企画業務型裁量労働制(労基法第38条の4)は、当初「事業運営上の重要な決定が行われる事業場」に限定されていましたが、平成16年(2004年)1月1日の改正により、この事業場限定が撤廃されました。現在は、対象業務が存在する事業場であれば制度の導入が可能となっています。本記事では、制度の沿革と対象事業場の考え方について、会社側弁護士が解説します。

01企画業務型裁量労働制とは

企画業務型裁量労働制(労働基準法第38条の4)とは、企業の中枢部門において企画・立案・調査・分析などの業務に従事するホワイトカラー労働者に適用できる、労働時間のみなし制度です。平成10年(1998年)の労働基準法改正で導入されました。

この制度の特徴は、専門業務型裁量労働制とは異なり、労使委員会の決議によって運用される点にあります。労使委員会の委員の5分の4以上の多数決により決議し、行政官庁に届け出ることで適用が可能となります(労基法第38条の4第1項・第2項)。

ポイント:企画業務型裁量労働制は、専門業務型と異なり、労使委員会決議が必要となります。また、対象業務の定義・対象事業場の範囲も制度導入の重要な要件となります。

02改正前の適用対象事業場(平成10年〜平成15年)

企画業務型裁量労働制が導入された当初(平成10年改正)、適用できる事業場は「事業運営上の重要な決定が行われる事業場」に限定されていました。改正前の条文(労基法旧第38条の4)には、この事業場において労使委員会が設置された場合に適用できる旨が定められていました。

この「事業運営上の重要な決定が行われる事業場」という要件の趣旨は、本来、企業の中枢機能を担う部門にのみ裁量労働制を適用するという考え方に基づくものでした。しかし、実務上は「どの事業場が重要な決定を行う事業場か」の判断が困難であり、適用範囲に関する問題が生じていました。

03平成11年通達(基発45号)の内容

平成11年1月29日付の行政通達(基発45号)では、「事業運営上の重要な決定が行われる事業場」の意義について、以下のように解説されていました。

「企業の事業運営に関して重要な決定が行われる事業場であること。具体的には、本社、本店のほかに、常駐する役員の統括管理の下に事業運営上の重要な決定の一部を行う権限を分掌する地域本社、事業本部、地域を統括する支社・支店などをいうものであること。」

この通達の解釈によれば、一般の支店・営業所・工場などは対象事業場から除外されると解されていました。そのため、地方の支店等に対して企画業務型裁量労働制を適用することは困難な状況でした。

04平成16年改正による事業場限定の撤廃

平成16年(2004年)1月1日の労働基準法改正により、企画業務型裁量労働制を適用できる事業場の限定が撤廃されました。改正の背景としては、本社・本店以外においても事業の運営に関わる重要な決定が行われる事業場が少なからず存在しており、限定要件が実態にそぐわないという指摘があったことが挙げられます。

この改正により、地方の支社・支店・営業所等においても、後述の要件を満たせば企画業務型裁量労働制を導入できるようになりました。これは、多くの会社にとって制度活用の可能性が広がる重要な改正といえます。

重要:平成16年改正前に作成された就業規則や労使委員会決議は、改正後の要件を満たしているか確認が必要です。平成16年以降に制度を新設・更新した場合は最新の要件に基づく整備が必要です。

05平成15年通達(基発1022001号)の内容と現在の解釈

平成15年10月22日付の行政通達(基発1022001号)では、事業場限定の撤廃に関連して以下のとおり述べられています。

「今回の法改正により、企画業務型裁量労働制を実施することができる事業場は、事業運営上の重要な決定が行われる事業場に限定されないこととなったところであるが、いかなる事業場においても企画業務型裁量労働制を実施することができるということではなく、対象業務が存在する事業場においてのみ企画業務型裁量労働制を実施することができるものであること。」

この通達のポイントは、事業場の種別・規模に関する制限はなくなったものの、「対象業務(企画・立案・調査・分析等)が実際に存在すること」という業務要件は依然として必要であるという点です。単に規模の大きい事業場であったとしても、対象業務に従事する労働者がいなければ制度を導入することはできません。

06会社側の実務的留意点

企画業務型裁量労働制を導入・運用する際には、以下の点に留意することが重要です。

  • 対象業務の確認:「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務」(労基法第38条の4第1項第1号)に該当する業務が実際に存在するかを具体的に確認・文書化する
  • 労使委員会の適正な設置・運営:使用者側・労働者側の委員が適切に選任・運営されているかを確認する
  • 決議の要件確認:5分の4以上の多数決による決議要件、行政への届出要件を満たしているかを確認する
  • 対象労働者への同意取得:労基法第38条の4第1項第6号に基づき、個別の対象労働者の同意取得と不同意の場合の不利益取扱い禁止について適切に対応する
  • 定期的な見直し:労使委員会決議は定期的に見直し、実態と乖離していないかを確認する

企画業務型裁量労働制は要件が複雑であり、導入・運用にあたっては早期に弁護士・社会保険労務士等の専門家にご相談されることを強くお勧めします。

SUPERVISOR

弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。就業規則・裁量労働制の導入・整備でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

07よくある質問(FAQ)

Q. 地方の営業所にも企画業務型裁量労働制を導入できますか?

A. 平成16年の法改正以降は、事業場の種別による制限はなくなっています。地方の営業所でも、対象業務(企画・立案・調査・分析等)に従事する労働者がいれば、要件を満たすことで導入可能です。ただし、労使委員会の設置・決議・届出等の手続きは全事業場で必要です。

Q. 対象業務がなければ導入できないとのことですが、どのような業務が対象ですか?

A. 対象業務は「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務」(労基法第38条の4第1項第1号)であり、業務遂行の手段・方法の決定を従事する労働者の裁量に委ねる必要があります。単純な作業・定型業務は含まれず、業務の内容を具体的に特定することが求められます。

Q. 平成16年改正前に導入した企画業務型裁量労働制は、改正後も有効ですか?

A. 改正後の要件(業務要件等)を満たしているかを改めて確認することが必要です。改正後の法令に基づき、労使委員会決議の見直しや届出の再確認を行うことが推奨されます。

Q. 企画業務型裁量労働制の導入で最も難しい点はどこですか?

A. 対象業務と対象労働者の特定・絞り込みが最も難しい点です。「業務遂行の手段・方法の決定を従事する労働者の裁量に委ねる」という要件を満たすか否かの判断には専門的な知識が必要です。また、労使委員会の適正な設置・運営も重要な実務課題です。導入を検討する場合は早期に専門家にご相談ください。

最終更新日:2026年5月


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