問題社員294 同僚に大声で文句を言う。

動画解説

この記事の要点

必要以上の大声は、それ自体が職場に無用なプレッシャーを与える問題行動。放置すれば職場環境が悪化し、周囲の社員の休職・退職を招きかねない

言っている内容の当否とは別に、必要もなく大声を出すこと自体を問題として扱う必要がある

日常的に大声を出している社員は、それが本人にとっての標準になっている。本人に問題意識がないため、放置しても改善しない

普段は大声を出さない社員が一度だけ大声を出した場合とは、対応の前提が異なる

最も重要なのは逃げないこと。会議室で面談し、大声を出す必要性を説明させた上で、会社の責任において明確に改善を求める

「周囲が困っている」といった言い訳めいた伝え方では、本気で改善させる意思がないと受け取られてしまう

注意して直ちに止むかどうかは、本人に自制が効くかどうかを推測する材料になる。配置や管理職登用の判断に反映させる

何度指導しても改善しないのであれば、大声による悪影響が小さい業務への配置を検討する

1. 必要以上の大声は、それ自体が職場の問題行動である

同僚に対して文句を言う際、その内容が誤っているのであれば問題であることは分かりやすいと言えます。しかし、内容の当否とは別に、必要以上に大声で話すこと自体も、職場においては問題行動です。

不必要に大声を出すことによって、周囲の社員に無用なプレッシャーがかかります。職場環境が悪化し、社員によっては精神的な不調をきたすおそれもあります。ひどい場合には、周囲の社員の退職を引き起こしかねません。そこで本記事では、同僚に大声で文句を言う社員への対処法について解説します。

2. なぜ大声を出すのか。多くは本人の標準になっている

対応を検討する前提として、その社員がなぜ大声で話しているのかを把握する必要があります。業務を行う上で必要な大声であれば、業務上必要な行為として許容されます。しかし、文句を言う場面において、必要もないのに大声が出ているというケースは少なくありません。

大声の原因として多く見られるもの

  • 本人にとってその声量が標準になっている:意識せず自然と大声になっており、本人はおかしいと思っていない
  • 過去の成功体験による:大声を出すことで相手を萎縮させ、言うことを聞かせられたという経験から、大声を出すこと自体を長所と捉えている場合がある

多くのケースでは、その都度意識して声を張り上げているというよりも、自動的に大声になっているように見受けられます。意識して大声を出しているわけではない以上、放置していても改善することはありませんし、本人も深く考えないまま大声を出し続けることになります。

普段は大声を出さない社員が一度だけ大声を出したのであれば、意図的なものがあるか、よほど感情的になる事情があったのだろうと考えられます。しかし、日常的に大声で文句を言っているような社員については、それが本人の標準になっているという前提でとらえることが、対応を検討する出発点になります。

3. 放置するとエスカレートする

大声で文句を言う社員を放置すると、その言動は次第にエスカレートしていきます。大声で文句を言う社員に対して周囲が萎縮し、強く言えなくなっていくためです。

放置による悪影響の連鎖

周囲が強く言えなくなると、業務の指示に対して拒絶的な態度を取ることが増えるなど、勤務態度そのものが悪化していきます。もともと勤務態度に問題があった社員であれば、注意されない環境の中で態度がさらに悪化し、最悪の場合には、周囲の社員を精神的に追い込むといった深刻な事態にまで至ることもあります。職場環境はますます悪化していきます。

周囲の社員を守るためにも、どこかの時点で明確に歯止めをかける必要があります。また、本人と長く働いてもらいたいと考えるのであれば、なおのこと早い段階で改善を求め、この会社で働き続けられる状態にしてあげることが、経営者として重要ではないでしょうか。仮に本人については自業自得だと考えるとしても、周囲の社員を守らなければならないことに変わりはありません。

4. 最も重要なのは逃げないこと。対応できる体制を整える

このような社員への対応において最も重要なのは、逃げないことです。大声で文句を言う社員への対応には心理的な負担が伴い、どうしても矢面に立ちたくないという意識が働きます。しかし、共に働く社員たちの職場環境を守るためには、逃げずに対応する必要があります。

