問題社員295 脅すような発言を繰り返す。
動画解説
この記事の要点
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脅すような発言をする社員の多くは、自分の言い分が正しいのに受け入れられないのは不当だと考えている。まずは逃げずに会議室で面談する 対応を避けていると、会社が萎縮していると受け取られて改善が遠のく。面談での反応が、次の手を判断する材料にもなる |
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言い分に正当な部分があれば会社として改善する。他方、言い方や進め方に問題があるのであれば、その点は明確に指導する 主張の内容が正しければどのような言い方をしてもよいというわけではない。内容と方法は分けて扱う |
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同僚や部下による言動であっても、優越的な関係が認められればパワーハラスメントに該当し得る 上司・部下の関係に限らず、専門的知識や経験の格差等により、抵抗や拒絶が困難な関係であれば「優越的な関係」が認められる場合がある |
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パワーハラスメントに該当するかどうかにこだわりすぎない。該当しなくても、服務規律違反として対処すべき言動は存在する パワハラの定義への当てはめに気を取られて動けなくなると、社員を守れない会社だと受け取られてしまう |
目次
1. 脅すような発言を繰り返す社員がいると、社員が安心して働けなくなる
職場に脅すような発言を繰り返す社員がいると、周囲の社員は安心して働くことができなくなってしまいます。
もちろん、その社員が述べている内容が正当なものであれば、会社としてその内容をしっかり検討しなければなりません。しかし、必ずしも正当な内容ばかりではなく、自分の感情をぶつけているだけというケースも存在します。
また、仮に正しい内容がある程度含まれていたとしても、言い方というものがあります。周囲の社員を不快にさせ、不安にさせ、職場の雰囲気を悪化させるようなやり方であれば、それはやめさせなければなりません。心理的安全性が確保された職場を維持することは、経営上も極めて重要です。同じ職場で働く社員たちを守るために、会社経営者として何ができるのかを考えていく必要があります。
2. 脅すような発言をする原因を冷静に考える
対応を検討するにあたっては、まず冷静に、その社員がどのようなつもりで脅すような発言をしているのかを考えることが出発点になります。
脅すような発言の背景として考えられるもの
- 不満の表明:自分の主張を理解してもらえない、言い分が通らないという不満から、強い言い方をしてしまっている
- 交渉手段:自分に有利な結論を得るための交渉手段として、意図的に威圧的な発言をしている
- 威嚇:相手を萎縮させること自体を目的としている
いずれの場合でも、自分の言い分が通らないことに対する不満を表明している可能性が高いと言えます。少なくとも本人としては、自分は正しいのに受け入れられないのは不当だと考えているケースがほとんどです。
もっとも、これは本人が主観的にそう考えているという話にすぎません。誤った理解に基づいてそのように思い込んでいることも多く、本人の言い分が正しいとは限りません。他方で、言い方が不適切であるだけで、内容の中には会社として聞くべきものが含まれている場合もあります。
3. 基本的な対応:逃げずに会議室で面談する
基本的な対応としては、まず会議室に呼んで面談してみることをお勧めします。対話をして、逃げない姿勢を示すことが重要です。
対応を避けていると、会社が萎縮していると受け取られ、かえって言動が改まらなくなります。「そこまでおっしゃるのであれば話をしましょう」と、逃げずに会議室で面談することによって、良い方向に向かう可能性が高くなります。
もちろん、面談をしても手に負えないということもあります。しかし、まず面談を行い、そこでの反応を見ることによって、次の手を判断しやすくなるという意義があります。
感情的になっている相手でも、まず一度は説明してみる
