部長には残業代を支払わなくて良いのですか。
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「部長」という役職名だけで残業代を支払わなくてよいわけではない 残業代(時間外・休日割増賃金)の支払義務が免除されるのは、労基法41条2号の「管理監督者」に該当する場合のみです。管理監督者かどうかは役職名ではなく、実態で判断されます。 |
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管理監督者と認められるには3つの実態要件を満たす必要がある ①経営者と一体的な職務内容・権限があること、②出退勤・労働時間に裁量があること、③一般労働者と明確に異なる処遇(待遇)があること、の3要件を実態として満たすことが必要です。 |
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管理監督者にも深夜割増賃金の支払義務がある 管理監督者に該当した場合でも、深夜労働(午後10時〜午前5時)に対する25%の割増賃金の支払義務は免除されません。 |
目次
01「管理監督者」とは何か(労基法41条2号)
「部長」「課長」などの役職の社員に対して残業代(時間外・休日労働の割増賃金)を支払わなくてよいかどうかは、役職名だけで決まるものではありません。
労基法41条2号は、「労働時間・休憩・休日に関する規定が適用されない者」として「監督若しくは管理の地位にある者」を定めています。これが「管理監督者」です。管理監督者に該当する場合は、時間外割増賃金・休日割増賃金の支払義務が免除されます。
ただし、肩書だけで管理監督者になるわけではありません。行政解釈・裁判例は、管理監督者かどうかを役職名ではなく実態に基づいて判断することを明確にしています。「部長」「課長」という役職であっても、実態として管理監督者の要件を満たしていなければ、通常の社員と同様に残業代を支払う必要があります。
02管理監督者と認められるための3要件
管理監督者として認められるためには、以下の3つの要件を実態として満たすことが必要です。
管理監督者と認められるための3要件
① 経営者と一体的な職務内容・権限があること
単に部下を管理するだけでなく、経営者と一体的に労務管理等の職務を担っていることが必要です。採用・人事評価・異動の決定等への実質的な関与など、経営判断に近い立場であることが求められます。現場の管理・監督をするだけで、経営上の重要な意思決定に関与していない者は、この要件を満たしません。
② 出退勤・労働時間に裁量があること
定時出社・退社の管理を受けず、自ら業務時間を決められる裁量があることが必要です。タイムカード等で出退勤を厳格に管理されている場合は、この要件を満たしにくくなります。
③ 一般労働者と明確に異なる処遇(待遇)があること
役職手当が支給されているという形式的な待遇にとどまらず、その職務の重要性に見合った総合的な処遇が一般労働者と明確に異なることが必要です。残業代が支払われないことと引き換えに十分な報酬が保障されているかという観点から総合評価されます。
03管理監督者にも深夜割増賃金は必要
管理監督者に該当すると、時間外割増賃金・休日割増賃金の支払義務は免除されます。しかし、重要な例外があります。
深夜労働(午後10時〜翌午前5時)に対する25%の割増賃金は、管理監督者であっても支払う義務があります(労基法37条4項)。「管理職だから夜間労働の割増も不要」という誤解は、未払賃金請求につながるリスクがあります。
管理監督者が深夜に業務を行った場合は、その時間に対して25%の割増賃金を必ず支払ってください。
04「役職名=管理監督者」と判断してはいけない理由
「部長という役職だから残業代不要」「課長だから管理職だろう」という判断は、実務上非常に危険です。裁判例・労働基準監督署の運用では、先述の3要件を基に実態を総合的に評価するため、役職があっても管理監督者と認められないケースが多く見られます。
典型的に管理監督者と認められにくいのは、①採用・人事評価権限がなく現場の作業管理にとどまっている「名ばかり管理職」、②タイムカード等で出退勤を管理され、裁量がない「名ばかり部長」、③役職手当が支給されているが、手当を差し引くと一般社員より時間当たり収入が低い「割に合わない役職者」などです。
このような実態の管理職に残業代を支払っていない場合、後から多額の未払残業代を請求されるリスがあります。
05会社経営者が取るべき実務上の対応
自社の管理職(部長・課長等)が管理監督者に該当するかどうかを、実態に基づいて確認することが必要です。確認にあたっては、以下の点を文書化して客観的な根拠として残しておくことをお勧めします。
①経営上の重要事項(採用・人事評価・重要な業務方針の決定等)への実質的な関与の有無と程度、②出退勤管理の状況(タイムカードの有無・上司による出退勤チェックの有無等)、③役職手当等の処遇の内容と一般社員との差異です。
管理監督者に該当しないと判断される場合は、速やかに残業代の支払を開始することが必要です。過去の未払分についても確認が必要になる場合があります。制度設計の見直しは、使用者側弁護士と相談のうえ進めることをお勧めします。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. 当社の部長は役職手当(月5万円)を受けていますが、タイムカードで出退勤を管理しています。管理監督者として残業代を支払わなくてよいですか。
A. タイムカードで出退勤を管理されているということは、出退勤の裁量がないことを示す一事情となります。管理監督者の要件②(出退勤・労働時間の裁量)を満たさない可能性が高く、管理監督者とは認められないリスがあります。役職手当が支給されているだけでは要件③(処遇の実質)も十分ではない場合があります。現状では残業代を支払う必要があると判断される可能性がありますので、弁護士に確認することをお勧めします。
Q2. 管理監督者として扱ってきた者が、実は要件を満たしていなかった場合、過去の残業代はどうなりますか。
A. 管理監督者と認められない場合、過去の時間外・休日労働に対する割増賃金が未払いとなります。未払残業代の請求権は原則として過去3年分(令和2年3月31日以前の分は2年分)遡ることができます。退職した社員が弁護士を通じて請求してくることもありますので、早急に実態を確認し、問題がある場合は弁護士に相談することをお勧めします。
Q3. 管理監督者に休日出勤させた場合、割増賃金は不要ですか。深夜以外の時間帯の休日出勤の場合はどうなりますか。
A. 管理監督者に該当する場合、休日割増賃金(35%割増)の支払義務は免除されます。これは深夜以外の時間帯の休日出勤については適用されます。ただし、休日出勤が深夜(午後10時〜翌午前5時)に及んだ場合は、その深夜部分については25%の深夜割増賃金の支払が必要です。管理監督者に免除されるのは時間外割増と休日割増のみであり、深夜割増は常に支払義務があることに注意してください。
最終更新日:2026年2月25日