出向・転籍に応じない社員の対処法

 

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出向・転籍に応じない社員の対処法。
在籍出向と転籍の違い・命令の有効要件から
説得活動のポイントまで会社側専門の弁護士が解説します。

 他社に出向させたい、グループ会社に転籍させたいが社員が応じない。出向と転籍は法的性質が根本的に異なり、対応も大きく変わります。在籍出向は要件を満たせば命令できる場合がありますが、転籍は必ず本人の同意が必要です。本ページでは、出向・転籍それぞれの法的整理と、社員が応じない場合の実務上の対処法を、会社側専門の弁護士が解説します。

VIDEO

弁護士藤田進太郎による解説動画

 

 本ページは、当事務所代表弁護士藤田進太郎による解説動画「出向・転籍に応じない社員の対処法」を素材として文章化したものです。より詳しい解説をご覧になりたい場合は、動画を直接ご視聴いただけます。

本ページの要点

 出向(在籍出向)と転籍は根本的に異なります。在籍出向は元の会社に雇用されたまま別の会社で指揮命令を受けるもので、就業規則等に権限の根拠があれば命令できる場合があります(ただし乱用に当たらないか、実績があるか等の確認が必要)。これに対して転籍は雇用主そのものが変わるものであり、必ず本人の同意が必要です。一方的な転籍命令は法的に無効です。どちらの場合も、なぜ出向・転籍が必要なのか、いつ戻ってくるのか、条件はどうなるのかを丁寧に説明し、説得して同意を得ることが実務上の基本的な進め方となります。

CHAPTER 01

出向と転籍の根本的な違い

 

普通は雇い主の会社で指揮命令を受けて働く

 雇用関係というのは通常、雇ってもらっている会社の指揮命令に従って働くというものです。雇い主の指示のもとで業務を行う。これが普通の姿です。受託や業務委託で他社の仕事をやったとしても、指揮命令の主体はあくまでも雇い主であり、お客様ではありません。お客様が指揮命令をしてしまったら、それは偽装請負になってしまいます。

 出向と転籍を理解する上で最初に押さえておくべきは、この「雇い主と指揮命令の主体」という視点です。社内での職種変更や転勤、配置転換は、指揮命令の主体が同じ会社で変わらないという点で、出向・転籍とは大きく異なります。

在籍出向:雇い主はそのまま、指揮命令の主体が変わる

 在籍出向というのは、元の会社に在籍したまま(雇用関係は元の会社のまま)で、別の会社に出向して、その出向先の指揮命令を受けて働くという仕組みです。雇い主は変わらないが、日々の指揮命令の主体が出向先に変わるという点に大きな特徴があります。

 給料が変わらない場合は転勤に近いイメージで理解することができます。一方で、出向先でしばらく働くことになりますから、いずれ戻ってくるのかどうか、どのくらいの期間なのか、という点が本人の大きな関心事になります。

転籍:雇い主そのものが変わる

 転籍というのは、現在の会社から別の会社に雇用主を変更することです。元の会社に在籍したままではなく、完全に移ってしまうわけですから、雇い主が変わります。この違いが対処法に決定的な影響を与えます。

出向と転籍の違いの整理

  在籍出向 転籍
雇用主 元の会社のまま(変わらない) 転籍先の会社に変わる
指揮命令の主体 出向先の会社 転籍先の会社
元の会社への復帰 基本的にあり(期間限定の場合が多い) 原則なし(完全に移籍)
命令の可否 権限・要件を満たせば命令できる場合あり 必ず本人の同意が必要(命令不可)
CHAPTER 02

在籍出向に応じない社員への対処法

 

原則は説得して同意を得て移ってもらう

 在籍出向については命じられる場合ももちろんあるのですが、原則的な考え方としては説得して移ってもらう、同意を取って移ってもらうという進め方を考えた方がいいと思います。なぜかと言うと、やはり在籍出向には目的があるからです。何のために出向してもらうのかという目的があるのに、本人が納得できずしぶしぶ命令だから従って出向先に行った場合、あまりやる気を出してもらえないと思います。「なんでこんなところに来たんだろう」と思ってしまうかもしれないのです。

 ですので、どうして在籍出向に応じてもらわなければいけないのかという必要性をしっかり説明して、その条件(給料などの条件、ずっと出向先にいなきゃいけないのかいずれ戻ってくるのか)についても丁寧に話して、説得して行ってもらうようにしてください。

権限の確認:過去の実績が重要

 特に本人が嫌だと言っているのに出向を命じるような場合には、出向を命じる権限の確認が必要です。就業規則にある程度の規定があることは普通ですので、一応権限があるとは言えるように見えます。しかし出向の実態が重要です。

 毎年10人・20人と在籍出向させていて、これが普通になっている会社であれば、そういった前提でこの雇用をしているのだろうと推測でき、割と認められやすい方向に進みます。ところがこの10年1人も在籍出向したことがない会社で、出向させることがあるという抽象的な定めがあるだけだと、本当に権限があるのかどうかのチェックをしなければいけません。

乱用に当たらないかのチェック

 権限自体はあるケースがそれなりに多いと思いますが、さらにその在籍出向命令が権利の乱用に当たらないかの確認も必要です。大体いつもと同じような要素を確認すればよいのですが、具体的にはどうして在籍出向しなければならないのかという必要性、不当な動機・目的がないか、通常感受すべき程度を著しく超える不利益を課すものでないか、という点をチェックします。

