問題社員309 すぐに不貞腐れる。

動画解説

この記事の要点

放置しないこと。面倒だからと後回しにすると、注意指導も教育指導もできない職場になってしまう

見過ごせない程度であれば、直ちに会議室に呼ぶなどして指導する

現場に対応能力がないのであれば、人事担当者や役員、中小企業であれば経営者自身が出ていく

現場の対応能力を超えることをやらせようとすれば、現場が潰れてしまう

教育の観点が重要。本人は何が問題なのかを明確に認識しておらず、自動的にそうした態度を取ってしまっていることが多い

わざとではなく、自分で自分をコントロールできていないというケースが少なくない

人事評価は、ありのままにつける。面倒だからと甘い評価をつけてしまうことが、後々の対応を難しくする

評価制度を機能させる気があるのであれば、事実に即した評価を徹底する

1. すぐに不貞腐れる社員がいると、何ができなくなるか

職場では、コミュニケーションがとても大事です。一緒に仕事をしていく上で、話しかけたら気に入らないことがあってすぐに不貞腐れてしまうということでは、協力して仕事を進めることが難しくなってしまいます。

できなくなること

  • 教育指導:まだ仕事を十分に覚えていない社員に「ここは改善しなければいけませんよ」と伝えた途端に不貞腐れてしまうようでは、肝心なことを教えられなくなってしまいます
  • 注意指導:問題行動があったとき、周囲に嫌な思いをさせているときに「それはいけません」と伝えると不貞腐れる。これでは注意指導もしにくくなります

しかし、これをしっかり行わなければ、問題はどんどんエスカレートしていきます。仕事の上でも支障になりますし、周囲も気分が悪くなります。雰囲気の悪い職場になり、周囲の社員も話しかけたくないと思うようになってしまう可能性が高いところです。職場にとって大きなマイナスになりますので、本記事では、すぐに不貞腐れる社員への対処法について解説します。

2. まず、放置しないこと

大事なことの一つ目は、放置しないということです。見過ごせない程度に至っていると感じたら、直ちに会議室に呼ぶなどして、教育指導、注意指導をするようにしてください。

正直なところ、面倒なのです。すぐに不貞腐れる方と話すのは面倒ですから、つい放置しがちになります。しかも、言ってもなかなか改まらなかったりします。「注意して不貞腐れられて、嫌われたら嫌だな」「言ってもどうせ改まらない。前にも言ったが変わらなかったから、言っても無駄だ」。そうなってしまうと、いつまでも状況は改善しません。

現場に任せきりにすると、放置されがちになる

経営者が現場に任せきりにしていると、会社によっては、こうした社員が放置されがちです。対処しても現場にとって良いことはありませんし、自分が矛先になるかもしれない。しかも、対処しても不貞腐れられるばかりで改まらない。疲れるだけだからもうやりたくない、ということになりがちなのです。
これは、経営者がどう対処するのかを考えなければならない問題かもしれません。現場の疲弊を防ぐためにも、誰かが対応しなければならないのです。

3. 現場の対応能力を見極める

現場にやってもらいたいというのが経営者の本音かもしれませんが、そこには対応能力の問題があります。

優秀な先輩や管理職がいる職場では、対応できてしまうものです。すぐに不貞腐れるような社員でも、やる気を出すように持っていったり、注意してある程度まともな行動に導いたりできる職場は、実は多く存在します。だからこそ、問題が表面化しないのです。

しかし、わざわざ弁護士に「すぐに不貞腐れる社員がいて困っている」と相談されるようなケースは、現場に対応能力がないことが多いわけです。となれば、人事担当者、場合によっては中小企業であれば経営者自身や役員クラスの方、対人能力の高い方が出ていって対処しなければならないかもしれません。

現場に対応能力がないと思ったら、「頑張れ」と言ってもできるはずがありません。できる人が出ていって対処しましょう。そうした人材を揃えておくか、経営者自身が頑張るかしなければ、問題が解決しないことがあります。とりわけ中小企業では、そう言えると思います。そして、なかなか改まらないことも多いので、根気も必要です。

