派遣社員トラブル対応

 

FOR COMPANY OWNERS

派遣社員トラブル対応の総合解説。
作業指示に従わない・頻繁に休む派遣社員への
対処法を、会社側専門の弁護士が解説します。

 派遣社員に関するトラブルは、直接雇用の社員とは異なる対応が求められます。派遣先・派遣元・派遣社員という三者構造の下では、派遣先が直接取れる手段に法律上の限界があり、その限界を知らないまま対応すると法律違反となるリスクがあります。本ページでは、作業指示に従わない派遣社員への対処法と、頻繁に休む派遣社員への対処法という二つの典型的なトラブルを中心に、会社側専門の弁護士が実務対応の全体像を解説します。

VIDEO

弁護士藤田進太郎による解説動画

 

 派遣社員対応の実務については、当事務所代表弁護士藤田進太郎による解説動画もあわせてご覧ください。本ページはこの動画をはじめとする解説動画を素材として文章化した総合解説ページです。各テーマの詳細は、それぞれの専門ページおよび元動画でご確認いただけます。

本ページの要点

 派遣社員対応で最も重要なのは、派遣先・派遣元・派遣社員という三者構造への正確な理解です。派遣社員は派遣先の指示命令に従って就労すべき義務がある一方で、雇用主はあくまでも派遣元(派遣会社)であり、懲戒処分などの雇用上の措置は派遣会社のみが行うことができます。作業指示に従わない場合は、まず指示内容の伝え方を具体的に改善することから始め、それでも改善しない場合は派遣会社への相談・協議という順序で進めます。頻繁に休む場合は、派遣会社への代替要請、別の派遣会社の検討、業務モデルの見直しまで視野に入れた対応が求められます。

CHAPTER 01

派遣社員対応の特殊性:三者構造を理解する

 

派遣先は指揮命令できるが、雇用主ではない

 派遣社員に関するトラブルへの対応を考えるにあたって、まず理解しなければならないのが、派遣先・派遣元(派遣会社)・派遣社員という三者からなる法的な構造です。派遣社員は派遣先の指示命令に従って就労すべき義務を負っています。この点は直接雇用の社員と同じであり、指示に従わないことは大きな問題です。

 しかし、その一方で、派遣社員を雇用しているのは派遣先ではなく、派遣元である派遣会社です。雇用主が誰であるかという点が、直接雇用の社員との根本的な違いになります。懲戒処分・注意指導・解雇といった雇用上の措置は、雇用主である派遣会社のみが行うことができ、派遣先がこれらを直接行うことは法律上できません。

労働者派遣契約の範囲が対応の前提

 もう一つ重要な点として、派遣先が指示命令できる業務は、労働者派遣契約で定められた範囲の業務に限られます。契約外の業務を指示することはできません。派遣社員が作業指示に従わない場合に対処を検討する際、その指示が労働者派遣契約の範囲内のものであることを確認することが、対応の前提となります。

「直接雇用の社員と同じ対応」が法律違反になる

 派遣社員トラブルで対応を誤りやすいのは、直接雇用の社員に対するのと同じ手順で対処しようとすることです。問題があれば注意指導して、直らなければ懲戒処分をして、それでも直らなければ解雇する。この流れは直接雇用の社員に対しては適法な手順ですが、派遣社員に対してこれを直接行おうとすると、法律上の問題が生じます。

 派遣社員特有の問題があることを踏まえた上で、派遣会社(派遣元)と連携しながら対処を進めていくことが、この分野の実務における基本的な姿勢となります。

作業指示に従わない派遣社員の対処法 指示内容の伝え方の改善から派遣会社への協議まで 頻繁に休む派遣社員の対処法 交代要請・別の派遣会社・業務モデルの見直しまで

CHAPTER 02

作業指示に従わない派遣社員への対処法

 

まず確認すべきこと:指示内容が伝わっているか

 派遣社員が作業指示に従わないという状況に直面したとき、最初に確認すべきことがあります。それは、その指示内容がきちんと伝わっているかどうかという点です。指示に従わないと感じているけれども、実は指示の内容が理解できていないだけかもしれないのです。この可能性を最初に排除しておくことが、適切な対処の出発点となります。

具体的な作業指示に改善する

 指示内容が伝わっていない可能性がある場合、まず改善すべきは指示の仕方そのものです。具体的に何をどうすればよいのか、しっかり指示を出すことが大事になります。質問があれば質問にもしっかり答えてください。

 抽象度が高い指示の仕方をすると、指示内容が伝わりにくくなります。「自分の頭で考えなさい」といった指示は、この観点からはもってのほかです。こういった方に対しては、できるだけ具体的に何をどうすればいいのかをしっかり説明することが、まず大事になってきます。

言いっぱなしにしない:確認作業を繰り返す

 一旦きりにしないことも大事です。本当に指示通りに仕事できているかどうか、しっかり確認作業をしてください。「指示した」と「指示が実行された」の間を確かめる作業を、毎日しっかり繰り返すことが必要です。

