問題社員85 極端に仕事が遅い。
目次
動画解説
1. 極端に仕事が遅い社員がいる場合の会社経営者の悩み
手順どおりに行えば問題なく進むはずの作業なのに、他の社員と比べて極端に仕事が遅い社員がいる。このような状況に直面すると、会社経営者としては非常に頭の痛い問題だと感じるのが正直なところでしょう。
特に、本人が「頑張ります」と言いながら少しずつ成長してくれるのであれば、時間をかけて育てていこうという判断もしやすいものです。しかし、「自分は他の人のように早く仕事はできない」「無理なものは無理だ」と言われてしまうと、改善の見込みがあるのかどうか分からず、どう対応すべきか悩んでしまいます。
会社経営者の立場からすると、「なぜここまで仕事が遅いのか」「本当に一生懸命やっているのか」「指導の仕方が悪いのか」と、さまざまな疑問が頭をよぎるはずです。業務の遅れは、他の社員への負担にもつながり、職場全体の生産性にも影響します。
極端に仕事が遅い社員への対応は、単なる能力の問題として片付けられるものではありません。指導を続けるべきなのか、別の対応を考えるべきなのか、その判断を誤ると、本人にとっても会社にとっても不幸な結果を招くことになります。
本記事では、「極端に仕事が遅い社員」「自分は早くできないと開き直る社員」に対して、会社経営者がどのように考え、どのような順序で対応していくべきかについて、段階を追って整理していきます。
2. 仕事が遅い社員を「サボっている」と決めつけてはいけない理由
極端に仕事が遅い社員がいると、会社経営者としては「本当に一生懸命やっているのだろうか」「もしかして意図的にサボっているのではないか」と感じてしまうことがあります。特に、比較的単純な作業であればあるほど、その疑念は強くなりがちです。
しかし、実務経験上、このような社員の多くは、意図的にサボっているわけではありません。今回のように、「自分は他の人のように早く仕事はできない」と本人が口にしている場合、それはむしろ正直な反応であることが多いです。本当にサボっている社員であれば、会社や上司のせいにしたり、言い訳を繰り返したり、あるいは何も言わずにやり過ごそうとするケースの方が目立ちます。
「自分はできない」と言っている社員は、悪意があるというよりも、能力的・適性的な問題を自覚している場合が少なくありません。一生懸命やっているつもりでも、どうすれば早く仕事ができるのか分からず、結果として極端に仕事が遅くなってしまっていることも多いのです。
会社経営者が最初に持つべき視点は、「この社員はわざとやっていないのか、それともやり方が分からないのか」という点です。この切り分けを誤り、早い段階で「サボっている」「やる気がない」と決めつけてしまうと、その後の指導や対応も的外れなものになってしまいます。
極端に仕事が遅い社員への対応では、まず「本人に悪意があるとは限らない」という前提に立つことが重要です。そのうえで、なぜ仕事が遅くなっているのか、何につまずいているのかを見極めていくことが、適切な対応への第一歩となります。
3. 「自分は早くできない」と言う社員の受け止め方
極端に仕事が遅い社員が、「自分は他の人のように早く仕事はできない」と口にしたとき、会社経営者としては「開き直っているのではないか」「改善する気がないのではないか」と感じてしまうことがあります。しかし、この言葉をどう受け止めるかによって、その後の対応は大きく変わってきます。
実務上、このような発言をする社員の多くは、決して怠けているわけではありません。むしろ、自分なりに一生懸命やってきたものの、結果が出ず、「これ以上どうすればいいのか分からない」という状態に陥っていることが少なくありません。悪意や反抗心というよりも、諦めに近い心理である場合も多いのです。
会社経営者の目から見れば、「普通にやればできる」「なぜこんな簡単なことができないのか」と感じる作業であっても、本人にとっては何がポイントなのか分からず、同じところでつまずき続けているケースがあります。向いていない仕事については、真面目に取り組んでも成果が出ないということは、実際に起こり得ます。
この段階で重要なのは、「できないと言っている=指導しても無駄」と短絡的に判断しないことです。本人が自分の限界を口にしているからこそ、どこが分からないのか、何が障害になっているのかを丁寧に確認する必要があります。
「自分は早くできない」という言葉は、必ずしも改善を拒否しているサインではありません。むしろ、「どうすればいいのか分からない」「助けてほしい」という無言のメッセージであることもあります。会社経営者としては、その言葉の裏にある状況を冷静に受け止め、次の対応を検討していく姿勢が求められます。
4. まず取り組むべき具体的な教育指導の進め方
極端に仕事が遅い社員がいる場合、会社経営者が最初に取り組むべきなのは、教育指導の工夫です。感覚的に「普通にやればできるはずだ」「見れば分かるだろう」と思ってしまいがちですが、この前提を一度脇に置く必要があります。
