問題社員86 「一生懸命仕事しなくていいよ」と繰り返す。

動画解説

 

1. 「一生懸命仕事しなくていいよ」と繰り返す社員がもたらす問題

 職場の中で、周囲の社員に対して「そんなに一生懸命仕事しなくていいよ」「頑張らなくていいんじゃない?」といった発言を繰り返す社員がいると、会社経営者としては非常に気になるものです。本人は軽い気持ちで言っているつもりでも、周りのやる気を削いでしまい、職場全体の雰囲気が悪くなることがあります。

 特に真面目に働いている社員ほど、こうした言葉に影響を受けやすく、「自分の働き方はやり過ぎなのだろうか」「頑張ることが評価されないのではないか」と感じてしまうことがあります。その結果、仕事への意欲が下がり、組織全体の生産性にも悪影響が及びます。

 会社経営者の立場からすると、「一見すると些細な発言に見える」「注意するほどのことなのか」と迷ってしまうこともあるでしょう。しかし、このようなネガティブな発言を放置すると、知らないうちに職場の空気が緩み、頑張る人が損をする環境が出来上がってしまいます。

 「一生懸命仕事しなくていいよ」と繰り返す社員の問題は、単なる言葉遣いの問題ではありません。放置すれば、組織の価値観そのものに影響を与える問題です。だからこそ、会社経営者としては、小さな兆候の段階からきちんと向き合う必要があります。

2. ネガティブ発言を軽視してはいけない理由

 「一生懸命仕事しなくていいよ」といった発言は、暴言やハラスメントのように分かりやすく問題視されるものではないため、つい見過ごされがちです。しかし、会社経営者の立場から見ると、このようなネガティブ発言は決して軽視してよいものではありません。

 本人は冗談のつもり、あるいは軽い雑談の延長で言っているのかもしれませんが、受け取る側はそうとは限りません。真面目に働いている社員ほど、「頑張らなくていいと言われた」「頑張ることを否定された」と感じ、仕事への意欲を失ってしまうことがあります。

 こうした発言が繰り返されると、「頑張らない方が得をする」「一生懸命やると浮いてしまう」という空気が職場に広がります。その結果、会社として本来大切にしたい価値観が崩れ、組織全体の士気が徐々に下がっていきます。

 会社経営者として注意すべきなのは、ネガティブ発言の影響は目に見えにくく、気づいたときには職場の雰囲気が悪化しているケースが多いという点です。大きなトラブルに発展してから対処しようとしても、元に戻すには時間と労力がかかります。

 だからこそ、「この程度なら問題ないだろう」と放置せず、早い段階で対応することが重要です。ネガティブ発言を軽視しない姿勢こそが、健全な職場環境を維持するための基本となります。

3. 問題の本質は発言内容ではなくマネジメントにある

 「一生懸命仕事しなくていいよ」といったネガティブ発言を繰り返す社員がいる場合、多くの会社経営者は、その発言内容そのものに目が向きがちです。しかし、問題の本質は発言の言葉遣いではなく、会社としてのマネジメントが機能しているかどうかにあります。

 実務上、このような問題は、マネジメントがしっかりできている会社では、そもそも大きな問題になりません。なぜなら、上司や会社経営者が日常的に職場を見ており、問題のある言動があれば、その場で是正されるからです。適切なマネジメントが行われていれば、ネガティブ発言が繰り返される前に自然と止まります。

 一方で、問題がこじれやすいのは、「様子を見よう」「そのうち本人が気づくだろう」と考えて、明確な対応を取らずに放置してしまった場合です。遠回しにやんわり伝えるだけでは、本人にとって何が問題なのかが伝わらず、結果として同じ発言が繰り返されることになります。

 このようなケースでは、社員個人の性格や考え方を問題にする前に、「注意すべきタイミングで注意できていたか」「ダメなものはダメだと、会社としてはっきり伝えていたか」を振り返る必要があります。ネガティブ発言を許しているように見える状態そのものが、マネジメント不足を示しています。

 つまり、「一生懸命仕事しなくていいよ」と繰り返す社員の問題は、個人の問題ではなく、会社経営者を含めたマネジメントの問題です。この認識に立つことが、適切な対処への出発点となります。

