パワハラを行ったのに今の部署で働き続けたいと言い張る

 

FOR COMPANY OWNERS

パワハラを行ったのに
今の部署で働き続けたいと言い張る社員
対処法。

 パワハラを行った社員に指導したところ、最初は反省した様子だったのに後になってから「自分は悪くない」と言い出した。被害者との関係も悪化しており、このままでは被害者が退職してしまう可能性がある。会社としては加害者を配置転換させたいが、本人は今の部署で働き続けたいと言い張っている。本ページでは、このような場面での具体的な対処法を、会社側専門の弁護士が解説いたします。


VIDEO

本ページの基となる解説動画

 

 本ページの解説内容は、以下の藤田進太郎弁護士による解説動画を素材として、当事務所が文章化しているものです。本ページの記載と動画の内容に齟齬がある場合や、より詳しい解説をご覧になりたい場合は、動画を直接ご視聴ください。

CHAPTER 01

可能な限り速やかに配置転換を行う

 

加害者を配置転換させるのは通常の対応

 パワハラ事案において加害者を配置転換させるというのは通常の対応です。会社がまっとうなことをやろうとしているわけですから、それ自体は正しい判断です。しかし加害者本人が「今の部署で働き続けたい」と言い張っている場合、パワハラをやるような方ですから説得も大変そうですし、話し合いでうまくいかないかもしれないと相談したくなる気持ちはよく分かります。

 ただ、加害者のパワハラのせいで被害者が退職する可能性があるところまで見えているのであれば、先に対応しなければなりません。本当に退職させてしまったらかわいそうです。色々思うところや考えるところはあるかもしれませんが、結論としては可能な限り速やかに配置転換を行うべきです。1日も早く引き離す必要があります。

配置転換まで日数がかかる場合の暫定対応

 何らかの理由で配置転換まで日数を要する場合でも、加害者と被害者を引き離す必要がある事案だと思います。このまま被害者が退職してしまう可能性があるわけですから、手を打たないわけにはいきません。

 まず考えられるのは自宅待機です。この場合、原則として賃金は会社が負担することになりますが、配置転換までの間、家で大人しくしていただくことで被害者を守ることができます。パワハラの程度があまりにもひどくて重い懲戒処分を行うような事案であれば、出勤停止処分として対応し、その日数分出勤させないという方法もあります。

 それも事案の性質上違うなと思われるのであれば、出勤させたまま厳重に監視するという方法もあります。社長ご本人ができないのであれば管理職にしっかり監視させて、2人が鉢合わせしないよう最善の努力をしてください。もしそういったことのできるようなオフィスの作りになっていて人員も十分にあるのであれば、一つの選択肢になり得ます。

CHAPTER 02

説得してダメなら「打診」ではなく「命令」を出す

 

まずは会議室に呼んで具体的に説得する

 まず会議室に呼んで説得しましょう。「なんで今の部署にいなければならないのですか」と具体的な理由を聞いてください。本人の言い分をしっかり聞いた上で、こちらも配置転換が必要な理由を具体的に日本語で表現して説明することが大切です。本人にだけ言わせておいて、こちらは抽象的なことをちょろっと言っただけで終わりでは、相手が納得するわけがありません。

 すぐに思いつくのは被害者の方のことです。被害者との人間関係が悪くなっていて退職するかもしれない状況であること、今後一緒に協力して仕事していくのは困難であること。そういった話を具体的にしてください。具体的な事実をベースに具体的な理由を話して説得活動をまずやりましょう。配置転換に値する程度のパワハラを実際にやっているのであれば、説得に応じるケースも多いです。中には聞き分けない人がいるのは分かりますが、「どうせ言っても無駄だ」と思い込んで説得活動を省略してはいけません。

「打診」と「命令」は違う

 いくら説得活動をやっても応じない方は一定割合でいらっしゃいます。いつまでもだらだら日にちの先伸ばしにするわけにはいきませんので、本人からの同意が得られないまま人事異動の「命令」を出すのが原則的な対応です。