感情的になっている相手に対しては、どれだけ筋の通った説明をしても通じないことがあります。もともとそのような性質でなくても、精神的に追い詰められた状態で言い過ぎてしまっている社員もいます。それでも、まず一度は正面から向き合い、会社としての考えをしっかり説明してみるべきでしょう。通じるのであればそれでよく、通じなかったのであれば、話し合いによる解決を試みてもなお改まらなかったという事実自体が、次の段階に進む判断材料になります。いつまでも話し合いを続けなければならないわけではありません。
4. 内容と言い方を分けて扱う
面談の結果、言い分の中に正当な部分が含まれているのであれば、その部分については会社としても改善していくべきです。
他方で、周囲の社員の気持ちを考えずに騒ぎ立てるなど、言い方や進め方に問題があるのであれば、その点については明確に指導する必要があります。主張の内容が正しければどのような言い方をしてもよいというものではありません。内容の当否と、伝え方の相当性は、分けて扱うことが重要です。
なお、こうした場面でどのような言葉を用いて伝えるかは、実務上悩ましいところです。伝え方によっては、かえって反発を招き、後の紛争で会社側が不利になることもあります。判断に迷う場合は、弁護士に相談することをお勧めします。
5. 改善しない場合:業務命令・厳重注意書・懲戒処分
対話をしても不当な言動が続き、行動が改まらない場合には、段階を踏んで対応していくことになります。
改善が見られない場合の段階的対応
| ① 業務命令 | 業務命令として、具体的にどのように行動すべきかを明確に伝える。最初は口頭でもよいが、改まらない場合は書面で明示する必要が生じることもある |
| ② 注意指導・厳重注意書の交付 | 口頭の注意にとどめず、厳重注意書を交付することもある。何が問題なのかを具体的に記載することが重要 |
| ③ 懲戒処分 | それでも改まらない場合は懲戒処分も検討する。程度が著しい事案では、当初から懲戒処分が相当となる場合もある |
業務命令の内容を具体的に言語化することは、意外に難しく、失敗が生じやすい部分です。また、懲戒処分を行うには就業規則上の根拠規定が必要であり、処分の内容も、行為の性質・態様等に照らして相当なものでなければなりません(労働契約法15条)。記載内容、処分の種類、実施の時機を誤ると、後から回復することが困難になることが多いところです。この段階に至った場合は、書面の作成を含めて弁護士に相談されることをお勧めします。
6. パワーハラスメントとの関係:同僚・部下による言動でも成立し得る
脅すような発言を繰り返す社員に関しては、これがハラスメント、いわゆるパワーハラスメントや逆パワーハラスメントに当たるのではないかというご相談を多く受けます。
結論として、相手が上司ではなく同僚や部下であっても、職場におけるパワーハラスメントとなり得ます。
職場におけるパワーハラスメントの定義(労働施策総合推進法30条の2)
職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されるもの、と定義されています。
このうち「優越的な関係を背景とした言動」という部分は、上司から部下に対するものであれば認めやすいと言えます。もっとも、優越的な関係は上司・部下の関係に限られません。特定の業務について専門的な知識や経験を有しており、その者の協力を得なければ業務を円滑に進めることが困難であるなど、抵抗や拒絶をすることが困難な関係にある場合には、同僚や部下による言動であっても、この要素を満たすことがあります。
他方で、職場で孤立して不満を述べ続けているだけの社員については、優越的な関係があるとは言えない場合も少なくありません。周囲の社員からも疎まれており、優越的な立場とは到底言えないというケースも現実には存在します。そのような場合には、職場におけるパワーハラスメントには該当しないという整理になり得ます。
7. パワーハラスメントに該当するかどうかにこだわりすぎない
それでは、パワーハラスメントに該当しなければ、そのような言動を放置してよいのでしょうか。もちろん、そのようなことはありません。
実務上、パワーハラスメントに該当するかどうかにこだわりすぎている会社が少なくありません。パワーハラスメントに該当するかどうかを検討することは一つの検討事項として意味がありますが、それにこだわりすぎるべきではありません。
パワーハラスメントに該当しなくても対処すべき言動がある