 在籍出向にあたって給料が変わらないのであれば、転勤に近い感覚で説明しやすく、不利益の程度も「我慢すべき程度の範囲内」に収まりやすくなります。いずれ戻る約束になっている期間限定のものであれば、なおさらです。一方、給料が下がるケースではより慎重な判断が必要で、なぜその必要性があるのかをしっかり説明できるようにしておく必要があります。

普段から出向の規定と実績を整備しておく

 中長期的な観点からは、普段から出向の規定をしっかり整備し、出向の実績を積み重ねておくことが重要です。出向を数多く行うことで、社員も「この会社では出向があるものだ」という認識が定着し、いざという時に応じてもらいやすくなります。また、マニュアル的に説明できる社内体制を整えておくことも、後のトラブル防止につながります。

CHAPTER 03

転籍に応じない社員への対処法

 

転籍は必ず本人の同意が必要

 転籍については必ず同意を取って移ってください。同意を取らないで一方的に転籍の命令を出して他に移れるなどと考えない方がいいです。もし裁判で勝ったとしても救済的な判決にすぎず、そんなものは当てにできません。

 同じグループ会社であっても同様です。グループ会社間では転籍が普通にありますよという前提で採用したとしても、雇い主である会社から別の会社に雇用主を変更する完全な転籍を行う場合については、しっかり本人の同意を取ってください。グループ会社だからといって軽く考えて転籍命令を強行し、従わないから解雇だとやってしまうと、裁判で思わぬ敗訴判決をもらってしまうことになりかねません。

転籍は「命令」ではなく「同意を得て移す」もの

転籍については「命令して従わなければ解雇」という対応は取れません。必ず説得して同意を得た上で移ってもらうという進め方が原則です。同意を取らないで一方的に転籍命令を出して強行しようとすると、法律的に問題が生じますので注意してください。

転籍の必要性と条件を丁寧に説明し、説得する

 具体的にどうすればいいかと言うと、転籍の必要性と転籍の条件について丁寧に話して説得活動を行います。なぜ別の会社に移らなければいけないのかをしっかり具体的に説明するのです。「会社の指示なんだから移りなさい」という抽象的な話ではなく、移る必要性をしっかり説明してください。また転籍先での雇用条件・給料なども含めた条件をしっかり提示した上で説得して、同意を得てから移ってもらうのが基本的な進め方です。

 説得活動を十分に行っても同意が得られない場合、転籍を強行することはできません。その場合は引き続き在籍させるか、退職勧奨を含めた別の選択肢を検討することになります。転籍の必要性があまり高くないケースであれば、無理にやる必要がないと割り切ることも一つの判断です。

必要性が高いなら、しっかり多方面に配慮して進める

 会社によっては、どうしても出向・転籍をやらないと会社の仕組みが回っていかないという場合もあります。そういった場合は、必要性が高いのであれば多方面に配慮して出向を命じなければいけないケースもありますし、説得して転籍に応じてもらわなければならないケースもあります。

 本人が嫌だと言っているものについて出向・転籍をさせようとする場合、説得がどうしても必要になりますし、反発も多くてストレスが溜まって大変かもしれません。しかし頑張ってください。本当に必要なもので正当な出向・転籍であれば、きっといい方向に行くはずです。

弁護士 藤田 進太郎

監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、人事異動・出向・転籍に関するトラブル、問題社員対応、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。出向・転籍でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

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FAQ

よくあるご質問

 

Q. 在籍出向と転籍は何が違いますか。

 在籍出向は元の会社に雇われたまま別の会社で指揮命令を受けて働くものです。雇い主は変わりません。転籍は雇い主そのものが変わります。この違いが対処法に決定的な影響を与えます。在籍出向は要件を満たせば命令できる場合がありますが、転籍は必ず本人の同意が必要であり、一方的な命令はできません。

Q. 就業規則に出向の規定がありますが、在籍出向を命令できますか。

 就業規則に出向の規定があれば権限の根拠となりますが、それだけでは命令が必ず有効になるわけではありません。過去の出向実績が重要で、実績がほとんどない会社はハードルが高くなります。また業務上の必要性があるか、不当な目的がないか、著しい不利益がないか、という点もチェックが必要です。弁護士に相談しながら個別に判断することをお勧めします。

Q. グループ会社への転籍でも本人の同意が必要ですか。

 はい、グループ会社への転籍であっても必ず本人の同意が必要です。グループ会社であっても雇い主が変わる以上、一方的な転籍命令は法律上できません。同意を取らずに転籍命令を出して強行しようとすると法律的な問題が生じます。

Q. 転籍に同意してもらえない場合はどうすればよいですか。

 転籍は強行することができませんので、引き続き在籍させるか、退職勧奨を含めた別の選択肢を検討することになります。転籍の必要性があまり高くない場合は、無理にやる必要がないと割り切ることも一つの判断です。どうしても転籍が必要な場合は、なぜ転籍が必要なのか、条件はどうなるのかをより丁寧に説明して説得活動を続けていくことになります。

Q. 在籍出向にあたって給料が下がります。問題はありますか。

 給料が下がる場合は本人への不利益の程度が大きくなりますので、説明と説得活動をより丁寧に行う必要があります。給料が変わらない場合は転勤に近い感覚で説明しやすく、不利益の程度も低くなります。また、出向先での条件が大きく不利な場合は、乱用と評価されるリスクが高まりますので、出向条件の内容も含めて弁護士に確認することをお勧めします。

Q. 遠方の会社ですが、相談できますか。

 対応しております。事務所会議室での対面相談のほか、ZoomやTeamsによるオンライン相談を実施しており、日本全国各地の会社経営者からのご相談を承っています。出向・転籍に関するトラブルは、命令や説得を進める前の段階から弁護士に相談することで、後のリスクを大幅に下げることができます。

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