運送業を営む会社の特徴は、トラック運転手が事業場を離れて運転業務に従事する時間が長いため、出社時刻と退社時刻の確認を除けば、現認による勤務状況の確認が事実上不可能な点にあります。したがって、出社時刻と退社時刻の確認をして運転日報等に記録させるのは当然ですが、経営者の目の届かない客先や路上での勤務状況、労働時間の把握が重要となってきます。
 特に問題となりやすいのは休憩時間の把握です。一般的には、トラック運転手本人に運転日報等に休憩時間を記載させて把握するのが現実的対応と思われますが、トラック運転手は、出社時刻と退社時刻については運転日報等に記録してくれるのが通常なのですが、休憩時間については運転日報等への記録を怠る傾向にあります。おそらく、出社時刻と退社時刻さえ明らかにできれば、自分の勤怠、労働時間の始期と終期が分かることから、休憩時間をいちいち書き込むモチベーションが働かないからだと思われます。
 しかし、トラック運転手に必要な休憩を与えることは使用者の義務であり、所定の休憩を取得できていない場合には、休憩を取得することができるよう配慮しなければなりません。また、一般に労働時間はその日の出社時刻から退社時刻の間の拘束時間から休憩時間を差し引いて計算されますので、休憩時間を的確に把握できなければ労働時間を的確に把握することもできません。労働時間の把握は使用者の義務ですので、トラック運転手が労働時間なんて興味がない、どうでもいいと言っていても、使用者は労働時間を把握しなければなりません。残業代(割増賃金)請求訴訟においては、それなりの休憩時間を取っていた場合であっても、「休憩時間はほとんど取ることができていなかった。」と主張されることは珍しくはありません。会社経営者は、トラック運転手本人が望んでいるかどうかにかかわらず、休憩時間を運転日報等にしっかり記載させ、休憩時間や労働時間の管理をしていく必要があります。
 具体的には、
 運転日報等に何時から何時までどの場所で休憩時間を取得したのかを記載する欄を設けた上で
 休憩時間をしっかり記録するようトラック運転手を粘り強く指導していく
ことになります。
 運転日報等に休憩時間の記載欄を設けることは簡単にできることですので、運転日報等に休憩時間の記載欄がない場合は、すぐにでも運転日報等の雛形を作り直しましょう。
 運転日報等に休憩時間をしっかり記録してもらえるかどうかは根気の勝負であり、会社経営者がトラック運転手に対する注意指導を億劫がっていたのでは、いつの間にかトラック運転手が休憩時間を記録しなくなってしまうことになりかねません。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
代表弁護士 藤田 進太郎

 


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