4. 教育の観点が大事な理由

次にお伝えしたいのが、教育の観点が大事だという点です。

なぜかというと、自分の行動が問題であることを、うすうす感じてはいても明確に認識していないケースが多いからです。

一般論としては分かっていても、自分の行動としては分かっていない

「不貞腐れてはいけないですよね」と聞けば、「そうですね」と答えるかもしれません。しかし、実際の行動について「これはいけませんよね」と具体的に指摘すると、「いや、それには理由があるんです」と言い返してくることも普通にあります。あるいは、言い返すことすらせず、そのまま不貞腐れてしまうこともあります。
つまり、不貞腐れることが一般論としてはいけないと分かっていたとしても、何が問題なのかをよく理解していないことが多いのです。
しかも、深く考えて不貞腐れているわけではなく、その人の行動として自動的に、いわば自動運転モードで不貞腐れてしまうことが多いわけですから、注意指導をして「はい、分かりました」と言っても改まらないことがあるのです。

ですから、どちらかというと教育の観点、つまりその方が持っている「すぐに不貞腐れてしまう」という悪い癖を直してあげるという観点が大事だと考えます。本人に「直せ」と言っても、改まるはずがありません。どうして不貞腐れるという結果になっているのか、本人には分かっていないのですから。具体的に何が問題で、どうすればよいのかを教えてあげるということです。

5. 「自分基準」で考えるという失敗

ここで、会社側が犯しがちなミスがあります。自分を基準に物を考えてしまうことです。

「自分がその人の立場だったらこうするのに、どうしてこんなことをしてしまうのだろう」。相手の立場になって考えるというところまでできる方は多いのですが、相手の能力、価値観、発想を持った人が相手の立場に置かれたらどう行動するのか、何を考えているのかまで考えてあげられる方は、そう多くありません。その能力を持っていても、面倒だからそこまで付き合っていられないという方もいますし、そもそも相手のことが分かっていない方も多いところです。

マネジメントとは、相手の行動パターンを把握して対処すること

マネジメントをするということは、相手がどんなときに喜び、どんなときに嫌がり、どんなときにどんな行動を取るのかまで把握して対処するということです。本来であれば、マネジメント能力のある管理職は、相手の行動パターンを把握してうまく動かさなければなりません。しかし、そこまでできない方も多くいらっしゃいます。
「自分だったらこんなことはしないのに」「常識で考えたらあり得ないでしょう」で処理してしまうと失敗します。まずは相手基準で、相手はなぜそのような行動を取っているのかという行動パターンを読まなければなりません。

6. わざとではなく、能力の問題であることが多い

わざとではなく、言ってみれば本人の能力の問題であることが多いのです。

「色々分かっているのに、こんな行動を取ってはいけないことも分かっているし、取らないこともできるのに、あえてとんでもない不貞腐れた態度を取っているのだ」と捉えると、判断を誤ることが多いところです。その方の能力からすれば、自動的にそうした態度を取ってしまう。わざとというよりも、本人も自分で自分をコントロールできていないということが多いわけです。

そうした方への対応となると、注意指導ももちろん入ります。職場秩序を乱しているのですから。しかし、それとは別に、教育指導の観点もしっかり捉えなければ、問題の本質を見誤ることになります。

教育指導的な部分まで現場ができるのであれば任せてもよいのですが、できるのであれば、すでにやっているということも多々あります。ということは、こうした難しい相手にも対応できる人事担当者や別の役員、中小企業であれば経営者自身といった、対応能力のある方が対応する必要が出てくるかもしれません。

7. 人事評価は、ありのままにつける

付随的な話として、人事評価についても触れておきます。ありのままに評価するということが、とても大事です。

たまにあるのが、面倒がって高く評価してしまうことです。態度が悪く、不貞腐れてばかりで本当に問題だと心の中では思っているのに、本人との面談の際に文句をつけられるのが嫌なものだから、普通程度の評価にしてしまう。実は問題なのは評価者だった、というケースもあります。

