近年、従業員の残業代の支払い方法として「定額残業代」(いわゆるみなし残業代)制度を導入する企業が増えています。ただし、この制度が割増賃金(残業代)の支払いとして法的に有効になるためには、明確な要件を満たす必要があります。条件を満たさずに運用すると、未払い残業代の請求や労働基準監督署からの指導といったリスクにつながるため注意が必要です。

定額残業代(みなし残業代)とは?

 定額残業代とは、あらかじめ「一定時間分の残業代」を固定額として給与に含めて支払う仕組みのことです。通常は、基本給や各種手当とは別に、月に決められた残業時間分の賃金を見込みで先に支給します。超過した分は別途支払う必要があります。

 この仕組み自体は違法ではありませんが、割増賃金として認められるためには次に説明する要件を満たす必要があります。

割増賃金として認められるための2つのポイント

1. 「明確区分性」があること

 定額残業代として支給する時間分と、それ以外の賃金が明確に区別されている必要があります。具体的には、労働契約書や就業規則に次の項目を記載し、区分がはっきりしていることが求められます。

  • みなし残業時間数

  • みなし残業代として支払う金額

  • 対象となる残業時間の種類(時間外・深夜・休日 など)

 この区分が曖昧だと、支給された賃金すべてが基本給とみなされ、残業代の支払が不十分と判断される可能性があります。

2. 「対価性」が認められること

 定額残業代は、**残業代の代わりに支払われる賃金であること(対価性)**が必要です。つまり、みなし残業として支払われる金額が、実際に想定される残業に対する対価として合理的であることが前提になります。

 単に管理の便宜や給与コストの先読みとして支給しているだけでは、実際の割増賃金としては認められません。残業の実績と比較して不当に低い金額が設定されている場合も、後に不足分の未払い残業代請求につながるリスクがあります。

定額残業代制度の運用上の注意点

超過時間分の割増賃金支払い

 定額残業代として設定した時間数を超えて残業が発生した場合には、超過分の残業代を別途支払う義務があります。超過分を支払わない運用を続けると、未払い残業代の請求や労基署指導の対象になる可能性が高まります。

契約書・就業規則への明確なルール記載

 定額残業代制度を有効にするためには、労働契約書や就業規則に、みなし残業時間や対象時間帯・支給条件などを明示しておくことが重要です。記載がないと、裁判や監督指導の場で「制度自体が労使で合意されていない」と判断されるリスクがあります。

まとめ:正しく設計・運用しないとリスクに

 定額残業代(みなし残業代)制度は、制度設計を誤ると未払い残業代請求や労務トラブルに発展しやすいテーマです。割増賃金として有効にするための要件は以下の2点です。

  1. 支給される定額部分と基本給等が明確に区分されていること

  2. 支給される定額部分が残業の対価として合理的であること

 さらに、超過分の割増賃金を確実に支払うこと、契約書・規則類に制度内容を明記しておくことが必要です。会社経営者としては、制度導入前に社内ルールの整備と労務リスクの洗い出しを専門家とともに進めることをおすすめします。

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