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本ページの基となる解説動画
本ページの解説内容は、以下の藤田進太郎弁護士による解説動画を素材として、当事務所が文章化しているものです。
「評価」ではなく「事実」で立証する
「出来が悪い」は事実ではなく評価
相談にいらっしゃる社長さんを見ていると、「どんな事実があって能力が低いと言えるのか」をいつのことなのかまで準備していらっしゃる方は多くありません。「能力が低い」「出来が悪い」というのは「評価」であって、客観的な「事実」ではありません。評価だけ本人に伝えても、「嫌いだから嫌がらせでこんなことを言っているのではないか」「パワハラだ」と受け止められてしまうことがあります。
「周りの社員がみんなあの人はダメだと言っている」と説明される社長さんもいらっしゃいます。社長だけがそう思っているのと比べると客観性は出てきますが、相手の立場からすれば「周りがみんなおかしなことを言っているだけだ」「先輩に聞いたら頑張りなさいと励ましてもらった、全然能力不足じゃないんだ」と思っていたりするのです。
「事実」とは具体的なエピソードのこと
ここでいう「事実」とは、何月何日の何時頃、どこで、どのように、何をやったのか(あるいはやらなかったのか)という実際に起きた出来事のことです。「出来が悪い」も事実だと思っている方がいらっしゃるかもしれませんが、それは評価です。一体どんな出来事があったのかを踏まえて、その事実があるからこういった能力が足りないという評価になるんですよ、というルートをしっかり確立することが大切です。
裁判になった場合、裁判官が興味を持つのは事実です。評価は人によって見方が違いますから、同じ事実があっても「問題だ」「問題じゃない」という押し問答になりやすいのです。しかし、どんな事実がたくさんあったのかを示すことができれば、「これだけの事実があるのであれば能力不足という評価は当然ですよね」という話になっていきます。
「みんな証言してくれます」では裁判に勝てない
「能力が低いということはみんな証言してくれるので大丈夫です」とおっしゃる社長さんもいらっしゃいます。しかし、それだけでは裁判には勝てません。「みんなそういう評価をしている」ということと、「具体的にどんな事実があったのか」は別の問題です。他のとっかかりと合わせ技でないと能力不足を立証できないことも多いのです。どんな事実があったのかをしっかり見ていただいて、それをどのように改善させようと指導したのかも記録しておくことが重要です。
具体的な事実は教育指導の効果も高める
抽象的な指導では能力不足の方には伝わらない
具体的な事実を伝えるというのは、単に裁判対策としてだけ大事なのではありません。教育指導の効果を高めることにも直結します。能力不足系の社員の場合、抽象的な指導はほぼ役に立ちません。そもそも抽象的な日本語を理解して行動に移せる方は、大体すでに仕事ができる方です。
社長が「この人は能力不足だな」と思っているような方や、周りの方々が「この人と一緒に仕事するのは辛いです、尻拭いばかりさせられて大変です」と言ってくるような方に対しては、抽象度の高い教育指導はほぼ役に立ちません。「こういったことがあった時は、この手順でこういったことをやってください」と具体的に説明する必要があります。
言葉で伝わらなければ、やってみせる
言葉を行動に転換するというのも一つの能力です。言葉で聞いても分からない方は結構いらっしゃいますので、実際に目の前でやってみせるということも必要になることがあります。「なんでそこまでやらなきゃいけないのか」と思われるかもしれませんが、やってみせることで「なんとなく分かりました」となって、ある程度はできるようになるケースもあります。
こうした具体的な行動に対して具体的なアドバイスをする、やってみせるということを繰り返していると、事実に基づいて考えるという癖がつきます。「何月何日の何時頃、誰々さんがこのようにやるべき仕事をやらなかった。そこで私はこういった教育指導をした。本人はすぐには理解できなかったので目の前でやって見せた」。このように記録していくと、教育指導の記録がそのまま能力不足を裏付ける事実関係にもなっていくのです。
教育指導の効果が高ければ、そもそも裁判にならない
具体的な事実を踏まえた丁寧な教育指導をしっかりやっている会社は、教育指導自体の効果が高いですから、そもそもやめてもらう必要がなくなることもあります。優秀な社員とまでは言わないまでも、問題ない程度にまで改善したという結果になることもあるのです。昨今の求人が大変な時期ですから、やめてもらってまた新しく人を取ってくるよりも、まあまあ働けるぐらいになってもらえれば助かったというケースもあります。
