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使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合の休業手当(労基法26条)の支払義務は、労働協約・就業規則・個別合意によっても排除することができない 「就業規則で不支給と定めれば払わなくてよい」は誤りです |
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根拠は3つの強行法規。労基法は労働契約に優先(労基法13条)、就業規則が労働基準法違反は無効(労基法92条)、就業規則が労契法に違反する労働契約部分は就業規則基準で補充(労契法13条) 「書いてあるから有効」とはなりません |
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労基法は最低基準。労働協約・就業規則・個別合意により「法定基準を上回る」ことは可能だが、「法定基準を下回る」ことはできない 「平均賃金の80%以上の休業手当を支払う」という定めは有効です |
目次
01労基法は強行法規。その意味
労働基準法は「強行法規」です。強行法規とは、当事者間の合意(労働協約・就業規則・個別合意)があっても、その適用を排除することができない法律の規定をいいます。
労基法が強行法規として機能する意味は、「最低基準を定め、それを下回る取り決めはすべて無効とする」という点にあります。労基法1条2項は「この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならない」と定めており、強行法規性の根拠を明示しています。
02休業手当排除を無効とする3つの法的根拠
労基法26条の休業手当の支払義務を労働協約・就業規則・個別合意によって排除できない根拠は、次の3つの規定に基づきます。
休業手当排除を無効とする3つの根拠法規
①労基法13条(強行的・直律的効力):この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とし、無効となった部分は労基法で定める基準による
②労基法92条(就業規則の労基法への準拠):就業規則は労働法令に違反してはならない。違反する就業規則は、その部分は効力を有しない
③労契法13条(就業規則と労基法の関係):就業規則が労働契約を上回る基準を定めるときは就業規則が優先するが、これと反対の意味を持つ(就業規則が法定基準を下回ることはできない)
これらの規定が重層的に機能することで、どの手段によっても休業手当の支払義務を排除することはできないという結論が導かれます。
03「就業規則に不支給と書いてある」は無効
就業規則に「業績悪化を理由とする休業の場合は休業手当を支給しない」と定めても、その部分は労基法92条により無効となります。就業規則の記載は、労働基準法に違反することはできません。
会社経営者の中には、「就業規則に書いてあるから有効なはずだ」と考えるケースがありますが、強行法規に反する就業規則の定めは法律上無効です。従業員がこの定めに同意していても(次節参照)、同様に無効です。就業規則に不支給の定めがあるにもかかわらず支払わないでいると、未払い休業手当の支払義務が遡及して生じるリスクがあります。
04「従業員が同意した」も無効
「会社の休業について従業員が同意し、その際に休業手当を受け取らないことにも合意した」という場合はどうでしょうか。この個別合意も、労基法13条により無効となります。
強行法規は、当事者間の合意(個別合意・就業規則・労働協約)による排除を認めません。「両者が合意したのだから問題ない」という論理は強行法規の場面では成立しません。たとえ従業員が任意に同意し、後に問題にしないと約束していたとしても、その後に休業手当の請求権を行使した場合、会社側は合意の存在をもって防御することができません。
05法定基準を上回る定めは有効
強行法規は、法定基準を「下回る定め」を無効とするものであり、法定基準を「上回る定め」を禁ずるものではありません。
例えば、「平均賃金の80%以上の休業手当を支払う」という就業規則の定めは、法定基準(60%以上)を上回るため有効です。また、労働協約や個別合意で休業手当を法定基準以上に手厚くすることも可能です。ただし、60%を下回る定めは、どのような形式(協約・就業規則・合意)であっても無効となります。
06まとめ
労基法は強行法規であり、使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合の休業手当(労基法26条・平均賃金の60%以上)の支払義務は、労働協約・就業規則・個別合意によっても排除することができません(労契法13条、労基法13条・92条)。就業規則に不支給と書いてあっても、従業員が同意していても、いずれも無効です。法定基準を下回る定めはすべて無効となり、支払わなかった分は後に遡及して請求されるリスクがあります。業績悪化を理由とする休業を検討する際は、休業手当の支払義務を前提とした対応が必要です(387番参照)。アドバイスします。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
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Q&Aよくある質問
Q1. 現在の就業規則に「業績悪化による休業の場合、休業手当は平均賃金の40%とする」と定めています。この規定は有効ですか。
A. 無効です。労基法26条は平均賃金の60%以上を下限として定めており、これを下回る就業規則の定めは労基法92条により無効となります。従業員からの請求があれば、60%と40%の差額分を遡及して支払う義務が生じる可能性があります。就業規則を速やかに法定基準に適合した内容に改定することをお勧めします。
Q2. 休業手当の支払義務を避けるためにできることはありますか。
A. 法律上の支払義務は排除できませんが、雇用調整助成金の活用により実質的な会社負担を軽減することは可能です。また、休業ではなく在宅勤務(テレワーク)や別業務への配置転換等の代替措置により、「休業させない」という選択肢も検討できます。具体的な対応については使用者側弁護士・社会保険労務士にご相談ください。
最終更新日:2026年5月31日