仕事が遅い社員の中には、「何をどうすれば仕事が早くなるのか」が分かっていない人が少なくありません。会社経営者や周囲の社員から見れば当たり前の手順であっても、本人にとってはどこがポイントなのか理解できていないことがあります。向いていない作業については、真面目にやっていても分からない、ということは実際に起こります。
そのため、指示はできる限り具体的に行うことが重要です。何を、どの順番で、どのように進めればよいのかを、抽象的な表現ではなく、具体的な行動レベルまで落とし込んで伝える必要があります。可能であれば、その場で一緒に作業をしながら説明することも有効です。
また、一度教えたからといって、すぐに改善するとは限りません。極端に仕事が遅い社員の場合、同じ説明を何度か繰り返す必要があることも珍しくありません。そこで重要なのは、「教えたのにできない」と切り捨てるのではなく、実際の作業をよく観察し、どこでつまずいているのかを見極めることです。
教育指導は、一方的に指示を出すことではありません。仕事の進め方を観察し、原因を探り、具体的な改善点を示しながら試してもらう。この積み重ねによって、仕事のスピードが多少でも改善する可能性はあります。まずは、この段階を丁寧に行うことが、会社経営者に求められる対応です。
5. 仕事が遅くなる原因を見極めるための観察とフィードバック
極端に仕事が遅い社員への教育指導で重要なのは、「できない理由」を想像で決めつけないことです。そのために欠かせないのが、実際の仕事ぶりをよく観察することです。机に向かっている時間や結果だけを見て判断しても、本当の原因は見えてきません。
実務では、作業の順番が非効率であったり、必要以上に一つの工程に時間をかけていたり、重要でない部分にこだわり過ぎていることがあります。本人としては真面目にやっているつもりでも、どこを優先すべきか分からず、結果として全体のスピードが極端に遅くなっているケースも少なくありません。
そのため、可能であれば実際に作業している様子をそばで見て、どの場面で手が止まっているのか、どこで迷っているのかを確認してください。観察してみると、「ここで時間をかけ過ぎている」「この手順は省略できる」といった具体的な改善点が見えてくることがあります。
原因が見えてきたら、次はフィードバックです。このとき注意したいのは、「遅い」「ダメだ」といった抽象的な指摘をしないことです。どの作業を、どのように変えればよいのかを、できるだけ具体的に伝え、実際に試してもらうことが重要です。
一度でうまくいかなくても問題ありません。試してみて、少しでも仕事が早くなったのであれば、それは前進です。このような小さな改善を積み重ねることで、極端に仕事が遅い状態が多少なりとも改善する可能性はあります。
観察とフィードバックは手間のかかる作業ですが、この段階を丁寧に行わずに結論を急ぐと、本人にとっても会社にとっても不幸な結果になりかねません。まずは原因を正確に把握することが、次の判断につながります。
6. 仕事が遅い社員への指導でやってはいけない対応
極端に仕事が遅い社員への対応で、会社経営者が特に注意しなければならないのは、指導の仕方を誤ってしまうことです。良かれと思って発した言葉や態度が、かえって状況を悪化させてしまうケースは少なくありません。
代表的なのが、「自分の頭で考えなさい」という指導です。仕事が早くできる人にとっては当たり前の発想かもしれませんが、極端に仕事が遅い社員の場合、自分で考えても何が問題なのか分からないからこそ苦しんでいます。この言葉は、改善につながらないだけでなく、本人を追い詰めてしまう危険があります。
また、「普通はできる」「他の人はもっと早い」といった比較を前提とした指導も避けるべきです。本人としては、すでに自分が周囲と比べてできていないことを十分に自覚している場合が多く、そこにさらに比較を重ねることで、自信を失い、萎縮してしまうことがあります。
感情的に叱責したり、「やる気の問題だ」「意識が低い」と決めつけたりすることも逆効果です。仕事が遅い原因が能力や適性にある場合、精神論で解決することはほとんどありません。むしろ、指導がプレッシャーとなり、ミスや停滞がさらに増えることもあります。
極端に仕事が遅い社員への指導では、「本人は分からない」「できない状態にある」という前提に立ち、具体的に何をどう変えればよいのかを一緒に探っていく姿勢が欠かせません。やってはいけない対応を避けることが、その後の判断を冷静に行うための重要な土台となります。
7. 教育指導を尽くしても改善しない場合の考え方
具体的な指示を出し、作業を観察し、何度もフィードバックを重ねる。このように、会社としてできる限りの教育指導を行っても、残念ながら仕事のスピードがほとんど改善しないケースはあります。これは決して珍しいことではありません。
仕事には向き不向きがあります。真面目に取り組んでいても、どうしても適性が合わず、一定以上のスピードで作業できないということは実際に起こります。会社経営者や指導する側がどれだけ努力しても、限界がある場合はあるのです。
