謗中傷投稿は短時間で拡散するため、処分の検討より先に、被害の拡大を止めることを優先する 証拠を確保したうえで、投稿者との対話を通じて早期に投稿をやめさせることが基本方針になります。 |
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懲戒処分の要否は、名誉・信用への具体的な影響と就業規則の定めに照らして段階的に判断する 日常的なルール整備と教育こそが、会社の名誉と信用を守る最も確実な予防策になります。 |
目次
社員がSNS上で会社や上司を誹謗中傷する投稿を行った場合、その影響は想像以上に大きなものになり得ます。これは社員個人の不満表明にとどまらず、社内の雰囲気や対外的な信用、採用活動にまで波及する経営上の課題として捉える必要があります。
本記事では、社員によるSNSでの誹謗中傷への対策について、会社経営者がどのような順序で判断すべきかを解説します。
01SNSでの誹謗中傷が会社に与える影響と、初動対応の基本方針
SNS上の投稿は真実かどうかにかかわらず目に触れやすく、社内の雰囲気を悪化させるだけでなく、取引先や顧客の信用、さらには採用活動にも影響を及ぼすおそれがあります。情報が短時間で拡散するというSNSの特性上、放置すれば被害が拡大し続け、後から対応しようとしても手遅れになりかねません。
誹謗中傷と思われる投稿を発見した際、まず優先すべきは「誰が投稿したか」「どう処分するか」ではなく、被害の拡大を止めることです。懲戒処分や損害賠償請求といった対応は、その後に検討すべき問題です。初動の段階でいきなり処分の話を持ち出してしまうと、投稿者が身構え、投稿を消さずにかえって意地になったり、証拠を隠そうとしたりするおそれがあります。
初動対応の目的は、できるだけ早く投稿をやめさせ、可能であれば削除させることです。まず当該投稿の画面を保存するなどして証拠を確保したうえで、投稿者が特定できている場合には早い段階で面談の場を設けます。いきなり非難したり処分の話を持ち出したりする必要はなく、「なぜこのような投稿をしたのか」を落ち着いて確認することが重要です。軽い気持ちで投稿している社員も少なくなく、話をするだけで投稿を取り下げるケースも見られます。
02事情聴取の進め方と、投稿が問題となる理由の説明
初動対応として投稿をやめさせる動きを進めつつ、事情聴取を行います。事情聴取の目的は、感情的に非を認めさせることではなく、事実関係を正確に把握し、その後の対応判断に耐えうる材料を集めることにあります。投稿がいつ、どのアカウントから、どのような内容で行われたのかという基本的な事実に加え、投稿の動機や背景も確認してください。強く責め立てると防御的になり事実を隠す原因になるため、淡々と事実確認に徹する姿勢が望ましいといえます。
あわせて、なぜそのSNS投稿が問題なのかを本人に説明することも重要です。投稿した社員自身が問題性を自覚していないケースも少なくありません。会社や上司を誹謗中傷する投稿は、会社の名誉や信用を毀損する可能性があること、労働契約上、社員には会社に不必要な損害を与えないよう配慮する義務があり、こうした投稿はこの義務に反すると評価され得ることを、感情論ではなく理屈として伝える必要があります。特に勤務時間中の投稿については、内容にかかわらず職務専念義務との関係も問題になり得ます。「気持ちは理解できるが、その表現方法は認められない」という線引きを丁寧に伝えることが、再発防止と、後に懲戒処分等を検討する場合の対応の正当性の両方を支えることになります。
03投稿者を特定できない場合の対応と、不満を受け止める工夫
投稿内容から特定の社員が疑われるものの、決定的に特定できないケースも少なくありません。このような場合でも、「特定できないから何もしない」という対応は避けるべきです。関与している可能性のある社員に個別に面談を行い、「会社として問題のある投稿が確認されており、調査している」という事実を伝えるだけでも、一定の抑止効果が期待できます。朝礼や社内通知で注意喚起を行うことも、被害拡大防止という点で有効です。犯人の特定にこだわりすぎず、問題のある投稿を止めるという視点を最優先に行動することが重要です。
社員がSNSで会社や上司を誹謗中傷する背景には、多くの場合、会社や上司に対する何らかの不満があります。不満を持つこと自体を問題視するのではなく、その表現方法としてSNSという不適切な手段が選ばれてしまう点に着目する必要があります。「不満があるときは、誰に、どのように伝えればよいのか」を明確に示し、上司への相談や人事への申し出、あるいは会社経営者自身が話を聞く窓口になるなど、自社の規模や体制に応じた相談ルートを整備し、社員に周知しておくことが有効です。不満を正面から受け止めてもらえるという安心感があれば、SNSでの発信という選択肢を避ける動機にもつながります。
