この記事の要点

欠勤を理由に解雇・処分する前に、年次有給休暇を使い切らせることが実務上の最善策です。年休が残っていると「年休取得だった」という主張を封じられません。

「休みます」という連絡が年休申請か欠勤かは曖昧になりがちです。年次有給休暇が残っている社員には、まず年休を使い切らせてから処分することで、後の紛争リスクを大幅に低減できます。年休取得妨害は解決金相場を無駄に上げるだけです。

「休みます」は年休申請か欠勤か——曖昧さが解雇リスクになる

「仕事を休みます」という連絡が年休申請か欠勤かは法的に争いになり得ます。年休残日数があれば「年休取得だったので欠勤はない」と主張されるリスクがあります。


実務上のアドバイス:欠勤処分前に年休を使い切らせる

年次有給休暇を使い切らせてしまえば「年休取得だった」という主張を完全に封じられます。年休取得を妨げることは逆効果です。


具体的手順:申請用紙を書留郵便で送り年休か欠勤か確認させる

所定申請用紙を書留郵便で郵送し、年休取得か欠勤かを記載して返送させることで年休か欠勤かを客観的に確認できます。

1. 「休みます」は年次有給休暇か欠勤か——最初に問題となる論点

欠勤解雇の有効性判断では「欠勤」の有無・日数・理由が問題

 勝手に何日も休んで周りに迷惑をかけている社員を解雇する場合は、正当な理由なく欠勤を続けていることを解雇理由とするのが通常です。したがって、この解雇の有効性を判断するにあたっては「欠勤」の有無、日数、欠勤の理由等が問題となります。

 ここで最初に問題となるのが、「仕事を休みます」との連絡が、年次有給休暇の取得申請なのか、欠勤の届出なのかという点です。

年次有給休暇が残っていると解雇が複雑になる

 何年も勤務を続けている社員の場合、年次有給休暇(労基法39条)が何日もたまっていることがあります。何日も欠勤したことを理由として解雇したところ、「年次有給休暇取得の申請をしたのだから欠勤しておらず解雇事由が存在しない」とか、「欠勤した日はあるにしても年休を取得した日数を差し引けばわずかな欠勤日数なのだからこの程度の欠勤日数で解雇するのは解雇権の濫用(労契法16条)で無効だ」といった主張がなされるリスクが残ることになります。

 会社の中には、風邪などで欠勤した場合に、年次有給休暇を使ったことにして欠勤扱いせず、欠勤控除しないのが慣行となっているところも数多くあります。そのような会社で、年次有給休暇が10日も20日も残っている社員が休むと連絡してきた場合、その連絡には年次有給休暇取得請求の趣旨が含まれていると考えることもできます。

2. 実務上の最善策:欠勤処分前に年次有給休暇を使い切らせる

年休を使い切らせることで「年休取得だった」主張を封じる

 欠勤を理由に何らかの処分をしたいのであれば、まずは年次有給休暇を使い切らせてください。年次有給休暇が残っていれば、年休取得なのか欠勤なのかの問題が残りますが、年次有給休暇を使い切らせてしまえば、年休を取得したという主張を完全に封じることができます。

 また、会社とトラブルになっている社員の中には、退職すること自体はやぶさかではないが、年次有給休暇を使い切らずに退職してしまうのだけが心残りだ、もったいないと考えている者も多くいます。心残りとなっていることを解消してやれば、紛争解決に大きく近づいていくことになりますので、年次有給休暇を使い切らせるというのは、実際上も紛争解決に役に立つことになります。

年休取得を妨げることは逆効果

 「こんな問題社員に年休取得までさせたら、踏んだり蹴ったりで、会社ばかりが一方的に損をすることになるし、迷惑がかかっている他の社員が納得しないから、年休取得を認めるわけにはいかない」などと考えて、年休取得を妨げるようなことはないようにしてください。そのような不合理な対処をしたら、労働審判などにおける解決金の相場が無駄に上がってしまう可能性が高くなります。

✕ やってはいけない対応

「問題社員に年休取得を認めたら損だから、年休申請を認めない」→ 逆効果です。
年休取得を妨げると、①年休の買取請求・労基法違反等のリスク、②紛争が長期化して解決金相場が上がるリスク、が生じます。問題社員であっても年次有給休暇の権利は保護されています。

「年休か欠勤かを確認せずに、すべて欠勤として処理して解雇した」→ 解雇無効リスクが高まります。
年休残日数がある社員の場合、年休か欠勤かを確認せずに欠勤扱いで解雇すると、解雇無効(欠勤ではなく年休取得だった)という主張が認められるリスがあります。

3. 具体的な手順:申請用紙の書留郵便送付による確認

書留郵便で申請用紙を送り年休か欠勤かを確認する

 具体的なやり方としては、所定の申請用紙を本人宛書留郵便などで郵送し、年次有給休暇の取得なのか欠勤なのか、明確に記載して返送するよう伝えれば足ります。難しい手続ではありません。

 年次有給休暇が何日も残っている社員であれば、まず間違いなく、年次有給休暇を取得する旨記載して返送してきます。これにより、年休か欠勤かが客観的に確認でき、年休使い切り後の処分(欠勤が続けば懲戒処分・解雇等)の準備を進めることができます。

 無断欠勤を繰り返す問題社員への対応・年次有給休暇と欠勤の区別・解雇に向けた手続の進め方について、弁護士へのご相談をお勧めします。→ 経営労働相談はこちら

⚠ 実務でよく見られるパターン(弁護士対応事例より)

・「「休みます」とだけ連絡して2週間休んだ社員を欠勤扱いで解雇した。その社員には年休が15日残っており、『実は年休取得を申請していた』と主張された。欠勤の立証が困難となり、高額解決金を支払うことになった」

・「弁護士のアドバイスに従い、申請用紙を書留郵便で郵送して年休か欠勤かを確認した。社員は年休取得と回答したため年休を使い切らせた。その後も欠勤が続いたため解雇。年休問題は完全に解消されており、解雇は有効とされた」

 年休が残っている状態での欠勤処分は複雑です。早期に弁護士に相談し、適切な手順を踏んで対応することが最善策です。

4. まとめ

 「仕事を休みます」とだけ連絡して何日も休む問題社員を欠勤を理由に解雇・処分する場合、「休みます」という連絡が年次有給休暇の取得申請なのか欠勤の届出なのかが問題となります。年次有給休暇が残っている社員の場合、欠勤で処分する前にまず年次有給休暇を使い切らせることが実務上の最善策です。年休を使い切らせれば「年休取得だった」という主張を完全に封じることができます。具体的には所定申請用紙を書留郵便で郵送し、年休か欠勤かを明確に記載して返送させることで確認できます。年休取得を妨げることは解決金相場を無駄に上げるだけです。対応に迷ったら早急に弁護士に相談することをお勧めします。

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弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 /  「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

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弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

 

 

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最終更新日 2026/04/05