問題社員308 独り言が多い。
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この記事の要点
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まずは問題の程度を評価する。内容、声の大きさ、頻度、場所、時間帯という要素から分析する 独り言には、ほとんど害のないものから、放置できないものまで幅がある。程度に応じて対応を決めていく |
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大きく三つの類型がある。自分でも気づいていない場合、気づいているが止められない場合、意図的に攻撃している場合 どの類型かによって、教育指導なのか、注意指導なのか、直ちに止めさせるべきなのかが変わる |
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怖いからと近づかないのは、最も良くない対応。軽い注意で改まらないのであれば、会議室でしっかり時間を取って話す そこまで踏み込めば、ある程度改善する社員が多い |
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「辞めさせるために注意指導を積み重ねる」というのは、順序が逆である 注意指導も処分も、行動を改めさせるために行うもの。それが失敗した結果として、辞めていただくことになる |
目次
1. 独り言には、害の小さいものから大きいものまである
独り言といっても、その悪質性の程度は様々です。それほど害のない独り言というものも、もちろん存在します。しかし、独り言の内容、頻度、声の大きさ、場所、タイミングなどによっては、状況次第で問題となることもあります。そこで本記事では、独り言が多い社員への対処法について解説します。
ほとんど害のないものから、問題の程度が大きいものまで様々ですので、何よりも最初にすべきなのは問題の程度の評価です。どの程度問題のある独り言なのかを分析することが、スタートラインになります。
2. 問題の程度を評価する五つの視点
評価の視点
| 内容 | 「今日の夕飯は何にしようか」という程度であれば、うるさいと感じても害の程度はほどほどです。しかし、気に食わない同僚の悪口、攻撃するような言葉、それをほのめかす言葉であれば、問題の程度は大きくなりやすいところです |
| 声の大きさ | 周囲に聞こえなければよいのですが、経営者が相談されるような案件は、たいてい周囲にも聞こえる声で言っています。周囲の仕事を妨げる程度の大きな声であれば問題です。とりわけ悪口や批判は、相手に聞こえなければ効果を発揮しませんので、意図的に聞こえるように、少なくとも悪口を言っていると分かる程度の声で話していることもあります |
| 頻度 | 年に1回もないような話であれば、よほどの問題発言でない限り取り上げないという判断もあり得ます。しかし毎日のように言っているのであれば、会社として対処しなければならない案件も出てきます |
| 場所 | 他の社員や顧客のいるところで行うから問題になります。出張先や営業に向かう道中で一人でつぶやいているだけであれば、害の程度は小さいでしょう。問題となるのは、静かなオフィスの中などで周囲に聞こえる独り言を言うケースが多いのではないでしょうか |
| 時間帯 | 就業時間内であれば問題となるものが多くなります。休憩時間であれば、言葉の内容や大きさによる程度問題になりますし、通勤時間となれば私的な時間ですので、会社が口を出すことではないという面もあります。もっとも、会社の名誉や信用を害するようなことを言っているのであれば、止めなければならない場合もあります |
なお、私的な時間中の言動については、企業秩序との関連性が認められる範囲でのみ問題にできるというのが基本的な考え方です。就業時間内の言動と同じ感覚で介入すると、行き過ぎと評価されるおそれがありますので、注意が必要です。
このように、様々な事情を考慮して事実を認定し、それを評価して問題の程度を検討していく作業が必要になります。どの程度悪いものなのか、改善させなければならないものなのか。判断に迷われた場合は、弁護士に相談されることをお勧めします。
3. 類型その1:自分でも気づいていない場合
問題の程度を評価した結果、これは放置できないというものについては、教育指導、注意指導をしていかなければなりません。
ここで注意指導だけでなく教育指導と申し上げたのには、理由があります。独り言は、本人が自分でも気づいていないことがあるからです。しかも、これまでの人生で独り言を自由に言えるような環境で育ってきた方であれば、それが悪いことだとも思っておらず、単に癖になっているだけということもあります。