04懲戒処分の判断基準と、名誉毀損・信用毀損の法的評価
SNSでの誹謗中傷行為が確認された場合、懲戒処分を行うべきか、行うとすればどの程度の処分が相当かという判断が必要になります。判断の前提として重要なのは、その投稿が会社の名誉・信用や企業秩序にどの程度の悪影響を与えたのかという点です。投稿内容が虚偽で悪質であり、拡散の範囲が広いほど重い処分が検討対象となる一方、限定的な表現や影響が軽微な場合には、厳重注意など比較的軽い対応にとどめることが相当とされる場合もあります。投稿の経緯や態様、過去に同様の指導や処分を受けた履歴の有無もあわせて考慮し、就業規則の定めとの整合性を必ず確認する必要があります。就業規則の定めを超える処分は、内容の相当性にかかわらず無効と判断されるリスクがあります。
懲戒処分や損害賠償請求を検討する際には、投稿内容が法的に名誉毀損や信用毀損に当たるのかを整理する必要があります。名誉毀損・信用毀損に当たるかどうかは、その投稿が対象者の社会的評価を低下させるものかどうかという観点から、一般の人が通常の注意力で読んだ場合にどう受け取るかを基準に判断されます。なお、会社としての信用毀損については会社自身が、上司個人に対する名誉毀損についてはご本人が、それぞれ請求主体となる点にも留意が必要です。事実の指摘か意見・論評かによっても評価は異なり、事実を摘示する投稿ではその真実性や、真実と信じたことについて相当な理由があるかが問題となります。個別事情に大きく左右される分野であるため、違法性の判断に迷う場合には、早い段階で弁護士に相談することをお勧めします。
05損害賠償請求の現実的な限界と、日常的な予防策
SNS上の投稿が名誉・信用を侵害すると評価されれば、不法行為として損害賠償請求が認められる可能性がありますが、その現実的な限界も理解しておく必要があります。仮に一定額の賠償が認められたとしても、SNSで低下した信用や評判を金銭で完全に回復することは困難な場合が多く、時間やコストをかけて裁判を行った結果、得られるものが限定的であることも少なくありません。加えて、訴訟提起によってかえって注目を集め、誹謗中傷の内容が再拡散するリスクにも留意が必要です。多くの場合、早期に投稿を止めさせ、再発防止策を講じることの方が、実務的にも合理的な対応となります。
最も力を入れるべきは、事後対応よりも予防です。就業規則や社内ガイドラインにおいて、SNS上で会社や上司、同僚を誹謗中傷する行為は許されないこと、名誉・信用を害する投稿が懲戒の対象となり得ることを明確に定めておくとともに、研修やミーティングの場で繰り返し注意喚起を行い、日常的に意識を浸透させることが重要です。多くの問題投稿は、強い悪意よりも軽い気持ちから生じているため、教育の効果は決して小さくありません。会社としてSNS問題に真剣に向き合う姿勢を示すこと自体が、抑止力として機能します。
06よくある質問(FAQ)
Q. 社員が匿名アカウントで誹謗中傷をしていますが、特定できない場合でも注意喚起はすべきですか。
はい、行うことをお勧めします。犯人を特定することと被害拡大を防ぐことは別の問題です。会社として問題投稿を把握し、調査を行っている姿勢を全社に示すことが、投稿の削除や新たな投稿の抑止につながります。
Q. SNSに不満を書いた社員に対し、即座に懲戒解雇をすることは可能ですか。
一度の投稿で直ちに懲戒解雇することは、実務上難しい場合が多いといえます。内容の悪質性、拡散範囲、過去の指導歴などを総合的に判断する必要があり、まずは事実確認と厳重注意を行い、対応の経過を記録として積み上げることが重要です。
Q. 損害賠償請求をすれば、低下した信用を金銭で取り戻せますか。
法的に賠償が認められる可能性はありますが、失われた信用や評判を金銭で完全に回復することは現実的ではありません。裁判にはコストと時間もかかるため、早期の削除要請や再発防止策の構築に注力する方が経営上合理的な場合が多いといえます。
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。SNSトラブル・懲戒処分への対応でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
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最終更新日:2026年7月8日