4. 目の前でネガティブ発言があった場合の基本対応

 「一生懸命仕事しなくていいよ」といったネガティブ発言が、会社経営者や上司の目の前でなされた場合に取るべき対応は、実はとてもシンプルです。その場で、はっきり注意することです。

 この点について、「そんなことは分かっている」「当たり前の話だ」と感じる会社経営者も多いと思います。しかし、実際に相談を受けていると、この“当たり前の対応”ができていないケースは少なくありません。問題発言を目にしても、その場では何も言わずに流してしまい、後から遠回しに伝える、あるいはやんわり注意するだけで終わっていることが多いのです。

 やんわりとした注意で改善すれば問題ありませんが、繰り返し同じ発言が出ているのであれば、それでは足りていないということです。その場合には、「そういう発言はダメですよ」「職場の雰囲気を悪くするのでやめてください」と、率直に伝える必要があります。感情的になる必要はありませんが、曖昧な言い方は避けるべきです。

 会社経営者や管理する立場の者が、その場で注意する姿勢を見せることには、大きな意味があります。本人に対してだけでなく、周囲の社員に対しても、「こうした発言は許されない」「会社として問題だと考えている」というメッセージを伝えることになるからです。

 ネガティブ発言への対応は、後回しにすればするほど難しくなります。目の前で起きているのであれば、その場で止める。この基本を徹底することが、問題をこじらせないための第一歩です。

5. 陰での発言が報告された場合に会社経営者が取るべき行動

 「社長の前では言わないが、陰で『一生懸命仕事しなくていいよ』と繰り返しているらしい」。このような話が、周囲の社員から伝わってくることもあります。しかし、現場を直接目撃していない場合、「注意していいのか」「証拠がないのに動いていいのか」と迷ってしまう会社経営者も多いのではないでしょうか。

 結論から言えば、目撃していなくても、動くべきです。繰り返しネガティブ発言をしているという情報が会社経営者の耳に入った以上、放置する理由はありません。むしろ、放置することの方が、職場に対して「黙認している」というメッセージを送ってしまいます。

 具体的には、会議室などで本人を呼び、「こういう発言をしているという話を聞いているが、事実かどうかを確認したい」と率直に事情を聞くことが重要です。本人が認めるケースもありますし、否定する場合もあるでしょう。たとえ言った・言わないの話になったとしても、この場を設けること自体に意味があります。

 なぜなら、会社経営者が正式に事情を確認し、「そのような発言は問題だと考えている」という姿勢を示すことが、強いメッセージになるからです。証拠が完璧に揃っていなければ何もできない、というわけではありません。

 陰でのネガティブ発言に対しても、会社としてきちんと向き合う姿勢を見せることが、問題を拡大させないために不可欠です。会社経営者が動くことで、「こうした発言は許されない」という認識が職場全体に浸透していきます。

6. 周囲の社員から報告を受けやすくするための工夫

 ネガティブ発言の問題に対処するうえで、会社経営者が意識すべきなのは、「周囲の社員が報告しやすい環境を作れているかどうか」です。実務では、「問題だと思っているけれど、社長に言いにくい」「自分の名前が出ると角が立ちそうで不安だ」と感じて、報告をためらっている社員も少なくありません。

 会社経営者の立場からすると、「問題があるなら言ってくれればいいのに」と思うかもしれませんが、指示がない状態での報告は、社員にとって心理的なハードルが高いものです。そのため、まずは「こういった職場の雰囲気を悪くする発言があった場合には、必ず報告してください」と、全体に向けて明確に伝えることが重要です。

 このように会社経営者から正式に指示を出しておけば、社員は「自分の判断で告げ口をした」のではなく、「社長から言われたとおりに報告しただけ」という立場を取ることができます。これにより、報告する側の心理的負担は大きく軽減されます。

 また、特定の人物だけを対象にするのではなく、「誰の発言であっても、気になることがあれば報告してほしい」と全員に伝える方法も有効です。こうすることで、公平性が保たれ、「特定の社員を狙い撃ちしている」という印象を与えにくくなります。

 ネガティブ発言を早期に把握できるかどうかは、会社経営者がどれだけ報告しやすい空気を作れているかにかかっています。問題を個人任せにせず、会社として情報が上がってくる仕組みを整えることが、安定したマネジメントにつながります。