管理職である上司や先輩社員が適切に対応できていれば、言動がエスカレートすることは少なくなります。もっとも、注意すると本人が食ってかかってくるようなこともあるため、上司の側が及び腰になり、よほどのことがない限り見て見ぬふりをしてしまうということも起こり得ます。

対応体制の整え方

① 対応可能な上司を配置する このような対応困難な社員がいる部門には、対処可能な人物を上司として配置する
② サポート要員を送る 上司の交代が難しい場合は、人事担当者や役員が応援に入り、上司が孤立しないよう支える
③ 経営者自身が対応する 社内に対処できる人材がいない場合、特に中小企業では、経営者自身が対応するほかない

対応に不安がある場合は、早い段階で弁護士に相談することをお勧めします。

5. 注意指導の進め方:会議室での面談と、必要性の確認

立ち話で簡単に注意して改善するのであれば、それで足ります。しかし、それで改善しないからこそ問題となっているはずです。そうであれば、会議室で面と向かって、しっかりと面談を行ってください。遠隔地に勤務している場合はオンラインでも構いませんが、同じ事業場にいるのであれば、対面での面談が望ましいと言えます。

面談では、まず本人に対し、大声を出す理由とその必要性を説明させてみてください。本人としては、文句を言うこと自体に正当な理由があると考えているかもしれませんし、大声を出すことにも意味があると思っているかもしれないからです。安全を確保するために咄嗟に大声を出さなければならない場面はあり得ますが、安全上の問題がない場面で大声で文句を言う必要性は、それほど多くはないはずです。

説明を聞いた上での伝え方

説明を聞いた結果、その状況で大声を出す必要がないと判断できるのであれば、声の大きさを抑えるよう、明確に伝えてください。本人が納得せず「これくらい問題ないでしょう」と反論してきた場合であっても、会社として必要がないと判断したのであれば、はっきりと伝えるべきです。本人が同意していない中で伝えることは負担を伴いますが、ここで逃げてはなりません。会社の責任において、改善を求めてください。

この際、「周囲の社員が困っている」「気にする社員もいるので」といった言い訳めいた伝え方をしてしまうと、本気で改善させる意思がないと受け取られ、指導の効果が上がりません。周囲の社員を守るために、会社の責任として改善を求めるという姿勢を明確にしてください。あわせて、本人が述べた大声を出す理由が的外れなものであれば、その点も指摘していくことになります。

6. 具体的な出来事を題材に、できるだけ早く面談する

可能であれば、大声を出して間もないタイミングで、具体的な出来事を題材として面談を行うことが望ましいと言えます。「よく大声で文句を言っているようですね」といった漠然とした指摘では、議論が抽象的になりがちだからです。できれば、大声を出したその日のうちに、具体的な事実を題材として注意指導できるようにすることが理想です。

もっとも、具体的な題材がない場合であっても、面談を先送りにする必要はありません。過去の出来事について見解の相違が残ったまま終わったとしても、経営者や責任者が会議室に呼んで正面から話をしたという事実自体が、抑止力として機能します。注意にまで至らず、事情を聞いただけであっても、行動の改善につながりやすくなります。

また、一度面談を行っておけば、その後に再び大声で文句を言う出来事が発生した際には、より強く注意することができます。職場環境が悪化し、困っている社員がいるのであれば、一日も早く面談することをお勧めします。

7. 改善しない場合:厳重注意書・懲戒処分の検討

面談による注意指導を行っても改善が見られない場合には、厳重注意書を交付する、あるいは懲戒処分を検討するという段階に進むことになります。

もっとも、実際にどのような発言があったのか、大声を出す必要性がどの程度あったのか、どのタイミングで厳重注意や懲戒処分に踏み切るのか、書面にどのような内容を記載するのか、そもそも他の手段によるべきではないかなど、検討すべき事項は多岐にわたります。懲戒処分を行うには就業規則上の根拠規定が必要であり、処分の内容も、行為の性質・態様等に照らして相当なものでなければなりません(労働契約法15条)。一般論だけで的確な判断をすることは困難ですので、本人がなかなか改善せずお困りの状態になった場合は、弁護士にご相談ください。

