問題社員296 同僚に対して常に不機嫌な態度を取る。

動画解説

この記事の要点

誰に対しても「常に」不機嫌な態度を取るのであれば、不機嫌だからその態度を取っているのではなく、そのような行動しか取れない社員である可能性を疑う

たまに不機嫌になる、特定の相手にだけ態度が悪いという場合とは、原因も対応も異なる

「周囲に配慮してほしい」といった内心に働きかける抽象的な指導では効果が上がらない

「配慮する」「相手の気持ちを考える」という言葉の受け止め方が、会社側と本人とで大きく異なることがあるため

具体的な行動にフォーカスし、どのような行動を取るべきか、どのような行動を避けるべきかを明確に伝える

感覚が異なる相手であっても、会社が望む具体的な行動は理解できる。共感できなくとも、行動を合わせてもらうことは期待できる

厳重注意や懲戒処分を検討する場合も、内心ではなく具体的な行動を対象とする

「態度が悪い」という抽象的な理由ではなく、いつ・どのような行動があったのかを特定することが、職場秩序の回復にも、後の紛争への備えにもつながる

1. 常に不機嫌な態度を取る社員を放置できない理由

誰にでも不機嫌になることはあります。しかし、不機嫌であっても職場でそれを態度に表さず、周囲に一定の配慮をするというのが通常の姿でしょう。また、特定の社員と折り合いが悪いということはあり得るとしても、周囲の全員に対して不機嫌な態度を取り続けるというのは、通常とは異なる状態です。

このような状態を放置すると、周囲の社員が一緒に仕事をすることを嫌がるようになり、職場の雰囲気も悪化してしまいます。会社経営者として放置できるものではありません。そこで本記事では、同僚に対して常に不機嫌な態度を取る社員への対処法について解説します。

2. 原因の分析:「常に」であれば、通常とは異なる可能性を疑う

対応を検討するにあたっては、まず原因の分析から始めることが重要です。原因によって、取るべき対応が変わってくるからです。

職場では、内心では不機嫌であっても感情をコントロールするのが通常です。感情のコントロールが得意でない方がいることも事実ですが、それにしても「常に」不機嫌な態度を取るというのは、通常の状態とは言い難いところです。

「たまに」と「常に」では、原因が異なる

  • たまに不機嫌な態度を取る:その時々の事情によるものである可能性が高い
  • 特定の相手にだけ態度が悪い:その相手との関係に原因がある可能性が高い
  • 誰に対しても常に不機嫌な態度を取る:不機嫌だからその態度を取っているのではなく、そのような行動しか取れない社員である可能性を疑う必要がある

誰に対しても常に不機嫌な態度を取っている社員については、機嫌が悪くなくても、場合によっては機嫌が良いときでさえ、不機嫌に見える行動を取ってしまう社員なのかもしれない、という可能性を少なくとも一つの仮説として考えておく必要があります。本人としては「不機嫌ではない」というのが率直な感覚であり、本人にとってはそれが普通の状態なのかもしれません。

3. 周囲に配慮しながら働くことは、労働契約上の義務でもある

本人にとってはそれが普通の状態なのだとすれば、改善を求めること自体、本人にとっては負担の大きいことかもしれません。しかし、会社経営者としては、周囲の社員たちも守らなければなりません。

労働契約を締結して働く以上、職場の同僚と折り合いをつけ、関係が極端に悪化しないよう、周囲に配慮しながら働くことが求められます。労働者は、労働契約に基づき、職場の秩序を守り、他の労働者の就業環境を害さないよう行動する義務を負っていると考えられています。周囲の社員に不快な思いをさせ続けるような言動を繰り返すことは、この義務に反するものと評価される場合があります。

したがって、行動を改めてもらうために、注意指導を行っていく必要があります。

4. 抽象的な指導では効果が上がらない理由

ここで重要になるのが、注意指導の伝え方です。

先に述べたとおり、常に不機嫌な態度を取っている社員は、普通にしているつもりでも不機嫌に見える行動を取ってしまう社員である可能性があります。仮にそうだとすれば、「周りの人に嫌な思いをさせないように」「周囲に配慮するように」といった、気持ちの問題、内心の問題を抽象的に伝えるだけでは、効果が低いと言わざるを得ません。

言葉の受け止め方が、そもそも異なっている

会社側が考える「配慮する」「相手の気持ちを考える」という言葉の意味と、本人が受け止める言葉の意味が、大きく異なっていることがあります。感覚が異なる相手に対して、内心のあり方を抽象的に説いても、意味が通じるとは限りません。指導したつもりでも、本人には何をどう変えればよいのかが伝わっていないという事態が生じます。

5. 具体的な行動にフォーカスした注意指導

そこで有効なのが、行動にフォーカスした注意指導です。実際に不適切な言動があった場面を題材に、どのように行動すべきなのかを具体的に指導していくことが重要です。

行動にフォーカスするとは

効果が上がりにくい伝え方 「周囲に配慮してください」「相手の気持ちを考えてください」「態度を改めてください」といった、内心や心構えに働きかける抽象的な指導
効果が期待できる伝え方 「このような場面では、このように行動してください」「このような行動は取らないでください」と、取るべき行動・避けるべき行動を具体的に示す指導

