問題社員305 メンタルが弱いと言い訳して問題を常に周囲のせいにする。
動画解説
この記事の要点
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通常の対応で解決しないのであれば、「メンタルが弱いというのは言い訳だ」という前提そのものを疑ってみる 単なる責任逃れであることも多いが、その前提で工夫を重ねても終わりが見えないのであれば、見立てが違っている可能性がある |
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メンタルの弱さは、心構えの問題ではなく能力の問題として捉える視点が必要になることがある 「言い訳」という言葉には、変えようと思えば変えられるはずだという前提が含まれている。能力の問題であれば、本人には変えようがないかもしれない |
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確認方法は二つ。過去の客観的な事実から推測することと、面談での対話の中で確かめること 最初から責任逃れだという目で見ていると、見えてこないものがある |
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見立てによって対応は変わる。言い訳であれば注意指導と育成、業務命令へ。本当に弱いのであれば、配置の検討と安全配慮 体調を悪化させないよう配慮することは、会社の法的義務でもある |
目次
1. 「メンタルが弱いと言い訳して」という部分に注目する
問題を常に周囲のせいにするというのは、困ったものです。正当な理由があるのであればよいのですが、そうでなければ、本人は成長しませんし、問題も解決しません。
しかし、この相談には気になる部分があります。「メンタルが弱いと言い訳して」という部分です。どうして「メンタルが弱い」と言っているのでしょうか。そこで本記事では、その意味合いも含めて、メンタルが弱いと言い訳して問題を常に周囲のせいにする社員への対処法について解説します。
通常の対応をして、それですんなり解決したというのであれば、ここを深掘りする必要はないかもしれません。しかし、あれこれ工夫してもいつまでも問題が解決しないという事案においては、この部分の理由を深掘りする必要があります。
まず思いつくのは、単なる責任逃れだという見方でしょう。実際、単なる責任逃れであることもたくさんあります。しかし、それを前提に適切な対応をしているつもりでも、いつまでも解決しない、終わりが見えないという状況であれば、本当にメンタルが弱いのかもしれないと疑ってみてもよいかもしれません。
2. メンタルの弱さは、能力の問題かもしれない
メンタルが弱いというのは、言ってみれば能力の問題です。強さの問題です。単に心構えがどうこうという話ではなく、強いか弱いか、能力が高いか低いかという問題として捉えることが、必要になるかもしれません。
「言い訳」という言葉に含まれている前提
「言い訳」という言葉からは、変えようと思えば変えられるのに、心構えがおかしいから変わらないのだ、というニュアンスが読み取れます。
しかし、能力の問題だとしたらどうでしょうか。本人には変えようがないかもしれませんし、変わるのに時間がかかるかもしれません。成長を待たなければならないかもしれません。心構えの問題ではなく能力の問題かもしれないと考えれば、見える景色が変わってきます。
繰り返しますが、本当はメンタルが弱くないのに、単なる責任逃れでそのように言っているのかもしれません。両方の可能性があるという前提で、確認していくことが大切です。
3. 確認方法その1:過去の客観的な事実から推測する
では、本当にメンタルが弱いのか、それとも単なる言い訳なのか。その確認方法についてお話しします。
まず、客観的な事情から推測すること。これがとても大事な発想です。過去の事実関係を振り返ってみましょう。
検討すべき客観的な事実
- 勤怠:最近、休みは多いか。遅刻・早退は多いか。それとも、ほとんど休みなく出勤しているか
- 出勤時の様子:元気そうに見えるか。疲れているように見えるか。だるそうに見えるか
- 職歴:仕事が長続きしなかった方か。それとも、学校を卒業して以来ずっと同じ会社に勤めている方か
- 過去の申告:適応障害などの診断書を提出した経緯があるか
そして、もう一つ重要な視点があります。「この社員には問題がある、やればできるはずなのに言い訳ばかりしている困った社員だ」というアプローチで、あれこれ工夫を重ねてきたけれども、いつまでもうまくいかない、終わりが見えない。そうであるならば、逆の見方をすれば、やればできるのではなく、やろうとしてもできない社員なのかもしれないということに気づかなければならないかもしれません。
もちろん、一概に言えることではありません。これだけで結論を出せるわけではありませんが、能力の問題かもしれないと推測する一つの事情として、考慮すべきことになるのではないでしょうか。
4. 確認方法その2:面談での対話の中で確かめる
過去の客観的な事実からの推測はきわめて重要ですが、そのほかに行うべきことがあります。面談で対話し、確かめる作業です。
最初から「この社員は言い訳をしている、責任逃れをしている」という目で見ていると、見えてこないものがあります。もしかしたら、単に能力が低いだけかもしれない。メンタルが弱く、やろうと思っても他の平均的な社員のようには働けない方かもしれない。どちらなのだろうかという視点で確認作業を行うと、これまで見えなかったものが見えてくるかもしれません。
過去の事実関係を検討すること。面談での対話の中で確かめること。少なくともこの二つは、最低限行うべきだと考えます。
5. 言い訳だと判断した場合の対応
調査の結果、100パーセントの結論は出ないとしても、十中八九、単なる言い訳に過ぎないという判断に至った場合は、通常の対応を進めていきます。
言い訳であった場合の進め方
| 注意指導 | やるべき仕事をやらないといった問題行動があれば、注意指導を行っていく |