甘い評価が、後になって会社の首を絞める

これは、評価制度が機能しないというだけの問題ではありません。将来、その社員について懲戒処分や退職勧奨、解雇を検討する段階になったとき、過去の人事評価が平均的なものであったという事実は、会社側に不利に働きます。「問題があったと言うが、当時の評価は普通だったではないか」という主張を許すことになるからです。
評価制度を機能させる気があるのであれば、ありのままに評価するようにしてください。評価する立場の方がそれをできないのであれば、評価者研修を行うなど、経営者として準備し、評価のやり方を教え込んで、実際にできるように持っていくことも一つの手かもしれません。

8. 懲戒処分を検討する場合

そのほか、懲戒処分もあり得るところです。職場秩序を乱す状態であれば、懲戒事由に該当するものとして懲戒処分をするのが適切なケースもあります。

ただし、能力の問題であることも多いので、教育指導の観点を忘れず、そうした要素も考慮した上で、それでもやはり職場秩序を乱しており懲戒事由に該当するのだから懲戒処分だ、重さの程度はこの程度だと判断して行うようにしてください。

懲戒処分を行うには就業規則上の根拠規定が必要であり、処分の内容も、行為の性質・態様等に照らして相当なものでなければなりません(労働契約法15条)。教育指導の余地があったにもかかわらず、それを尽くさずに処分を行えば、相当性を欠くと判断されるおそれがあります。このあたりのさじ加減が難しければ、弁護士に相談されることをお勧めします。

9. まとめ

  1. 放置しない、すぐに動く。面倒だからと後回しにすれば、状況は改善しない
  2. 現場の対応能力を見極める。能力を超えることをやらせれば、現場が潰れてしまう
  3. 現場で難しければ、人事・役員・経営者自身が動く。とりわけ中小企業では
  4. 教育の観点を持つ。本人は何が問題なのかを明確には理解していない
  5. 「自分基準」で考えない。相手の能力・価値観を持つ人が、その立場でどう行動するかまで考える
  6. わざとではなく、能力の問題であることが多い。自分をコントロールできていないこともある
  7. 人事評価はありのままに。甘い評価は、後の対応で会社に不利に働く
  8. 懲戒処分を行う場合も、教育指導の観点を忘れない

「なぜ経営者がここまで考えなければならないのか」と思われるかもしれません。しかし、こうした問題のせいで現場の社員たちが疲弊しているケースは、少なくありません。同じ職場で働かざるを得ない社員たちを守るためにも、会社経営者が動かなければならないことがあります。すぐに不貞腐れる社員への対応でお悩みの経営者の皆様は、ぜひ弁護士にご相談ください。

弁護士 藤田 進太郎

監修者弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 不貞腐れた態度を理由に、人事評価を下げることはできますか。

A. できます。人事評価については会社に一定の裁量が認められており、勤務態度や協調性を評価項目としている場合、事実に即して評価することは当然のことです。むしろ、問題があるのに甘い評価をつけてしまうことの方が、後々のリスクになります。もっとも、評価基準が周知されていない場合や、恣意的な運用がなされている場合には、裁量の逸脱として違法と評価されるおそれがあります。どのような行動があったのかを具体的に記録した上で、基準に沿って評価してください。

Q2. 注意指導したら「パワハラだ」と言われました。指導をやめるべきですか。

A. やめるべきではありません。職場におけるパワーハラスメントは、優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより就業環境が害されるものをいいます(労働施策総合推進法30条の2)。本人が不快に感じたという主観的な事情のみで該当するものではなく、業務上の必要性と手段の相当性が客観的に判断されます。必要な指導から手を引けば、周囲の社員に対する責任を果たせません。ただし、人格を否定する発言や威圧的な言動は相当性を欠きますので、事実に基づき、具体的な行動を指摘するという進め方を徹底してください。

Q3. 現場の管理職が疲弊しています。会社として何をすべきですか。

A. まず、対応の主体を現場から引き上げることを検討してください。対応能力を超える負担を現場に負わせ続けることは、その管理職の心身の健康を損なうおそれがあります。会社は労働契約上、労働者が安全に働けるよう必要な配慮をする義務を負っており(労働契約法5条)、これは管理職に対しても同様です。人事担当者や役員、経営者自身が対応の窓口となる、複数名で対応する、対応方針を会社として明示するといった形で、現場を支える体制を整えてください。

最終更新日:2026年7月17日


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