 ここで大事なのは、「打診」ではなく「命令」だという点です。打診というのは、応じるか応じないかは本人の自由です。「嫌です」と言ったって構わないわけです。あなたの意向はどうなのと聞いているだけですから、嫌だと答えたところで命令違反にはなりません。もし本当に移そうと本気で思っているのであれば、しっかり人事異動の命令を出してください。辞令を交付するところまでやって、「これは命令です」ということを明確にすることが大事です。

命令を出して大丈夫なのか、という懸念について

 「命令を出して本当に大丈夫ですか、命令が無効になったら困ります」という不安を持たれる方もいらっしゃるでしょう。当然、命令は有効であるかどうかを確認した上で出すことになります。確認すべきポイントは主に2つです。

 1つ目は人事異動の権限があるかどうかです。職種限定の合意があったり、採用の経緯や勤務の実態から担当業務の限定が認められてしまうと、権限がないことになりますので別の仕事に移せないことがあります。正社員については権限自体はあることが多いですが、特殊な仕事の中身や採用の仕方をしている場合、パート・アルバイトの方の場合は権限自体がないこともありますので確認が必要です。

 2つ目は権利濫用に当たらないかです。配置転換の必要性があるのか、不当な動機・目的に基づくものではないのか、通常甘受すべき程度を超える不利益を負わせるものではないか、といった点をチェックします。パワハラをしたので被害者と引き離す必要があるという事案であれば、必要性は認められることが多いですし、不当な動機・目的もないと言ってもらえるのが通常です。よく分からなければ弁護士に確認してもらいましょう。

CHAPTER 03

懲戒処分をしっかり行うことの重要性

 

口頭の指導だけで懲戒処分をしていない会社が多い

 今回のケースで気になるのは、会社が懲戒処分をしているかどうかです。「指導したところ」とだけ書いてあって、懲戒処分をしていない可能性があります。しかし被害者との関係が相当悪化しており退職してしまう可能性があるぐらいひどい状況なのであれば、それなりに重大なことをやったのかもしれません。

 問題が大きくても懲戒処分を行わないという企業文化の会社もあります。「うちは過去10年でも大事件の1件だけしか懲戒処分をやったことがない、大体話し合いで終わりにしている」という会社もあるのです。しかしパワハラ事案ではしっかり適正な重さの懲戒処分を行うことをおすすめします。その理由は3つあります。

理由1:けじめになる

 懲戒処分はけじめになります。会社として企業秩序を守るためにやるべきことをきっちりやったのだという姿勢を示すことができます。問題を起こすような人がいたのにしっかり懲戒処分もできない社長だったら、頼りないと思う社員が出てきても不思議ではありません。「社員に優しい社長だから処分しないんだ」と言っていても、優しい相手は加害者であって、被害者たちに本当に優しい社長と言えるのでしょうか。しっかり懲戒処分をすることで、会社に対する信頼、社長に対する信頼を確保することができます。

理由2:被害者感情への配慮になる

 被害者の立場になって考えてみてください。「会社がしっかり処分してくれた」とわかれば、我慢できる、納得したという気持ちになることもあります。しかし結局会社は何も動いてくれなかった、あるいは動いてはくれたが懲戒処分にも値しない程度のものという評価なのかと思ったら、会社に対して不信感を持ちます。それこそ退職してしまうかもしれません。正義が実現されたということが被害者の方にちゃんと伝わるようにしてあげる必要があります。

理由3:加害者へのメッセージになる

 適正な重さの懲戒処分を行うことは、加害者に対して「あなたは懲戒処分に値するぐらい重大なパワハラをしたのですよ」というメッセージにもなります。今回のケースでは、指導した時は反省した様子だったのに後になってから自分は悪くないと言い出して、今の部署で働き続けたいと言っているわけです。

 もしかしたら、加害者は心の中でこう思っているのかもしれません。「多少問題があったかもしれないが、そんな大きな問題になるようなことを自分はやっていない。その証拠に会社はただ口頭で注意しただけで懲戒処分も譴責処分すらやっていない。譴責にも値しない程度の事案で、もう何年もいたこの部署から移されていいものか」と。つまり、懲戒処分をしなかったことが、加害者に問題を軽く考えさせてしまっている可能性があるのです。もしかしたらきっちり事案に応じた適正な重さの懲戒処分をやっていれば、「今の部署で働き続けたい」とは言い出さずに済んだかもしれません。