この段階で重要なのは、「もっと頑張らせれば何とかなるはずだ」と考え続けないことです。教育指導を続けても改善が見られないにもかかわらず、同じ対応を繰り返してしまうと、本人にとっては強いストレスとなり、状況がさらに悪化することがあります。
会社経営者としては、「ここまではやった」「これ以上続けても大きな改善は見込めない」というラインを、冷静に見極める必要があります。これは指導を諦めるという意味ではなく、別の判断に進むための区切りをつけるということです。
教育指導を尽くしたうえで改善しない場合には、「この仕事をこのまま続けさせることが本当に本人のためになるのか」「会社としても無理をさせ続ける必要があるのか」という視点で、次の選択肢を検討する段階に入ったと考えるべきです。
8. 本人の心身への負担を考慮すべき場面
教育指導を続ける中で、特に注意しなければならないのが、本人の心身への負担です。極端に仕事が遅い状態が続き、指導も重ねているにもかかわらず、本人が明らかに疲弊している、つらそうにしている、体調を崩しがちになっているといった様子が見られる場合には、対応を見直す必要があります。
会社経営者としては、「ここまでの指導は他の社員なら問題ない」「これくらいで体調を崩すのはおかしいのではないか」と感じることもあるかもしれません。しかし、仕事の適性が合わない社員にとっては、周囲にとっては何でもない業務であっても、強いストレスとなることがあります。
実務上、無理な指導やプレッシャーが積み重なり、適応障害などを発症してしまうケースも実際に存在します。会社としては善意で教育指導を行っていたつもりでも、結果として本人を追い詰めてしまうことがある点には注意が必要です。
このような兆候が見られた場合には、「もう少し頑張らせれば何とかなる」と考えるのではなく、「この業務を続けさせること自体が負担になっていないか」という視点で、立ち止まって考えることが重要です。体調を壊してしまってからでは、本人にとっても会社にとっても取り返しがつきません。
仕事が遅いという問題は、単なる業務効率の問題ではなく、本人の健康とも密接に関わります。会社経営者としては、数字や成果だけでなく、本人の状態にも目を向けながら、次の判断を検討していく必要があります。
9. 配置転換を検討するという選択肢
教育指導を尽くしても改善が見られず、さらに本人の負担も大きくなっている場合には、配置転換を検討するという選択肢があります。これは、決して逃げや甘えではなく、現実的かつ前向きな判断の一つです。
特に、日本型の正社員の場合、特定の職務だけを行う前提ではなく、会社の判断で業務内容を変更できるケースも多くあります。今の仕事が極端に向いていないだけで、他の業務であれば比較的スムーズにこなせる可能性も否定できません。
本人にとっても、向いていない仕事を続けて強いストレスを感じるより、別の業務に移ることで精神的な負担が軽くなることがあります。会社としても、今の業務では力を発揮できていなかった社員が、別の分野で一定の役割を果たしてくれれば、それは決して悪い結果ではありません。
もちろん、すべての会社で簡単に配置転換ができるわけではありません。企業規模や業務内容によっては、現実的に他に任せられる仕事がない場合もあります。ただ、可能性があるのであれば、一度試してみる価値はあります。
配置転換は、「この社員はダメだ」と切り捨てるためのものではなく、「この仕事が合っていない可能性がある」という前提に立った対応です。会社経営者としては、本人の適性と会社の状況を踏まえながら、冷静に検討していくことが求められます。
10. 会社経営者が最終的に決断すべき現実的な対応
配置転換も難しく、これ以上の教育指導を続けても改善が見込めない場合、会社経営者としては、より現実的な判断を迫られることになります。選択肢として考えられるのは、大きく分けて二つです。
一つは、「極端に仕事が遅い」という現状を受け入れるという判断です。この社員はこのスピードが限界であり、これ以上求めないと割り切ったうえで、人事評価や昇給、賞与などで調整するという考え方です。会社としては決して楽な判断ではありませんが、本人に過度なプレッシャーを与えずに済むという側面があります。
もう一つは、会社としてこの状況を受け入れられないと判断し、他の会社で活躍してもらう道を検討することです。解雇という形に限らず、話し合いによる退職という選択肢も含まれます。向いていない仕事を続けさせ、強いストレスを与え続けることが、必ずしも本人のためになるとは限りません。
どちらの判断も簡単ではなく、「これを選べば正解」という明確な答えがあるわけではありません。重要なのは、本人の適性や健康状態、会社の体制や将来を踏まえたうえで、会社経営者自身が責任を持って決断することです。
極端に仕事が遅い社員への対応は、現場任せにできる問題ではありません。悩みながらでも構いませんので、今ある現実と向き合い、会社として何を選択するのかを決めることが、会社経営者の重要な役割です。
最終更新日2026/2/5