7. 早期対応が重要である理由と放置のリスク

 「一生懸命仕事しなくていいよ」といったネガティブ発言の問題がこじれてしまうケースの多くは、最初の段階で適切な対応が取られていなかったことが原因です。会社経営者としては、「そこまで深刻ではない」「様子を見よう」と考えてしまいがちですが、その判断が後々の対応を難しくします。

 実務上よく見られるのは、問題発言に気づいていながら、はっきり注意せず、やんわりとした言い方で済ませてしまうケースです。本人が気づいて改善してくれれば問題ありませんが、半年、一年と同じ発言が続けば、それはもはや「許されている行為」だと受け取られてしまいます。

 長期間放置されたネガティブ発言は、本人の中で既得権益のようなものになり、「今さら注意される筋合いはない」「なぜ急に言われるのか」という反発を招きやすくなります。こうなると、単なる注意では収まらず、対応の難易度は一気に上がります。

 また、周囲の社員にとっても、「問題だと思っていたが、会社は何も言わなかった」という認識が残ります。その結果、会社経営者が後から対応しようとしても、職場の信頼関係が揺らぎかねません。

 ネガティブ発言の問題は、小さいうちに対応すれば、大きな手段を取らずに解決できることがほとんどです。早い段階で、礼儀正しく、しかしはっきりと伝える。この基本を徹底することが、問題を長期化させない最大のポイントです。

8. 厳重注意や懲戒処分を検討すべき例外的なケース

 これまで述べてきたとおり、「一生懸命仕事しなくていいよ」といったネガティブ発言の問題は、早い段階でしっかりマネジメントを行えば、多くの場合は厳重注意や懲戒処分まで進まずに解決します。実際、ほとんどのケースでは、注意と是正で十分です。

 ただし、物事には例外があります。中には、注意してもまったく改めない社員や、長年にわたって同様の発言を繰り返し、すでに問題行動が固定化してしまっている社員もいます。また、最初は軽微だったものの、長期間放置された結果、本人が「これくらい言っても問題ない」と考えるようになり、改善が難しくなっているケースもあります。

 このような場合には、口頭注意だけでは対応しきれず、厳重注意書の交付や、懲戒処分を検討せざるを得ないこともあります。ただし、ここで注意しなければならないのは、対応を誤ると会社側のリスクが一気に高まるという点です。

 問題行動がこじれている社員ほど、対応も難しくなります。感情的に叱責したり、場当たり的な処分を行ったりすると、後になってトラブルに発展する可能性があります。そのため、この段階に入った場合には、会社経営者だけで判断せず、弁護士の助言を受けながら慎重に進めることが重要です。

 厳重注意や懲戒処分は、あくまで例外的な対応です。そこに至る前に解決するのが理想ですが、どうしても必要な場合には、適切な手順と専門家のサポートを前提に進めるべきだといえるでしょう。

9. 難しい事案では弁護士と連携すべき理由

 「一生懸命仕事しなくていいよ」と繰り返す社員への対応は、基本的には日常的なマネジメントで解決できる問題です。早い段階で注意し、はっきりと会社の姿勢を示していれば、多くの場合、大きなトラブルに発展することはありません。

 しかし、すでに問題が長期間放置されていた場合や、本人が注意を受け入れず改善する意思を見せない場合には、対応の難易度が一気に上がります。このようなケースでは、会社経営者が単独で判断し、感覚的に対応してしまうと、後になって思わぬトラブルを招くおそれがあります。

 特に、厳重注意書の交付や懲戒処分を検討する段階では、手続きや言葉の選び方一つで、会社側のリスクが大きく変わります。こじれた事案ほど、相手も強く反発する傾向があり、対応を誤ると紛争に発展しかねません。

 そのため、問題が複雑化している場合や、対応に迷いがある場合には、早めに弁護士の助言を受けながら進めることが重要です。第三者の視点を入れることで、冷静で一貫性のある対応が可能になります。

 ネガティブ発言の問題は、小さく見えても放置すべきではありません。会社経営者として、日常のマネジメントで対応すべき部分と、専門家と連携すべき局面を見極めながら、適切に対処していくことが求められます。

 

最終更新日2026/2/5


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