8. 自制が効くかどうかを踏まえた配置の検討

このような性質があると分かっているのであれば、配置の問題としても考慮することが有益です。合理的な理由もなく大声で文句を言い、周囲にプレッシャーを与えているような社員であれば、大声を出されては困る業務に就けることは避けるべきでしょう。多少大声を出しても、会社や周囲の社員、顧客への悪影響が小さい業務に配置するといった検討が考えられます。

注意した際の反応が判断材料になる

大声で文句を言っている場面で「やめなさい」と伝えた際に直ちに止むようであれば、その気になれば自制が効く人物であることがうかがえます。他方、何度指導しても改善しないのであれば、自分自身をコントロールできない、自制が効きにくい人物であると推測する事情の一つになります。こうした事情も考慮して、配置や管理職への登用の可否を検討するとよいでしょう。

9. まとめ

  1. 必要以上の大声は、内容の当否とは別に、それ自体が職場の問題行動である
  2. 日常的な大声は本人の標準になっていることが多く、放置しても改善しない
  3. 放置すればエスカレートし、周囲の社員の休職・退職を招きかねない
  4. 最も重要なのは逃げないこと。対応可能な上司の配置、サポート要員の投入、それも困難なら経営者自身が動く
  5. 会議室で面談し、大声を出す必要性を説明させた上で、会社の責任において明確に改善を求める
  6. できるだけ具体的な出来事を題材に、早いタイミングで面談する。面談すること自体が抑止力になる
  7. 改善しない場合は厳重注意書・懲戒処分を検討する。書面の内容や時機は弁護士に相談する
  8. 自制が効くかどうかを踏まえ、配置や管理職登用の可否を検討する

同僚に大声で文句を言う社員への対応でお悩みの経営者の皆様は、ぜひ弁護士にご相談ください。

弁護士 藤田 進太郎

監修者弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 同僚に大声で文句を言う行為は、パワーハラスメントに当たりますか。

A. パワーハラスメントは、優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、就業環境が害されるものをいいます(労働施策総合推進法30条の2)。同僚間であっても、経験や専門知識、集団による影響力等から優越的な関係が認められる場合には、パワーハラスメントに該当し得ます。仮に該当しない場合であっても、必要以上の大声で周囲に圧力をかける行為は、職場環境を悪化させる問題行動として注意指導の対象になります。会社は職場環境を整える義務を負っていますので、放置することは避けるべきです。

Q2. 本人は「もともと声が大きいだけだ」と言っています。それでも注意指導できますか。

A. 注意指導できます。本人に大声を出す意図がなかったとしても、必要以上の大声によって周囲の社員の就業環境が現に害されているのであれば、会社として改善を求めることは業務上必要かつ相当な行為です。面談の場で、その場面において大声を出す必要性があったのかを説明させ、必要がないと判断できるのであれば、声の大きさを抑えるよう明確に伝えてください。悪意の有無ではなく、職場環境への影響という客観的な事実を基準に対応することが重要です。

Q3. 周囲の社員から被害の申告がありました。誰から聞いた話かを本人に伝える必要はありますか。

A. 申告者が特定されると、本人からの報復や職場での孤立を招くおそれがありますので、申告者の保護には十分な配慮が必要です。他方で、注意指導は具体的な事実に基づいて行うことが望ましく、事実関係の特定が不十分では効果が上がりません。可能であれば、大声を出した場面を上司自身が現認した具体的な出来事を題材とする、あるいは複数名から事情を聴取して事実を確定させるといった工夫が考えられます。申告者の保護と事実確認の両立が難しい場合は、進め方について弁護士に相談してください。

最終更新日:2026年7月17日


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