取るべき行動を具体的に伝えれば、仮に感覚が大きく異なる相手であったとしても、「自分としてはその必要性を感じないが、少なくとも会社はそれを望んでいるのだ」ということは理解できます。会社側の気遣いの感覚に共感できなかったとしても、望まれている具体的な行動が分かれば、それに合わせてくれる社員は相応にいるはずです。

感覚や価値観が異なる相手であっても、会社として望む具体的な行動を明確に伝えることによって、行動の改善につなげていくことができます。

6. 厳重注意・懲戒処分を検討する場合も、行動にフォーカスする

程度があまりにもひどい場合には、厳重注意や懲戒処分を検討することもあり得ます。具体的に取るべき行動を伝えたにもかかわらずそれを取らず、あるいは不適切な行動によって職場の秩序を乱し、就業規則上の懲戒事由に該当するような場合には、厳重注意や懲戒処分を検討することになります。

この場合も、行動にフォーカスすることが重要です。本人が会社側とは大きく異なる感覚を持っているのだとすれば、「態度が悪い」という抽象的な理由による処分では、本人に何が問題なのかが伝わりません。

具体的な行動を特定することの意義

「このような行動を取るべきであったのに取らなかった」「このような行動は取ってはならないのに行った」というように、具体的な行動を特定して厳重注意や懲戒処分を行うことで、本人にも問題点が伝わり、職場秩序の回復につながります。あわせて、懲戒処分を行うには就業規則上の根拠規定が必要であり、処分の内容も、行為の性質・態様等に照らして相当なものでなければなりません(労働契約法15条)。抽象的な理由による処分は、後に処分の有効性を争われた際、会社側が事実を立証することが困難になります。行動を特定することは、実務上の効果と法的な備えの両面で意味があります。

どの段階でどのような措置を取るべきか、書面にどのような内容を記載すべきかは、事案によって判断が分かれるところです。判断に迷う場合は、弁護士に相談することをお勧めします。

7. まとめ

  1. まず原因を分析する。原因に応じた対応をすることが出発点になる
  2. 誰に対しても「常に」不機嫌な態度を取るのであれば、通常とは異なる可能性を疑う。不機嫌だからではなく、そのような行動しか取れない社員なのかもしれない
  3. 周囲に配慮しながら働くことは、労働契約上求められる。周囲の社員を守るためにも注意指導が必要
  4. 内心に働きかける抽象的な指導は効果が上がりにくい。言葉の受け止め方が会社側と本人とで異なるため
  5. 具体的な行動にフォーカスして伝える。共感が得られなくても、望まれる行動は理解できる
  6. 厳重注意・懲戒処分を行う場合も、具体的な行動を特定する。実務上の効果と法的な備えの両面で意味がある

感覚が大きく異なる社員が職場にいると、経営者としても戸惑われることと思います。しかし、そうした社員にも対処できるようにしなければ、周囲の社員にとっても、本人にとっても、不幸な結果になってしまいます。同僚に対して常に不機嫌な態度を取る社員への対応でお悩みの経営者の皆様は、ぜひ弁護士にご相談ください。

弁護士 藤田 進太郎

監修者弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 「態度が悪い」という理由で、注意指導や懲戒処分を行うことはできますか。

A. 「態度が悪い」という抽象的な理由のままでは、適切とは言えません。注意指導は、いつ・どのような場面で・どのような言動があったのかを特定した上で、取るべき行動を具体的に示す形で行うべきです。懲戒処分についても、就業規則上の根拠規定に該当する具体的な行為を特定する必要があり、処分の内容は行為の性質・態様等に照らして相当なものでなければなりません(労働契約法15条)。抽象的な理由による処分は、後に有効性を争われた際、会社側が事実を立証することが困難になります。

Q2. 本人は「不機嫌にしているつもりはない」と言っています。それでも注意指導できますか。

A. 注意指導できます。本人に周囲を不快にさせる意図がなかったとしても、その言動によって周囲の社員の就業環境が現に害されているのであれば、会社として改善を求めることは業務上必要かつ相当な行為です。むしろ、本人に意図がないケースであればこそ、内心を問題にするのではなく、具体的にどのような行動を取ってほしいのかを伝えることが、実効性のある指導になります。意図の有無ではなく、行動と職場への影響という客観的な事実を基準に対応してください。

Q3. 注意指導をしても改善しない場合、解雇することはできますか。

A. 態度の問題のみを理由とする解雇は、慎重な検討を要します。解雇が有効となるためには、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる必要があります(労働契約法16条)。裁判では、労働者側から十分な注意指導を受けていないという主張がなされることが多く、口頭の注意だけで客観的な証拠が残っていない場合、会社側が指導の事実を立証することが困難になります。具体的な行動を特定した書面による注意指導を重ね、改善の機会を与えた記録を残した上で、なお改善が見込めないかどうかを検討することになります。解雇や退職勧奨を検討する段階では、必ず事前に弁護士に相談してください。

最終更新日:2026年7月17日


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