そのような方については、ニュアンスとしては教育的なものになります。「もっと幼い頃に教えてほしかった」と思われるかもしれませんが、今やってあげれば、もしかしたら改まるかもしれません。習慣として染みついてしまっていることもありますが、大事な社員だと思うのであれば、その都度指摘して、正しく振る舞えるように教育してあげることを考えてもよいかもしれません。もちろん、周囲に迷惑をかけているという要素もありますので、注意指導という言葉でも構いません。
4. 類型その2:分かっているが止められない場合
次に、分かってはいるけれども止められないというケースです。独り言を言っていることには自分でも気づいている。しかし止められない。このようなケースも数多く存在します。
不安、不満、怒りといったものを抱えている方です。プライベートな事情が原因の場合もありますし、特定の同僚や上司、職場に不満を持っているケースもあります。そうした状況で、なおかつ感情のコントロールが得意でない方の場合、それが独り言として出てきてしまうのです。
多くの方は、不安や不満、怒りを抱えていたとしても感情をコントロールし、少なくとも就業時間中に周囲に聞こえる独り言でそれを爆発させることは、めったにありません。しかし、コントロールする力が弱い方もいらっしゃいます。自分でも攻撃的なことを言っていると気づきながら、止められないというケースが存在します。
怖がって近づかないのは、最も良くない
正直なところ、声をかけたら矛先がこちらに向きそうで怖い、と思われるかもしれません。しかし、職場を守るため、周囲で働いている社員たちを守るためですから、注意指導をして止めさせてください。怖がって近づかないというのは、本当に良くありません。
軽く注意しても改まらないような場合は、会議室に呼んで、しっかり時間を取って話す方がよいでしょう。そこまで踏み込んでいただければ、ある程度改善する社員が多いところです。もちろん例外はあり、どうしても改まらないこともありますので、その場合は個別の事情に応じた対応が必要になります。
5. 類型その3:意図的に攻撃している場合
より分かりやすいのが、意図的に攻撃している場合です。特定の同僚や上司を攻撃したくてしかたがない、気に食わない。あるいは職場に対する不満を表明しているということもあるでしょう。
感情的に我慢できないというよりも、これは意図的に行っているケースです。ですから、真っ向から向き合って止めなければ、職場の秩序が損なわれてしまいます。最も早く動く必要性が高い問題であり、企業秩序を乱す行動としての悪質性も高いものと言えます。
注意指導をして、当然に止めさせることになります。軽く注意しても改まらない場合は、会議室に呼んでしっかり話し、改善を促していく必要があります。
6. 席を離す、配置転換を検討する
特定の個人との関係が悪く、その相手を攻撃しているというのであれば、席を離すことも大切です。
被害を受けている社員が「自分が移りたい、異動させてほしい」「同じ部屋でも席を離してほしい」と希望しているのであれば、その方を移すという選択もあり得ます。しかし、被害者の側からすれば「自分が移るのはおかしいのではないか。攻撃している相手を移してほしい」と思うことも当然にあるでしょう。その場合は、正当な理由がないのであれば、基本的には独り言を言っている側の席を移す、配置転換をするという方向で考えていくことになるのではないでしょうか。
実際、被害を受けた側を動かせば、本人にとっては申告したことによる不利益と受け止められかねませんし、他の社員から見ても「声を上げた側が動かされる」という前例となり、会社への信頼を損ないます。基本的には、加害者側の環境を調整する方向で検討すべきです。
7. もはや独り言とは言えない段階
席を離して完全に解決すればよいのですが、せっかく席を離したのに、わざわざ意図的に近づいてきて攻撃的な発言をするということになれば、もはや独り言の域を超えています。それは独り言ではありません。
そこまで至れば、懲戒処分を検討することもあるでしょう。ケースバイケースであり、個別の事情を考慮して判断することになりますが、席を引き離したにもかかわらず自分から近づいてきて喧嘩を売るとなれば、単なる独り言とは言っていられません。むしろ、直接相手に向けた発言と評価すべきニュアンスが極めて強くなってきます。踏み込んだ対応が必要になるかもしれません。
懲戒処分を行うには就業規則上の根拠規定が必要であり、処分の内容も、行為の性質・態様等に照らして相当なものでなければなりません(労働契約法15条)。この段階に至れば、弁護士に相談しながら対処するのが無難です。
その上で、本当に悪質であれば、退職勧奨を行って辞めていただいたり、解雇に踏み切ったりすることもあり得るところです。