 「指示通りに仕事してくれない」という相談の中には、言うだけ言って本当に仕事できているかどうかをしっかり確認していないケースも結構あります。具体的な指示を出し、確認作業も行って、できていなければどこをどう変えていけばいいのかをしっかり説明していくことを繰り返せば、大体はうまくいきます。まずちょっと手間かもしれませんが、そこから始めていきましょう。

能力不足で悪気なくできないケースが多い

 それでも改善しない場合、次の手段として考えるべきは派遣会社(派遣元)への相談です。その前に一点確認しておきたいことがあります。指示に従えない方の多くは、悪気なくできないというケースがものすごく多いという点です。

 もちろん、指示に従う意欲がない方や、言うことを聞かないのがデフォルトになっている方もいなくはありません。しかし多くのケースでは、悪気なく普通にしているつもりでいながら理解できず、言われた通りにやろうと思ってもできないというのが実情です。このことを念頭に置いた上で、次の対処を考えていくことが重要です。

次の手段:派遣会社(派遣元)への相談・協議

 具体的な作業指示を粘り強く行っても改善しない場合、派遣会社との協議に進みます。派遣会社によく事情を話して、対応を協議していく必要があります。派遣会社は実務に詳しいのみならず、派遣法関係の様々な規制についても詳しいはずです。派遣社員に関する問題は、派遣会社に相談しながら対応することで、法律違反と言われずに済むという安心感もあります。

 派遣会社への相談では、どんな努力をしてきたのか、本人が指示通りの業務ができなかった経緯をしっかり説明しましょう。その程度がひどければ、派遣会社の方で教育指導・注意指導をしてくれます。あまりにもひどければ、派遣社員を交代しましょうという話になるかもしれません。

詳細解説ページ

作業指示に従わない派遣社員への対処法について、より詳しい解説は専用ページをご覧ください。
作業指示に従わない派遣社員の対処法

CHAPTER 03

頻繁に休む派遣社員への対処法

 

絶対的な正解がある対処法ではない

 頻繁に休む派遣社員への対処は、作業指示への不服従とは性質が異なります。病気などを理由に頻繁に休むという状況に対しては、これが唯一の正解という対処法があるわけではなく、複数の選択肢を状況に応じて組み合わせていく必要があります。

まず:派遣会社への代替人員の要請

 基本的には、まず派遣会社と話をすることから始めます。稼働できる状態にある別の派遣社員に交代してほしいという要請を行うことが、最初の手段として考えられます。継続的に稼働できる人を多く抱えている派遣会社であれば、こうした要請に応じて代替人員を用意してくれることが期待できます。

 もっとも、人手不足で派遣会社も人を十分に確保できず、いい人をしっかり派遣できない、契約を履行することができないという状況になれば、残念ながら労働者派遣契約を終わりにさせてくださいという話になるかもしれません。ないものはしょうがないですから、その場合はやむを得ないと考え、別の手段を検討していくことになります。

別な派遣会社を探す

 現在の派遣会社が対応しきれない場合、別の派遣会社を探すことも選択肢として考えられます。いい人を安定的に派遣できる派遣会社と当たれば状況が改善することがあります。あれこれ試してみることも一つの方法です。

直接雇用への切り替えを検討する

 もう一つの選択肢として、直接雇用への切り替えを検討することもあり得ます。ただし、直接雇用に切り替えることでうまくいくかどうかはなかなか難しいところもあり、慎重な判断が必要です。

業務モデルの見直し:AI活用・自動化・難易度の調整

 派遣会社や直接雇用の面からだけでなく、業務そのもののやり方を変えていくという発想も重要です。AIを活用したり、自動化・機械の導入などによって、派遣社員の人手に頼らなくてもよい体制を作っていくことが、根本的な解決につながる場合があります。

 また、仕事の難易度を下げるということも考えられます。気が効かなくても空気が読めなくても、難易度を下げていくことで対応できるようにするというアイデアです。どのような工夫が可能かをあれこれ検討してみることも、選択肢の一つとして考えてください。

派遣社員に多くを依存するモデル自体を見直す

 より広い視点では、派遣社員に多くを依存するビジネスモデル自体の見直しを考えることも必要かもしれません。何でもかんでも人に頼っていればいいというものではなく、仕事のやり方自体を変えていくことが求められる場面もあります。

 もし事業を縮小する気はなく、これからも事業を続けていこうというのであれば、なんとかして人を確保しなければいけませんし、仕事のクオリティを確保するために工夫し続けていかなければなりません。そのためにあれこれ試してみるという姿勢が、頻繁に休む派遣社員への対処法の本質とも言えます。

詳細解説ページ

頻繁に休む派遣社員への対処法について、より詳しい解説は専用ページをご覧ください。
頻繁に休む派遣社員の対処法

CHAPTER 04

派遣先がやってはいけないこと

 

懲戒処分は派遣先にはできない

 問題のある派遣社員への対処として、「いつまでも指示通りの仕事をやらないのであれば、厳重注意して懲戒処分にしたい」という気持ちになるのは当然です。直接雇用の社員であればそのような手順を踏むことができます。しかし、派遣社員についてはご注意ください。

