問題社員345 メンタルを理由に日常業務を引き受けたり断ったりする。

動画解説

この記事の要点

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まず「本当に病気の影響でできないのか」を確認する

やりたくない仕事を断る口実に過ぎない可能性もある。診断書と産業医の意見で見極める

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口実に過ぎないなら、やらせて構わない。断れば事実ベースで注意指導する

本当に働けるのに働かなかったといえるなら、懲戒処分も選択肢になる

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本当に病気の影響なら、単なる言いなりは危険。安全配慮義務の観点で判断する

働かせて体調が悪化すれば会社の責任になりうる。危険なら強制的にでも休ませる

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周りの社員の負担も忘れずに考える。労務提供が著しく不足するなら休ませる選択も

強い手段を取る際は必ず弁護士のコンサルティングを受ける

1. メンタルを理由に業務を選ぶ社員という悩み

メンタルの病気を理由に、気分の浮き沈みは周りの社員が我慢するよう要求し、日常業務を引き受けたり断ったりする社員がいる。こうしたご相談をいただくことがあります。確かに、メンタルの病気で苦しんでいるのであれば、本人は辛いでしょうし、それが本当であれば、しっかり体調を回復していただきたいものです。わざとルール違反やずるをしているわけではないなら、懲戒処分に持っていくのも少し変な話です。本記事では、メンタルを理由に日常業務を引き受けたり断ったりする社員への対処法を、会社側の視点から解説します。

2. まず考えるべき二つの視点

まず、メンタルの病気であれば、そのまま働かせて大丈夫なのか、症状が悪化しないのか、心配になります。社長からすれば当然の心配でしょう。会社には安全配慮義務があり、働く人が元気に働けるようにしてあげなければならないからです。それに加え、周りの社員の負担が重くなりすぎるのも困ります。周りの社員にある程度の配慮を求めるのは理解できますが、あまりに負担が重くなるようなものであれば、本人が労働契約・雇用契約の義務を果たしていると言えるのかどうかも問題になってきます。ですから、そもそも出社を認めるのかどうか、認めるとしてもどこまで周りに我慢してもらうのかを、経営者としてしっかり考えていかなければなりません。

3. 「本当にできないのか」を確認する

最初に確認しなければならないのは、本当に日常業務ができないものがあるのかということです。同じ日常業務でも、できるときとできないときがあります。気分の浮き沈みがあるからできないと言うけれど、それが本当なのか、単にやりたくない仕事を断る口実に過ぎないのか、まず確認しないと始まりません。

診断書と産業医の意見をスタートラインにする

まずは、そもそも何の病気なのかを、診断書でしっかり出してもらいましょう。そのうえで、産業医のいる会社であれば、産業医面談を行ってもらい、実際の仕事の状況(断った仕事の内容、気分が沈んでいる頻度や長さなど)を情報提供したうえで、「この病気でこういった状況の場合、本当に働けないことがあるのか」について意見をもらうことが、まずスタートラインになります。

4. 口実に過ぎない場合の対応

実際にはできるのにやらない、単に断る口実に過ぎないという結論であれば、「やりなさい」と言って仕事をしっかりやってもらって構いません。もちろん、産業医の意見などが正しいという前提です。信用できる意見が出てきたり、主治医自体が「それほど問題ない」という判断であったりすれば、診断書の記載から分かることもありますし、直接会って話を聞くこともできるでしょう。それらを踏まえて、実際はできるのに単なる口実だと推測できるのであれば、仕事をやらせましょう。断ってきたら、しっかり注意指導する。あまりにも言うことを聞かなければ、会議室で事実を踏まえて、「本日午後1時50分ごろ、誰々課長からこういうことをやってと言われたところ、メンタルの病気だからと気分が乗らないと言って断りましたね。でも、お医者さんの意見では、このぐらいの仕事ができなくなることはないという話です。ですから、あなたの病状だと、これくらいはやってもらわなければならないので、しっかり仕事をしなさい」と、具体的に注意指導していくことになります。それでも本当に働けるのに働かなかったと言えるようなものであれば、懲戒処分などを行っても構いません。

5. 本当に病気の影響がある場合の難しさ

本当に病気と関係ないというのであれば、対応は簡単です。問題はそちらではなく、大体のケースは、本当に病気の影響があるかもしれないケースなのです。主治医の診断書、主治医の説明、場合によっては産業医の意見なども踏まえて考えても、「確かにこのメンタルの病気だと、この日常業務ができるタイミングもあるが、できない時間帯も確かにある」ということが分かった場合、この場合の対応は難しいものです。

6. 単なる言いなりは危険(安全配慮義務)

この場合、会社がやりがちなのは、とにかく本人の言いなりになる対応です。本人がやりたくないと言うことはやらせない。そうすれば失敗することはない、というのが基本的な発想にあると思います。下手に踏み込んで失敗すれば自分の責任になるかもしれない、と考える方もいますし、本人の言うとおりにしてあげれば不満も持たれず、ごたごたも起きない、と考えるわけです。

言いなりで放置すると、本人が体を壊すことがある

しかし、それをやっていると問題が起きます。まず第一に、本人が体を壊すことがあります。本人がやりたくない仕事をやらせないのですから、要望を全部満たしてあげていると社長は思っているかもしれません。しかし、特定の仕事ができないような方については、ケースによっては、そもそも出社させて仕事をさせてはいけないケースもあるのです。体調が悪化することがあります。そして、体調が悪くて辛いのに会社から働けと言われて体調が悪化した、どうしてくれるのか、という内容証明が届いたケースを、私はたくさん見てきました。ですから、特定の時間帯に働けないという方については、他の時間帯も含め、出社しても大丈夫なのかをお医者さんに確認してください。会社には安全配慮義務がありますし、社員の体調を悪化させてはいけないというのは、理屈を聞かなくても分かることです。本当にお医者さんの意見なども聞いて、危ないと思ったら、しっかり休むように説得することが大事です。