8. 注意指導は、辞めさせるための証拠作りではない
ただし、退職や解雇は、行動を改めさせようとして、それがうまくいかなかった結果の問題です。まずは行動を改めさせる、指示に従ってもらう、社員としてしっかり働いてもらう。それこそが会社としてやってもらいたいことなのですから、まずはそれをしっかり行ってください。
順序が逆になっていないか
よく聞くのが、「辞めさせるために注意指導を積み重ねていくのですよね」というお話です。それは逆です。
辞めさせるために注意指導や処分を積み重ねていくのではありません。注意指導をして、処分も行って、改めさせようとしたけれども失敗してしまった案件、とうとう最後まで改まらなかった案件について、辞めていただくのです。方向性を逆に考えてしまうと、本末転倒のアリバイ作りのようになってしまいます。
これは、心構えの問題にとどまりません。退職に追い込むこと自体を目的とした注意指導や処分は、業務上の必要性という裏付けを欠くことになり、動機・目的が不当であるとして、注意指導や処分そのものが違法・無効と評価されるおそれがあります。「証拠を残しておく」つもりで積み重ねたものが、かえって会社に不利な証拠になりかねないのです。
本で読まれたのかもしれませんが、辞めさせるために注意指導や処分を積み重ねて証拠を残しておく、という方が結構いらっしゃいます。本末転倒だと日頃から感じているところです。
改善を目的として適切に注意指導を重ね、それでも改まらなかった。その経過が記録として残っていれば、結果として、後の段階でも会社を守る材料になります。目的が正しければ、記録は自然についてくるのです。
9. まとめ
- まず問題の程度を評価する。内容、声の大きさ、頻度、場所、時間帯から分析する
- 気づいていない場合は、教育指導という発想で。癖になっているだけであれば、改まることもある
- 止められない場合も、怖がらずに注意指導する。会議室でしっかり話せば、多くは改善する
- 意図的な攻撃であれば、最も早く動く必要がある。企業秩序を乱す行動としての悪質性が高い
- 席を離す、配置転換を検討する。基本的には、独り言を言っている側を動かす
- 席を離しても近づいて攻撃するなら、もはや独り言ではない。懲戒処分を検討する段階
- 注意指導は、辞めさせるための証拠作りではない。改めさせるために行い、失敗した結果として退職に至る
独り言は、害の小さいものから、もはや独り言の領域を超えた攻撃的な発言に近いものまで存在します。だからこそ、程度の分析が極めて重要です。その程度に応じて、対処すべき行動を決めていくという発想で臨みましょう。判断に迷う案件でお悩みの経営者の皆様は、ぜひ弁護士にご相談ください。
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 独り言というだけで、注意指導をしてもよいのでしょうか。
A. それが業務に支障を生じさせ、あるいは他の社員の就業環境を害しているのであれば、注意指導は業務上必要かつ相当な行為です。逆に、ほとんど害のない独り言まで一律に禁じるような指導は、必要性を欠くと評価されるおそれがあります。だからこそ、内容・声の大きさ・頻度・場所・時間帯から問題の程度を評価し、「なぜ改めてもらう必要があるのか」を業務上の支障として説明できる状態にしてから臨むことが大切です。
Q2. 注意指導の記録は、どのように残せばよいですか。
A. いつ、どこで、どのような発言があり、誰にどのような支障が生じたのか。そして、誰が、どのような内容を伝え、本人がどう反応したのか。これらを簡潔に記録してください。面談後すぐに上司や顧問弁護士へメールで報告しておく方法は、後から日付を遡らせることができないため、客観的な証拠として価値が高い方法です。ただし、記録はあくまで改善を目的とした指導の副産物であり、記録を残すこと自体が目的化しないようご注意ください。
Q3. 他の社員から「あの人の独り言が怖い」と相談を受けました。どう対応すべきですか。
A. まず、どのような発言が、どの程度の頻度であるのかを具体的に聴取し、記録に残してください。他の社員にも聞こえているのであれば、その社員からも確認します。内容が特定の社員への攻撃や威嚇に及んでいるのであれば、就業環境を害する言動として、速やかに対応する必要があります。会社は労働者が安全に働けるよう配慮する義務を負っていますので(労働契約法5条)、相談を受けながら放置することは避けなければなりません。相談してきた社員が不利益を受けることのないよう、進め方にも配慮してください。
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最終更新日:2026年7月17日