 直接雇用しているのは派遣先ではなく派遣元(派遣会社)です。したがって、懲戒処分などを行うのは派遣元・派遣会社であり、派遣先(自社)が直接懲戒処分を行うことはできません。派遣先としては事情を説明することの他に、しっかり仕事できる契約を履行できる人を派遣してほしいというところまでしか言えないというのが、法的な整理です。

派遣先ができること・できないことの整理

できること できないこと
労働者派遣契約の範囲内での指揮命令 派遣社員への直接の懲戒処分
派遣会社への事情説明・協議の申し入れ 契約外の業務の指示
派遣会社に交代・契約終了を求めること 派遣元を通さずに直接解雇すること

派遣会社を通じて対処する手順

 派遣先のとるべき手順は、派遣元である派遣会社に事情をお話しした上で、派遣会社の方で教育指導・注意指導・懲戒処分などを行うかどうかを検討していただくという流れになります。自分で直接懲戒処分などをしないようにご注意ください。

 このように、派遣社員の問題に対して派遣先がとれる手段は、直接雇用の社員と比べて限られています。だからこそ、派遣会社との日頃からのコミュニケーションと、問題が発生したときの迅速な相談が、派遣社員トラブルへの対処において特に重要になるのです。

CHAPTER 05

当事務所のサポート体制と監修者

 

 弁護士法人四谷麹町法律事務所は、会社側(使用者側)専門の法律事務所として、問題社員対応を中心とした労働問題を取り扱っております。派遣社員のトラブルについても、派遣元への協議の進め方、派遣会社との交渉、業務モデルの見直しにかかる法的論点の整理など、具体的な実務対応の相談に応じております。

 こういった仕事に慣れている弁護士とオンラインで短時間の打ち合わせを繰り返し入れながらやりとりをしていくやり方が、実務では効果的です。自力で対応するのが不安という方は、弁護士に相談しながら進めていただくことをお勧めします。

弁護士 藤田 進太郎

監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、派遣社員トラブル、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。派遣社員トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

派遣社員トラブルでお悩みの会社経営者の皆様へ

まずは経営労働相談までご連絡ください。事務所会議室でのご相談、Zoom・Teamsでのオンライン相談、いずれも対応しています。

経営労働相談のお問い合わせ

FAQ

よくあるご質問

 

Q. 派遣社員が作業指示に従いません。まず何をすればよいですか。

 最初に確認すべきは、指示内容が正確に伝わっているかどうかです。指示に従っていないように見えても、指示の内容が理解できていないだけというケースが珍しくありません。まず指示の仕方を具体的に改善し、何をどうすればよいかをしっかり説明した上で、指示通りにできているかどうかを毎日確認する作業を繰り返してください。それでも改善しない場合は、次の段階として派遣会社(派遣元)への相談・協議に進みます。

Q. 派遣社員を直接叱って懲戒処分することはできますか。

 派遣社員を直接雇用しているのは派遣先ではなく派遣元(派遣会社)です。懲戒処分などの雇用上の措置は雇用主である派遣会社のみが行うことができ、派遣先が直接懲戒処分を行うことはできません。問題がある場合は、派遣会社に事情を説明し、派遣会社の方で教育指導・注意指導・懲戒処分・交代などを検討してもらうという流れが正しい手順です。

Q. 派遣社員を別の人に交代するよう派遣会社に要求できますか。

 はい、派遣会社への交代要請は可能です。具体的な指示を粘り強く行っても改善が見られない場合、派遣会社に事情を説明した上で交代を依頼することができます。派遣会社は派遣法関係の規制についても詳しいので、派遣会社と協議しながら進める方が法律違反のリスクも下がります。ただし、人手不足で派遣会社が交代要員を確保できない場合は、別の派遣会社を探すことや業務モデルの見直しなど、別の選択肢を検討することになります。

Q. 契約外の業務を指示したら従わなかったのですが、問題はありませんか。

 派遣先が指示命令できる業務は、労働者派遣契約で定められた範囲の業務に限られます。契約外の業務を指示することはできませんので、その場合は従わなかった派遣社員に問題があるのではなく、派遣先の指示の仕方に問題があることになります。指示内容が労働者派遣契約の範囲内であるかどうかを、まず確認することが必要です。

Q. 頻繁に休む派遣社員への対処として、何から始めればよいですか。

 まず派遣会社と話し合い、稼働できる状態にある別の派遣社員への交代を依頼することが最初の選択肢です。それが難しければ別の派遣会社を探すこと、直接雇用への切り替えを検討すること、AI活用・自動化などで派遣社員に頼らない業務体制を作ること、業務の難易度を下げることなど、複数の選択肢を状況に応じて組み合わせながら対処していきます。唯一の正解がある問題ではなく、あれこれ試してみる姿勢が重要です。

Q. 遠方の会社ですが、相談できますか。

 対応しております。事務所会議室での対面相談のほか、ZoomやTeamsによるオンライン相談を実施しており、日本全国各地の会社経営者からのご相談を承っています。派遣社員トラブルは状況が刻々と変わることが多く、ZoomやTeamsを活用して短時間の打ち合わせを繰り返し入れながら進めていく方法が、実務上効果的です。

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