試用期間中の記録の取り方
試用期間中は本採用後よりも手間をかけて記録する
証拠としてどんなものが必要かといえば、やはり試用期間中の記録はしっかりあった方がよいです。試用期間を経過して本採用になると、もう入場券は渡している状態ですから、メインは試用期間中の能力チェックということになります。試用期間の3ヶ月なり6ヶ月なりの期間は、本採用後と比べてもう少し手間をかけてチェックすることが大切です。
毎日1枚、業務遂行状況を記録する
具体的には、毎日1枚でもいいので、その日の業務遂行状況と本人の感想を書かせたものを提出させることをおすすめします。それを直属の上司や先輩が確認して、客観的に本当にあったことに対する率直な感想や評価を記載するということを繰り返していきます。
その際、無駄に褒めてはいけません。できていないのに褒めると嘘をついたことになってしまい、後でトラブルの原因になります。しかし、しっかりできたところは褒めて構いません。大事なのは「ちゃんと見ていますよ」というメッセージを伝えることです。実は褒めなくても、ちゃんと見ていますよということを伝えるだけでも本人のやる気が出たりするものです。
改善すべき点は逃げずに伝える
人はポジティブなことは伝えやすいものですが、職場では耳の痛いことも伝えなければなりません。嫌われるのではないか、パワハラと言われたら嫌だな、という気持ちはよく分かりますが、これは仕事です。社長自身の仕事でもありますし、管理職の方の仕事でもあります。改善すべき点がある場合は、礼儀正しく、しかし率直に、具体的にどのような点が問題でどうしなければならないのかを、逃げずに伝えるようにしてください。
よく見てくれている人に言われるのと、よく知りもしないのにダメだという人では、相手の感じ方が全然違ってきます。よく見てあげて、事実を踏まえて能力不足かどうか評価し、本人にそれをしっかり具体的に伝えてあげるようにしてください。
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当事務所のサポート体制と監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所は、会社側(使用者側)専門の法律事務所として、能力不足社員への対応を日常的に取り扱っています。能力不足を裏付ける事実の整理、記録の取り方の設計、教育指導の具体的な日本語の使い方まで、問題社員対応に慣れた弁護士がZoomやTeamsで短時間の打ち合わせを繰り返しながら伴走します。
手間暇のかかる大変な作業に感じるかもしれませんが、このようなことをやることで能力不足と思われていた方が成長することもありますし、やめてもらうことになった場合でも、周りで負担を重く感じて辛い思いをしている同僚や先輩方を助けることにもなります。
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
能力不足社員への対応でお悩みの会社経営者の皆様へ
まずは経営労働相談までご連絡ください。事務所会議室でのご相談、Zoom・Teamsでのオンライン相談、いずれも対応しています。
よくあるご質問
Q. 周りの社員がみんな「あの人は能力が低い」と言っていれば、それで立証できますか。
それだけでは不十分です。「みんなそう思っている」というのは評価であって、具体的な事実ではありません。何月何日にどのような業務ができなかったのか、どのような教育指導をしたのかという具体的な事実を記録しておく必要があります。
Q. 記録はいつから取り始めればいいですか。
少なくとも試用期間中は毎日記録を取ることをおすすめします。本人にその日の業務遂行状況と感想を書かせ、上司がコメントを付けるという形式が効果的です。試用期間は本採用の可否を判断する期間ですから、本採用後よりも手間をかけてチェックする価値があります。
Q. 具体的な事実を伝えるとパワハラになりませんか。
仕事と関係のある具体的な事実を的確に伝えてパワハラになることはほとんどありません。むしろ「出来が悪い」「ダメだ」といった抽象的・評価的な言葉だけを伝える方がパワハラに近づきます。具体的な事実を礼儀正しく伝えることが、教育効果も高く、パワハラとも評価されにくい指導の仕方です。
Q. 遠方の会社ですが、相談できますか。
対応しております。事務所会議室での対面相談のほか、ZoomやTeamsによるオンライン相談を実施しており、日本全国各地の会社経営者からのご相談を承っています。
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