CHAPTER 04

命令に従わない場合は解雇も視野に

 

有効な命令に従わないのは重大な非違行為

 有効な人事異動命令に従わない場合は、解雇も視野に入ってきます。特に正社員で人事異動の権限もあって濫用にもならないような命令に従わないというのは重大な非違行為です。しっかり説得活動をやった上でのことであれば、解雇が有効になることが多いタイプの事案です。ただし、いきなり何の話もせずに解雇したらダメかもしれません。適正な対応を弁護士に相談しながら日をかけて説得活動をやっていった上での解雇であることが重要です。

弁護士への相談は「セーフかアウトか」だけで終わらせない

 弁護士への相談で「問題ありますか、ないですか」「アウトですか、セーフですか」という確認が非常に多いのですが、それだけで終わらせてはいけません。問題のない対応をすることは当然やるべきことですが、そこをゴールにしてしまうと、どんどん消極的でネガティブな対応に縮こまってしまい、有効で役に立つ行動が取れなくなってしまいます。

 考えなければならないのは、目の前の問題のある社員に対してどういったことを言ったりやったりするのが効果が高いかです。教育効果や会社の秩序を守るために最も効果が高い方法は何なのか。そこまで踏み込んで弁護士に相談してください。

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CHAPTER 05

当事務所のサポート体制と監修者

 

 弁護士法人四谷麹町法律事務所は、会社側(使用者側)専門の法律事務所として、パワハラ加害者への配置転換、懲戒処分通知書の作成、被害者対応、配置転換命令の有効性の確認、命令に従わない場合の解雇判断まで、日常的にサポートしています。

 被害者が退職する可能性もあるような事案では、緊急に対応しなければなりません。弁護士がZoomやTeamsで短時間の打ち合わせを繰り返しながらタイムリーに伴走します。加害者への説得で使う日本語を一緒に整えることもできますし、懲戒処分通知書も事情をよく説明していただければ弁護士が作成します。会社の名前で交付するものですから、弁護士の名前は表に出てきません。事情をお聞きした上で作成をご協力できますので、ご相談ください。

弁護士 藤田 進太郎

監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

パワハラ問題でお悩みの会社経営者の皆様へ

まずは経営労働相談までご連絡ください。事務所会議室でのご相談、Zoom・Teamsでのオンライン相談、いずれも対応しています。

経営労働相談のお問い合わせ

FAQ

よくあるご質問

 

Q. 加害者が配置転換を拒否しています。本人の同意なしに移せますか。

 「打診」ではなく「命令」を出してください。正社員で人事異動の権限があり、パワハラによる配置転換という必要性がある場合は、本人の同意がなくても有効な命令として実行できることが多いです。権限の有無や濫用に当たらないかについて不安がある場合は、弁護士に確認してから命令を出してください。

Q. 懲戒処分をしないまま配置転換だけしてもいいですか。

 配置転換だけでも被害者を守る効果はありますが、懲戒処分をしないと加害者が問題を軽く考えてしまう可能性があります。けじめとして、被害者感情への配慮として、そして加害者へのメッセージとして、事案に応じた適正な重さの懲戒処分を行うことをおすすめします。やり方が分からない場合は弁護士にご相談ください。

Q. 配置転換まで日数がかかりそうです。その間どうすればいいですか。

 被害者との接触を避ける必要がありますので、自宅待機(原則として賃金は会社負担)させるか、パワハラの程度が重い場合は出勤停止処分も検討できます。出勤させる場合は管理職に厳重に監視させて、2人が鉢合わせしないよう最善の努力をしてください。

Q. 配置転換命令に従わない場合、解雇できますか。

 有効な人事異動命令に従わないのは重大な非違行為ですので、解雇も視野に入ってきます。ただし、いきなり解雇するのではなく、しっかり説得活動を行った上で、弁護士に相談しながら適正な手順を踏むことが重要です。

Q. 遠方の会社ですが、相談できますか。

 対応しております。事務所会議室での対面相談のほか、ZoomやTeamsによるオンライン相談を実施しており、日本全国各地の会社経営者からのご相談を承っています。

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