- 不法行為が成立する場合:程度が著しく、他の社員の人格的利益を侵害するような言動であれば、パワーハラスメントの定義に当てはまらなくても、不法行為(民法709条)が成立する重大な問題です
- 服務規律違反として対処できる場合:不法行為として違法と評価される程度に至っていなくても、周囲の社員が安心して働けなくなるような不当な言動は存在します。就業規則の服務規律に違反するものとして、注意指導や懲戒処分の対象とすることが考えられます
パワーハラスメントに該当するか、不法行為を構成するかという議論とは別に、職場においてふさわしい言動かという観点から、しっかりと歯止めをかけていく必要があります。
パワーハラスメントの定義への当てはめにばかり意識が向いて身動きが取れなくなってしまうと、社員から見て「職場環境が悪化しているのに、パワーハラスメントの定義に該当しないという理由で会社が助けてくれない」という状態になりかねません。それでは経営者に対する信頼が失われてしまいます。パワーハラスメントに該当するかどうかにかかわらず、必要な対処を行い、心理的安全性を確保して職場環境を整備していくことが重要です。
8. まとめ
- 脅すような発言を繰り返す社員がいると、周囲の社員が安心して働けなくなる。経営者が行動する必要がある
- 本人の多くは、自分は正しいのに受け入れられないのは不当だと考えている。まず原因を冷静に把握する
- 逃げずに会議室で面談する。面談での反応が、次の手を判断する材料になる
- 内容と言い方を分けて扱う。正当な部分は改善し、伝え方の問題は明確に指導する
- 改まらない場合は、業務命令・厳重注意書・懲戒処分と段階を踏む。書面の内容や時機は弁護士に相談する
- 同僚や部下による言動でも、優越的な関係が認められればパワーハラスメントに該当し得る
- パワーハラスメントに該当するかどうかにこだわりすぎない。該当しなくても、不法行為や服務規律違反として対処すべき言動は存在する
脅すような発言を繰り返す社員への対応でお悩みの経営者の皆様は、ぜひ弁護士にご相談ください。
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 部下から上司に対する脅すような発言も、パワーハラスメントになりますか。
A. なり得ます。職場におけるパワーハラスメントは「優越的な関係を背景とした言動」であることが要素とされていますが(労働施策総合推進法30条の2)、この優越的な関係は上司・部下という職制上の地位に限られません。部下が業務上必要な知識や経験を有しており、その協力なしには業務が円滑に進まないなど、上司の側が抵抗や拒絶をすることが困難な関係にある場合には、部下から上司に対する言動であってもパワーハラスメントに該当し得ます。いわゆる逆パワーハラスメントの問題であり、会社は雇用管理上必要な措置を講ずる義務を負います。
Q2. パワーハラスメントに該当しないと判断した場合、何もできないのでしょうか。
A. そのようなことはありません。パワーハラスメントの定義に当てはまらない場合でも、程度が著しければ不法行為(民法709条)が成立し得ますし、それに至らない言動であっても、就業規則の服務規律に違反するものとして注意指導や懲戒処分の対象とすることが考えられます。会社は労働契約上、社員が安全に働ける職場環境を整える義務を負っています。パワーハラスメントに該当するかどうかという議論とは別に、職場においてふさわしい言動かという観点から対処してください。
Q3. 「訴えてやる」「労働基準監督署に行く」といった発言も、脅す発言として注意指導の対象になりますか。
A. 慎重な判断が必要です。労働者が労働基準法違反の事実を労働基準監督署に申告すること自体は法律上認められた権利であり、これを理由とする不利益取扱いは禁止されています(労働基準法104条2項)。訴訟提起も同様に正当な権利行使です。したがって、権利行使を示唆したこと自体を理由に注意指導や懲戒処分を行うことは適切ではありません。他方、その伝え方が威圧的で職場環境を害している場合には、権利行使の当否とは切り離し、言動の態様を対象として指導することが考えられます。判断が難しい場面ですので、弁護士に相談の上で対応してください。
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最終更新日:2026年7月17日