| 育成 | 物の考え方が未熟であるという面があるのであれば、教育指導を行い、成長を促す |
| 業務命令 | 注意指導をしてもやるべきことをやらない場合には、業務命令の形で明確に伝えて実行してもらう。あまりにもひどい場合には、業務命令書を交付することもある |
6. 本当にメンタルが弱いと判断した場合の対応
他方、本当にメンタルが弱いという場合はどうでしょうか。本人としては、やろうと思ってもできないということになります。
育成はもちろん行っていきます。メンタルをもっと強く持てるようにするための工夫について、教育指導をしていくことも考えられます。しかし、メンタルが弱い方を強くするというのは、なかなか大変なことです。教育指導をしてすぐに改善するようなものではありません。それを続けた結果、会社にとっても、本人にとっても、教育指導をする周囲の社員にとっても不幸な結果になるのであれば、別の方法を考える必要があります。
そこで、最も現実的な方法となるのが配置です。メンタルが弱いのであれば、メンタルに負荷がかかりにくい仕事に就いてもらう。とりわけ、本人に適性のある業務に配置することができれば、一般的にはメンタルが弱いけれども、その仕事をしている最中は元気だ、ということも例外的にはあるかもしれません。
7. 安全配慮義務という観点
そして、本当にメンタルが弱いのだと把握したのであれば、安全配慮義務という観点からの検討も必要になります。
把握した以上、配慮する義務が生じる
会社は労働契約上、労働者がその生命・身体等の安全を確保しつつ働けるよう、必要な配慮をする義務を負っています(労働契約法5条)。裁判例においても、使用者は、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負うとされています。
ここで重要なのは、会社が状況を認識した、または認識し得たという事情が、義務の内容を左右するという点です。調査の結果、本人が本当にメンタルの不調を抱えていると把握したのであれば、それ以上悪化させないよう、過大な負荷がかからない配置や業務の割り当てを検討しなければなりません。把握していながら漫然と従前どおりの業務を続けさせ、健康を害する結果となれば、損害賠償責任を問われることがあります。
また、確認の過程で健康状態に関する情報を取得する場合、これは機微な個人情報ですので、取得の目的を明示し、必要な範囲にとどめ、取扱う担当者を限定するなど、適切に管理する必要があります。判断に迷う場合は、産業医の意見を求めることも有効です。
このように、様々な事情から総合的に判断していかなければならない事案ですので、自社だけで判断できないこともあると思います。事情からの推測の仕方、面談でどのような話をしていくのか、相手がどう反応した場合にどう対応すればよいのかといった点についても、弁護士に相談することができます。
8. まとめ
- 「言い訳だ」という前提で工夫を重ねても改善しないのであれば、その前提を疑ってみる
- メンタルの弱さは、心構えの問題ではなく能力の問題かもしれない。そう考えれば見える景色が変わる
- 過去の客観的な事実から推測する。勤怠、出勤時の様子、職歴、過去の申告
- 面談での対話の中で確かめる。どちらなのだろうかという視点で臨む
- 言い訳であれば、注意指導・育成・業務命令へ
- 本当に弱いのであれば、配置を検討する。適性のある業務に就ければ状況が変わることもある
- 把握した以上、安全配慮義務が問題になる。過大な負荷がかからないよう配慮する
いつも言い訳だというわけではありませんし、いつも能力の問題だというわけでもありません。様々な事情から総合的に判断しなければならない、難しい問題です。メンタルが弱いと言い訳して問題を常に周囲のせいにする社員への対応でお悩みの経営者の皆様は、ぜひ弁護士にご相談ください。
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. メンタルの不調が疑われる社員に、受診や産業医面談を求めることはできますか。
A. 就業規則に受診を命じ得る根拠規定があり、業務上の必要性が認められる場合には、受診を求めることができます。根拠規定がない場合でも、健康状態に疑義があり、就労させることが本人の健康を害するおそれがあるなど、合理的かつ相当な理由があれば、受診を求めることが認められた裁判例があります。産業医が選任されている事業場であれば、産業医面談を勧奨する方が円滑に進むことが多いでしょう。取得した健康情報は機微な個人情報ですので、目的を明示し、必要な範囲にとどめ、取扱いを限定して管理してください。
Q2. メンタルが弱いことを理由に、負荷の軽い部署へ配置転換することはできますか。
A. 就業規則等に配転を命じ得る根拠規定があり、職種や勤務地を限定する合意がない場合、会社には配転命令について比較的広い裁量が認められています。健康への配慮や適性に応じた人員配置は、業務上の必要性を基礎づける事情になり得ます。もっとも、不当な動機・目的による場合や、労働者に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合には、権利の濫用として無効となることがあります。実質的に降格や減給を伴う場合には、より慎重な検討が必要です。進め方は弁護士に相談してください。
Q3. 責任転嫁を繰り返すことを理由に、懲戒処分や解雇はできますか。
A. 「責任転嫁をする」という評価だけでは足りません。懲戒処分を行うには就業規則上の根拠規定が必要であり、具体的にどの業務命令に従わなかったのか、どのような義務違反があったのかを特定する必要があります。処分の内容も、行為の性質・態様等に照らして相当なものでなければなりません(労働契約法15条)。解雇であれば、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です(同法16条)。また、健康上の問題が背景にある可能性がある場合、その点を検討せずに処分を進めると、後に会社側が不利になることがあります。必ず事前に弁護士に相談してください。
最終更新日:2026年7月17日