このまま働かせたら体調を崩すという意見がはっきり出てきたら、本人が「働きたい」と言ってもだめです。健康が第一です。体を壊させるのは、経営者として絶対にやってはいけないことですから、そこは本人が何と言おうと休ませるようにしてください。疑いがある程度でも「休んだほうがよいのでは」くらいは当然言うべきです。ただ、大体の問題になるのは、そう言っても休まない方です。しっかり医学的な意見や診断内容を踏まえて、本当に働かせて大丈夫なのかを、安全配慮義務の観点からチェックしてください。

7. 周りの社員の負担への配慮

さらにもう一つ検討しなければならないことがあります。それは、周りの負担です。仕事を当てにしていたのに、昨日は頼んだらやってくれたのに、今日は調子が悪いので断る。出張のような特別な仕事ではなく、日常業務であるにもかかわらず仕事ができないとなると、周りは大変です。

労務提供が著しく不足するなら、強制的な休養も選択肢

理屈から言えば、これが労働契約・雇用契約で予定されている労務提供ができていないとまで言えるもの、たとえば簡単な仕事も相当な期間・頻度でできない状態になっているのであれば、そもそも契約上の義務を果たしていないと言えるかもしれません。そこまでの状態になれば、医学的な意見も踏まえて、強制的に休ませて欠勤扱いにするという選択肢もありえます。ただし、これは難しい判断ですので、こうした強い手段を取るときは、必ず弁護士のコンサルティングを受けながら行ってください。自力でやるのは本当に危険です。

逆に、確かに期待していた仕事はさせられないけれど、一時的なものだから、とりあえず簡単な仕事を続けてやらせるか、という選択肢もあります。ここも一般論でばっさり決めてしまうのではなく、個別の事情をよく考慮して、負担の軽めの仕事をやらせて我慢するのか、それとも休ませるのかを、よく考えてください。個別の具体的事情を踏まえて判断するという基本姿勢が大事です。

8. まとめ

  1. まず「本当に病気の影響でできないのか」を、診断書と産業医の意見で確認する
  2. 口実に過ぎないなら、やらせて構わない。断れば事実ベースで注意指導し、悪質なら懲戒処分も
  3. 本当に病気の影響なら、単なる言いなりは危険。安全配慮義務の観点で、危なければ強制的に休ませる
  4. 健康が第一。体調悪化の懸念があれば、本人が働きたいと言っても休ませる
  5. 周りの社員の負担も考える。労務提供が著しく不足するなら、休ませて欠勤扱いにする選択も。強い手段は弁護士に相談

メンタルの病気を抱える方の中には、気分の浮き沈みが激しく、昨日できた仕事が今日はできない、というケースも確かにあります。それ自体はやむを得ないことです。しかし、会社には安全配慮義務がありますから、病状が悪化しないよう、場合によっては強制的にでも休ませなければなりません。同時に、周りの社員たちの負担も考えてあげてください。周りが振り回されることで負担は必ず生じます。契約上の義務を何とか果たしている状態であれば我慢してもらうこともできますが、労働契約で予定されている程度の労務提供が長期間にわたってできていないと評価される事案については、しっかり休ませ、別の人を当てるなどして、周りの社員たちの負担を軽くしてあげてください。こうしたケースにお悩みの経営者の皆様は、ぜひ会社側専門の弁護士にご相談ください。

弁護士 藤田 進太郎

監修者弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. メンタルの病気を理由に業務を断る社員に、仕事を強制してよいですか。

A. まず、断っている業務が本当に病気の影響でできないのか、単なる口実に過ぎないのかを確認する必要があります。診断書と、可能であれば産業医の意見を踏まえ、実際の仕事の状況を照らし合わせて判断してください。口実に過ぎないと判断できるなら、業務を命じ、断れば事実ベースで注意指導してよいでしょう。しかし、本当に病気の影響があるのであれば、強制することが体調悪化につながるおそれがあり、安全配慮義務の観点から慎重な判断が必要です。

Q2. 本人の要望どおりに仕事を選ばせてあげれば、トラブルになりませんか。

A. 一見安全に見えますが、単なる言いなりの対応にはリスクがあります。特定の時間帯に働けない状態の方を、そのまま出社させて働かせ続けると、かえって体調を悪化させてしまうことがあるためです。「働けと言われて体調が悪化した」として、会社の責任を問われるケースも実際にあります。医師の意見を踏まえ、危険があると判断されるなら、本人が働きたいと言っても、しっかり休むよう説得することが大切です。

Q3. 周りの社員の負担が大きくなっています。休ませることはできますか。

A. 労働契約で予定されている程度の労務提供が、長期間にわたって著しくできていないと評価できる場合には、医学的な意見も踏まえて、強制的に休ませて欠勤扱いにすることが選択肢になります。ただし、これは判断の難しい強い手段ですので、必ず弁護士のコンサルティングを受けながら進めてください。そこまでの状態でなければ、負担の軽い業務を続けさせるなど、個別の事情に応じた柔軟な対応を検討することになります。

最終更新日:2026年7月19日


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