降格にはどのような種類がありますか。
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降格は、人事上の措置としての降格と懲戒処分としての降格に大別される 降格に法律上の定義はなく多義的ですが、一般的には、労働契約上の根拠の違いに着目して、人事上の措置としての降格、懲戒処分としての降格に分類されます。 |
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人事上の降格も、対象となる制度によって性質が異なる 人事上の措置としての降格には、職位・役職の引下げ、職能資格制度上の等級の引下げ、職務等級制度上の等級の引下げなどがあり、それぞれ制度上の位置づけが異なります。 |
目次
「降格」という言葉は日常的によく使われますが、法律上の定義はなく、その意味内容は文脈によって様々です。降格を検討する際には、まず、どの種類の降格を行おうとしているのかを正確に把握することが出発点になります。
会社側専門の弁護士の立場から、降格の種類とそれぞれの制度上の位置づけを解説します。
01降格の大分類(人事上の措置・懲戒処分)
降格に関する法律上の定義はなく、その意味内容は多義的ではありますが、一般的には、労働契約上の根拠の違いに着目して、人事上の措置としての降格と、懲戒処分としての降格に分類されます。前者は、会社の人事権の行使として行われるものであり、後者は、就業規則の懲戒規定に基づき、非違行為に対する制裁として行われるものです。両者は根拠となる法的性質が異なるため、それぞれ求められる要件や、有効性の判断枠組みも異なります。
02職位・役職の引下げ
人事上の措置としての降格の中でも、まず挙げられるのが、職位や役職の引下げです。たとえば、課長職から係長職へ役職を引き下げる場合のように、降格が一定の職位や役職を解くことを指す場合があります。これは、組織上のポストの変更にあたり、後述する資格・等級の変動とは区別して考える必要があります。
03職能資格制度上の等級の引下げ
また、職能資格制度上の資格を上級職から中級職に引き下げる場合のように、降格が職能資格制度上の資格や等級を引き下げることを指す場合もあります。職能資格制度とは、従業員が持つ能力に応じて資格・等級を定める制度をいいます。ここでいう「能力」とは、当該企業内で職務を遂行するために蓄積された能力を指しますが、勤続年数、学歴、年齢といった属人的な要素も考慮して格付けされる場合が多くあります。一般職・中級職・上級職といった資格のほか、1級・2級・3級…といった等級が定められ、基本給の全部または相当部分が、これらの資格・等級に応じて定められることがあります。
この資格・等級は、あくまで「能力」を基準とするものであり、「成果」を基準とするものではないため、本来、資格等級が下がることは予定されていません。また、資格・等級と職位は、必ずしも厳密に対応しているとは限りません。そのため、職位のみを引き下げる場合や、資格・等級を引き下げる場合が、それぞれ別個に考えられることになります。
04職務等級制度・役割等級制度上の等級の引下げ
降格は、職務等級制度上、営業次長職に位置付けていた者を、営業課長職に位置付ける場合のように、職務等級制度上の等級を引き下げることを指す場合もあります。職能資格制度が「能力」を基準とするのに対し、職務等級制度は、担当する「職務」そのものの価値に応じて等級を定める制度です。
また、職務等級制度と類似する制度として、役割等級制度があります。役割等級制度とは、特定の職務ではなく、従業員が果たすべき役割を設定し、その役割を担う労働者に同一の処遇を行う制度です。職務の厳密な定義付けや職務価値の評価という煩雑さを避けることができるとされており、この制度のもとでも、等級の引下げという場面が考えられます。
05給与等級のみの引下げ(賃金減額の問題)
職能や職務とは無関係に、給与等級に従って賃金が定められているケースで、この給与等級を引き下げて賃金を下げる場合もあります。もっとも、これは実質的には賃金の変動の問題であり、「降格」という枠組みよりも、賃金減額が有効かどうかという視点で考えるべきです。等級の名称が変わっていても、実態が単なる賃金の減額にすぎない場合には、賃金減額に関する判断基準(就業規則の不利益変更の合理性、個別同意の有無等)で検討する必要があります。
06会社側が押さえておくべき視点
会社側が降格を検討する際には、まず、これから行おうとしている降格が、どの種類に当たるのかを正確に整理することが重要です。職位・役職の引下げなのか、職能資格制度上の等級の引下げなのか、職務等級制度・役割等級制度上の等級の引下げなのか、あるいは単なる賃金の減額なのかによって、必要となる法的根拠や、有効性の判断枠組みが異なるためです。
特に、職能資格制度上の資格・等級は、本来「能力」を基準とするものであり、引下げが予定されていない制度設計になっていることが多い点には注意が必要です。この場合、資格・等級の引下げを行うには、就業規則にその旨の明確な根拠規定を置いておくことが重要になります。降格を検討する際には、自社がどの人事制度を採用しているかを踏まえ、根拠となる規定の有無・内容を確認することから始めるべきです。
07よくある質問(FAQ)
Q. 「降格」には、どのような種類がありますか。
大きくは、人事上の措置としての降格と懲戒処分としての降格に分かれます。人事上の降格は、さらに職位・役職の引下げ、職能資格制度上の等級の引下げ、職務等級制度・役割等級制度上の等級の引下げなどに分類されます。
Q. 職能資格制度上の等級は、簡単に引き下げられますか。
簡単には引き下げられません。職能資格制度上の資格・等級は「能力」を基準とするもので、本来、引下げが予定されていない制度設計になっていることが多いためです。就業規則に明確な根拠規定が必要です。
Q. 給与等級だけを引き下げて賃金を下げることも「降格」ですか。
名称は降格でも、実質的には賃金変動の問題として、賃金減額が有効かどうかの視点で検討すべきです。就業規則の不利益変更の合理性や個別同意の有無が問題になります。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。降格や人事制度の設計でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
最終更新日:2026年7月13日